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コーポレートサイトリニューアルの裏側|DNP 黒木氏・乃村工藝社 田中氏|GLOBALIZED グローバルブランディング

佐藤菜摘

本記事のポイント
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情報の分散から脱却し、ユーザビリティランキング1位を獲得。継続的な発信を支えたのは、「フル CMS 化」「各部門の巻き込み」「ノウハウ共有」
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サイト集約と多言語対応の効率化により運用負担を減らし、コンテンツ発信に集中。人やプロジェクトの背景を伝える「ストーリー」をグローバルに広げる。
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海外展開をさらに強化するには、先を見据えた Web サイトの多言語対応が不可欠。WOVN.io 導入で、直帰率改善や海外ユーザー増加を実現。
Wovn Technologies株式会社は、2025年8月22日に「GLOBALIZED グローバルブランディング」を開催し、「本社が担う、世界から信頼されるブランドづくりと多言語コミュニケーション」をテーマにセッションをお届けしました。
WOVN.io の導入事例講演では、大日本印刷株式会社の黒木 崇匡氏と株式会社乃村工藝社の田中 摂氏を迎え、「DNPと乃村工藝社が語る、コーポレートサイトリニューアルの裏側」と題して、コーポレートサイトリニューアルのリアルな苦労と学び、多様なステークホルダーに情報を届けるための多言語対応の進め方についてお話しいただきました。本レポートではその内容をご紹介します。
【登壇者】
黒木 崇匡 氏
大日本印刷株式会社
コーポレートコミュニケーション本部 Web 戦略室/室長
DNP グループ会社にてクライアント向けの Web コンサル、企画立案等を担当。2018年の DNP グループ Web サイトの全面リニューアルの際にプロジェクトマネージャーを務め、運営体制の再構築から着手。2020年から現所属となり、DNP グループ全体の Web 戦略策定、ガバナンスルール策定、Web 関係者ネットワーク構築に従事。目下グローバルでの Web 基盤再構築に奔走中。
田中 摂 氏
株式会社乃村工藝社
ブランドコミュニケーション室/室長
2006年、空間プロデュース企業の株式会社乃村工藝社入社。人事、開発、クリエイティブ機能やイノベーション新組織のマネジメント、乃村工藝社オウンドメディア nomlog の立ち上げを経て、2021年より現職。コーポレートサイトのリニューアル、社内の実績シェアリングシステム構築、アーカイブ管理、マーケテイングオートメーションなどブランドコミュニケーションの基盤整備と施策に取り組む。
目次 |
「統一感」や「より良いコンテンツ発信」を目指して。各社のコーポレートサイトリニューアルの狙いと成果
黒木 (DNP):
当社で Web サイトリニューアルの話が持ち上がったのは、2016年頃でした。Google アナリティクスで確認したところ、深い階層のページがほとんど見られておらず、各事業部門のサイトも別ドメインで存在するなど、コーポレートサイトとしての統一性がない状態でした。そこで2018年にリニューアルを実施し、フル CMS 化して各事業部門が継続的にタイムリーに情報を発信できる場を整備しました。以降、毎年外部調査を通じてユーザビリティの課題を見つけ、改善を続けています。この取り組みにより、2021年にはユーザビリティランキングで1位を獲得しました。現在の Web サイトは、トップページを見るだけで、サイト内の情報全体を把握できるような構成を目指しています。
田中 (乃村工藝社):
当社はこれまでリアルなコミュニケーションの営業活動をメインとしていたこともあり、Web がそれほど重要視されていませんでした。私が2021年に広報部に異動した際、コロナ禍ということもあり、デジタル上での積極的な情報発信が不可欠だと感じました。当時の Web サイトは機能的に古い上、日本語・英語・中国語のサイトが別々に存在しており、少ない人数で3つのサイトを更新するのは非常に困難でした。そのため、サイトをリニューアルし、集約することでコンテンツ発信に注力できる体制を構築しました。リニューアル後の Web サイトは、これまで手がけたプロジェクト実績が映えるよう、あえてシンプルで普遍的なデザインを採用し、さらに社員のインタビューや動画を通じて、当社が何を提供できるのかが伝わるように工夫しています。
三大課題をどう乗り越えた?コーポレートサイトリニューアルの舞台裏
黒木 (DNP):
リニューアルプロジェクトで大変だったことは「予算」「(サイトが)活用されない」「巻き込み」の3つです。
1つ目の「予算」については、社内で適正価格が分からず、情報収集に苦戦しました。当時、地方自治体の Web サイトのリニューアル落札情報を参考に、当社のステークホルダーや事業規模を考慮した予算のロジックを構築しました。また、Web は ROI(投資収益率)を数値で示すのが難しいため、外部ランキングでの評価やブランディングの観点から予算説明を行いました。
2つ目は「活用されない」という点です。CMS を取り入れ、HTML の知識がない人でもコンテンツを発信できるようにしましたが、なかなか更新してくれないという課題に直面しました。対策として、Web 担当者会議を組織し、有効なコンテンツのアイディアやノウハウを共有する場を設けました。これにより、他部門の成功事例を参考にコンテンツ活用が進みました。
3つ目は「巻き込み」です。特にトップダウンでの巻き込みが重要だったと感じています。担当役員には合宿形式でユーザビリティのワークショップを実施し、ユーザー視点での現状課題を理解してもらいました。また、ボトムアップのモチベーション向上のために、年間アワードを設け、本社役員からの表彰を通じて現場の自己肯定感を高める工夫もしました。
田中 (乃村工藝社):
当社で大変だったことは「予算」「各部門の思い入れ」「生きたガイドライン作成」の3つです。
私も黒木さんと同様に、プロジェクトで「予算確保」に苦労しました。社内に適正価格が分かる人がおらず、インターネット調査や制作会社へのヒアリングを行いましたが、予想以上に費用がかかることを説明するのが大変でした。競合他社が Web に注力する中で当社の認知度が低下する可能性や、古い機能がもたらす弊害といった、リニューアルしないことによるリスクの視点も強調し理解を得ました。
2つ目は「自分の子は可愛い」という点です。既存の約25〜30の事業部やクリエイティブチームのサイトを整理・統合する際に、各部門の強い思い入れがハードルとなりました。使われなくなったサイトや古い情報が放置されているサイトについても、削除や統合に慎重な調整が必要でした。IT 部門の協力を得て、未更新サイトのセキュリティリスクや管理費用なども理由に交渉し、最終的に半数程度のサイトを統合または削除しました。
3つ目は「生きたガイドラインの作成」です。既存のガイドラインは古く、読みづらく、ルールの変更に対する合意形成が困難でした。そこで、読みやすく実用的なガイドラインに改訂し、関係者の意見を取り入れながら作成を進めました。作成後も Web 担当者向け勉強会を開催し、時代の変化に合わせてガイドラインを更新し続けることを重視しています。
(左から、DNP 黒木氏、乃村工藝社 田中氏)
多言語対応で広げる「認知」と「ストーリー」
黒木 (DNP):
当社の海外売上高比率は昨年度で23%とそれほど高くありませんが、国内市場の縮小と、一部の事業部門における海外市場展開の必要性から、多言語対応は不可欠だと認識しています。特にアジア圏での展開を進める事業部門もあり、先回りして多言語対応を進める必要がありました。また、「DNP」という企業名が海外で知られていないことや、「印刷」という社名から当社の事業内容が誤解されやすいという課題があり、グローバルでのパーセプション獲得が重要なブランディング課題となっています。
特定の製品や事業領域(無菌充填ペットボトル、外装材パネルなど)において、世界シェア獲得や特定エリアでの重点展開を目指す上で、複数の言語で情報発信を行う必要がありました。そこで、WOVN.io を導入したのは、ディレクトリ単位で翻訳の有無を調整できる柔軟性と辞書機能に魅力を感じたからです。
田中 (乃村工藝社):
当社の多言語対応の背景には、冒頭で述べたように、これまで別々に運営していた日・英・中サイトをコーポレートサイトに統合するという目的がありました。また、実績写真だけでは伝わりにくいプロジェクトのバックストーリーや社員の考えを伝えるために、オウンドメディア「nomlog(ノムログ)」でも英語での発信を開始しました。
WOVN.io 導入により「直帰率改善」や「海外ユーザー拡大」へ
黒木 (DNP):
WOVN.io の導入後、直帰率が下がったという効果を実感しています。WOVN.io を導入することで Web サイトが検索エンジンに適切にインデックスされ、ユーザーが母国語で検索した際に、最初からその言語でページにたどり着くことができるようになります。初めから母国語でコンテンツが表示されることで、ユーザーは次のコンテンツも読みやすいと感じ、サイト内での回遊が促進されます。WOVN.io を導入した全サイトで、直帰率に改善が見られるという結果になりました。このフィジビリティの結果を踏まえ、現在進めているリニューアルでは、全世界で展開するグローバル Web 基盤として WOVN.io の導入を決定しています。
田中 (乃村工藝社):
WOVN.io 導入後、当社の Web サイトでは海外ユーザーの比率が増加しました。2023年のリニューアルから1年後には海外ユーザー比率が4%に達し、さらに2025年時点では10%近くまで伸びています。コンテンツを継続的に増やし、オウンドメディア「nomlog(ノムログ)」で社員の考えやプロジェクトのプロセスなどを積極的に英語で発信した結果が現れています。
また、デザインや情報の統一により、日本語以外で閲覧していても、当社のコンテンツであるときちんと認識され、信頼性が向上したと感じています。海外拠点からもリニューアルに対して感謝の声が寄せられており、母国語で情報発信できることの重要性を強く認識しています。社員の紹介や考え方、プロセスを見せることで、海外の方のエンゲージメントを高める効果も得られています。
先行事例から学び、より良いグローバル発信を
黒木(DNP):
当社の海外向けの取り組みはまだ始まったばかりですが、この分野にはすでに多くの先行事例があります。そうした知見を参考にしながら、現場でのリアルな課題や工夫をオープンに共有し合い、より良い取り組みへとつなげていきたいと考えています。
田中(乃村工藝社):
黒木さんのお話からも多くの学びがあり、大変刺激を受けました。情報や経験を分かち合うことで、「もっと早く知っていれば」と感じる苦労を減らせるはずです。今後も、多言語対応やグローバル展開に挑む企業同士で積極的に情報交換していければと思います。
Web サイト多言語化のご相談は WOVN へ
Wovn Technologies株式会社は Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を提供しています。多言語化についてご興味のある方は、ぜひ資料をダウンロードください。

佐藤菜摘
前職は、広告代理店にて大手CVSの担当営業として、販促物製作やブランディングプロジェクトに従事。2016年WOVN Technologies株式会社に入社し、広報業務を担当。2022年よりMarketingチーム。
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