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WordPress で多言語化する方法とは?翻訳時の注意点を解説

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奥原 雅也

海外市場への進出に向けて自社 Web サイトを多言語化して海外に発信する企業が増えています。Web サイト経由で海外現地とやりとりする場合は、駐在員の派遣・事務所の設立が不要なため、Web サイトの多言語化は海外進出の第一歩として始めやすいといえるでしょう。

また、多言語対応された Web サイトは、外国人の顧客や取引先、従業員、投資家など、さまざまなステークホルダーとやりとりする際の基盤となります。顧客層や事業の拡大を目指す上でも、多言語化の必要性はますます高まっています。

しかし、スムーズに Web サイトの多言語化を進めるには、自社に適した翻訳方法を知る必要があります。そこで、本記事では WordPress を使って Web サイトを運用している企業に向けて、多言語化の方法とその際の注意点を紹介します。

目次

Web サイトの多言語化の重要性

現代では、日本はもちろん海外でも、情報伝達の手段はインターネットが主流となっています。しかし、インターネット上で日本語を使用するユーザーは、わずか3%にも満たないといわれています。

つまり、日本語だけの Web サイトでは、世界のインターネットユーザーの97%に情報を届けることができないのです。

Web サイトの多言語化によって外国人ユーザーに向けて情報を発信できるようになれば、顧客層の拡大や売上増加、認知度の向上につながる可能性が高まります。インバウンド需要や越境 EC など、ビジネスチャンスも広がるでしょう。

また、近年では、ビジネスのグローバル化に伴い、消費者・取引先・従業員・投資家といった多様な外国人ステークホルダーへの対応が求められています。このような背景から、Web サイトにおける多言語での情報発信は、企業にとってますます重要になってくると考えられます。

WordPress で構築した Web サイトを多言語化する方法

自社 Web サイトの作成に、WordPress を利用している企業は多い(※)です。WordPress の内容を翻訳する方法はいくつかあるので、以下で詳細を解説します。

※参照元: W3Techs 「Usage statistics of content management systems」

WordPress のマルチサイト機能を活用する

WordPress には、1つのデータベースに複数の Web サイトを作成できる「マルチサイト機能」があります。

マルチサイト機能を使えば、1つのサーバーで対応したい言語の数に合わせて Web サイトをそれぞれ運用できます。ただし、サイト数が増えればサーバーに負荷がかかるため、スムーズなアクセスが難しくなる点や、言語数分のサイトの運用コストがかかる点に注意が必要です。

マルチサイト機能で多言語化するには、「サブドメイン」を設定する方法と、「サブディレクトリ」を設定する方法があります。

サブドメインは Web サイトを複数ドメインに分割するときに用いる方法で、例えば「https://example.com」と「https://sub.example.com」のように、元のドメインの前に「.(ドット)」で区切られた新たな文字列を追加して活用します。一方のサブディレクトリは、1つのドメイン内でコンテンツを仕分けるときに使用し、「https://example.com/sub/」のように、元のドメインの後に「/(スラッシュ)」をつけて文字列を追加します。

それぞれの Web サイトを独立させて使いたいならサブドメイン、元の Web サイトの SEO 効果を引き継ぎたい場合はサブディレクトリなど、適切に使い分けるようにしましょう。

WordPress の翻訳プラグインを使う

WordPress には、さまざまな機能を自由に付与できる「プラグイン」が多数用意されています。プラグインは HTML などの専門知識がなくても簡単に導入できるため、エンジニアを雇わなくてもスムーズに Web サイトに機能を追加できるのが魅力です。

プラグインの中には、翻訳機能を提供するものも多数あるため、それぞれの機能やメリットを比較して導入するものを決めましょう。WordPress のプラグインには無料版と有料版があります。無料版はコストがかからない分、海外発信には必須の SEO 対策ができなかったり、機械翻訳を利用できる文字数が少なかったりといったこともあります。有料版では、翻訳に役立つさまざまな機能を活用できるため、本格的に多言語化を実施する場合にはおすすめです。

WordPress の「多言語化テーマ」を利用する

WordPress のデザインやレイアウトを変更できる「テーマ」には、多言語化を前提としたものもあります。多言語化仕様のテーマを使ってサイトを構築すれば、その後必要に応じてデザインやレイアウトを海外向けに変更可能です。

WordPress のテーマは種類ごとに機能が異なります。まずは複数のテーマを使ってみて、実際に使用した感覚や機能を参考にして、自社 Web サイトに導入するテーマを選定することがおすすめです。

WordPress のサーバーを分ける

対象となる地域や言語に合わせて、WordPress の「ホスティングサーバー」を分ける方法もあります。

自社がターゲットとする外国人ユーザーの国にサーバーを設置することで、ユーザーが Web サイトにアクセスするまでにかかる時間を短縮できるのが特徴です。

近年では実際に対象とする地域や言語ごとにサーバーを設置することは少なく、CDN (コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)サービスを活用することで、全世界のユーザーへ短いアクセス時間で、コンテンツを届けられるようになっています。

しかし、中国向けに情報発信を行う場合、グレートファイアウォールの影響もあり、CDN を活用してもアクセス時間が大きく遅延することがあります。この問題を回避するためには、中国語に翻訳した Web サイトを中国のサーバーに設置することをおすすめします。

Web コンテンツの翻訳方法・運用

Web サイトを多言語化する方法が確定したら、コンテンツをどのように翻訳するかを考えます。翻訳方法は大きく分けて、機械翻訳と人力翻訳があります。それぞれの特徴について知っておきましょう。

機械翻訳

機械翻訳は、コンピューターを利用して翻訳を自動的に行う手法です。スピーディーかつ低コストで翻訳したい場合に向いています。また、対応言語数が多いのもメリットといえます。機械翻訳エンジンによって対応言語数は異なりますが、例えば Google 翻訳の対応言語数は100を超えているため、マイナー言語の翻訳であっても対応できる可能が高いでしょう。

一方、機械翻訳の注意点は、訳文の正確性です。機械翻訳では、文脈や意図を読み取れないので、ニュアンスや業界に応じた内容などを正確に捉えることは難しいといえます。公開スピードを優先したい場合や翻訳コストを抑えたい場合に機械翻訳が使われることが多くあります。

人力翻訳

人力翻訳とは人が行う翻訳のことです。機械翻訳がデータにもとづいて翻訳するのに対し、人力翻訳は、翻訳者が対象地域の文化・商習慣、原文の文脈や歴史背景などを踏まえて翻訳を行います。微妙なニュアンスを含めた効果的な表現や、読み手や媒体を意識した言葉の選択が可能です。人力翻訳のデメリットは、コストと時間です。コストは、翻訳体制や元言語と翻訳言語の組み合わせ、コンテンツの種類・専門性などにより、大きく異なります。また、人力翻訳では人が翻訳作業を行う上に、背景理解のための調査やチェックなどもあり、時間を要します。

そのため、コーポレートサイトの中でも代表挨拶や企業理念のページなど表現の細部まで気を使い、正しく内容を伝えたいページに向いているといえるでしょう。

人力翻訳を行う際は、自社で翻訳するか、翻訳会社に依頼するかの大きく2つの方法があります。

・自社で翻訳する

自社で専属の翻訳者を雇っている場合、または翻訳スキルを持つ従業員がいる場合、社内で翻訳業務を行うのもひとつの方法です。自社で翻訳する場合の最大のメリットは、コミュニケーション・コストの低さです。社内の翻訳者は事業内容に対する理解度が高いことから、外注する場合よりも背景情報の共有や、文章のトンマナの認識合わせなどにかかる手間を抑えられます。また、翻訳資産やノウハウを蓄積しておくことで、次の翻訳業務をより効率的に実施できることが期待できます。

一方で、プロの翻訳者ではない従業員に翻訳を任せる場合は、主業務の進捗に影響を与えてしまうことも考慮する必要があり、プロ翻訳者に外注する場合と同様、翻訳に時間がかかることに注意しましょう。

・翻訳会社に依頼する

翻訳の質を重視するなら、その言語に精通した翻訳会社に依頼する方法もあります。専門の翻訳会社に依頼すれば、自社が伝えたい意図や情報を、現地の人にしっかり届けることができるでしょう。場合によっては、Web サイトの設計から運用まで任せられるケースもあります。

ただし、外部の翻訳会社に依頼すると、当然のことながらコストがかかります。すぐに Web サイトを更新したいときやトラブルが発生したときも、自社だけの対応では難しいケースも少なくありません。外部とのやりとりに時間がかかってしまうことも多く、「鮮度の高い情報をタイムリーに届けたい」という場合は不向きかもしれません。

WordPress の翻訳プラグインで多言語化する方法

WordPress でプラグインを使用して、多言語化する方法はいくつかの種類があります。それぞれの種類の特徴を、以下で解説します。

マルチサイト型

「マルチサイト型」とは、WordPress のマルチサイト機能と同時に使用できるプラグインのことを指します。 Web サイト内におけるページの内容を各言語に紐付けて翻訳ができるため、作成した記事ごとに言語を変更可能です。

ページ単位で臨機応変な翻訳ができる一方、 Web サイトの管理が煩雑になるというデメリットがあります。

1記事複数言語型(1記事を複数の言語に展開する)

「1記事複数言語型」とは、1つのページに対して複数の言語を採用するタイプのプラグインです。全言語のページを独自タグで管理できるため、1つの管理画面内で複数言語の編集を行えます。

しかし、コンテンツ数が増えると動作が重くなる可能性があるほか、独自タグが別のプラグインに影響されるリスクが考えられるのがデメリットです。

1言語1投稿型( 1言語ごとに1記事を作成する)

「1言語1投稿型」は、1つの言語ごとに1ページずつ作成を行うプラグインです。えば、同じ内容の記事を公開する場合でも、英語のページ、中国語のページ、日本語のページをそれぞれ作成する形になります。

各文化に合わせた画像を設定したり、表現方法を変更したりと、言語の特徴を考慮して柔軟にコンテンツを構築できるのがメリットです。一方で、言語の数の分だけ記事作成の手間がかかるのがデメリットといえます。

WordPress の記事を多言語化する際の注意点

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WordPress の記事を多言語化する際には、よくある課題とその対策を把握しておくことがポイントです。以下の内容を参考に、翻訳時における課題と対策に関する理解を深めてください。

文化や習慣、法律や規制をきちんと調べる

Web サイトの多言語化を行う際には、その言語を使っている地域の文化や習慣、法律や規制、歴史背景を調べましょう。

単純に日本語を翻訳しただけでは、その地域の文化にふさわしくない言語表現になってしまい、不信感を与える可能性があります。多言語対応をする際その言語を使用している専門家やネイティブの方に、翻訳内容の確認を依頼することがおすすめです。

同じ言語でも違いがあることを理解する

同じ言語でも、それを使用している国や地域によって種類や違いがあることを理解するのも大切です。えば、英語には、アメリカ英語、イギリス英語、オーストラリア英語などがあり、中国語にも北京語や広東語などの種類があります。

多言語化する際にはターゲットとする国や地域を明確にして、その場所で使用されている言語に合わせて対応する必要があります。

問い合わせに対応できるよう体制を整える

多言語での情報発信を行うと、外国語での問い合わせの連絡が増えることが予想されます。多言語化によるビジネスチャンスを最大限に活かすためには、外国語での問い合わせにも適切に対応できるような体制を整えておくことが大切です。

例えば、外国語の問い合わせに対応できる従業員を配置したり、専用の問い合わせ対応システムを導入したりするような対応が求められるでしょう。自社での対応が難しい場合は、問い合わせとそれに対する返信の翻訳を外部に依頼する必要があります。

コストを見通した上で言語数を考える

翻訳にかかるコストは、言語の数や種類によって異なります。対応する言語の数が多ければ多いほど費用が発生しますし、言語の数だけ更新や修正作業も必要になります。

Web サイトの多言語化を考える際には、まず「いくつの言語に対応するか」「どの言語に対応するか」を決めましょう。できる限り幅広い言語に対応できれば理想的ですが、手を広げすぎて社内のリソースが追いつかなくなってしまっては本末転倒です。

また、多言語対応 Web サイトは公開して終わりではなく、しっかりした運用体制を構築することも大切。更新やメンテナンスにかかる費用も見越した上で、自社にとって必要な言語の数や種類を決めることをおすすめします。自社の商品・サービスを利用する人や Web サイトにアクセスする人が多い国・地域など、まずはニーズの多そうな言語から対応していき、段階的に言語数を増やしていくのもひとつの方法です。

サイトの目的や自社に適した多言語化の方法を選択する

自社 Web サイトの規模や掲載している内容などによって、最適な翻訳方法は変わります。えば、EC サイトのように更新頻度が高く翻訳する文字数が多い場合には、すべてを翻訳会社に依頼するとコストがかかりすぎるため、機械翻訳を活用することをおすすめします。購入の導線や決済・利用規約にかかわる箇所は翻訳会社に依頼することで、利用者が安心して利用できる EC サイトとなるでしょう。

コーポレートサイトのように、更新頻度が低く翻訳する文字数が少なく、企業ブランディングにかかわるようなメッセージが多い場合は、機械翻訳では魅力を伝えきれない場合もあるため、翻訳会社に依頼することをおすすめします

翻訳の手法や Web サイト別の具体例の詳細については、「【具体例付き】機械翻訳と人力翻訳の意外と知らない使い分け!」をご参照ください。

WordPress での多言語対応には、Web サイト多言語化ソリューションの活用もおすすめ

WordPress で作成した Web サイトを多言語化する際には、さまざまな方法があります。それぞれのメリットと課題を知った上で、自社に最適な方法を選択することをおすすめします。

また、WordPress の多言語対応は、先に挙げた方法以外にも、Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を使うことで実現可能です。日本語をリアルタイムで翻訳したり、Web サイト多言語化の専門家によるサポートを受けられたりといった、ほかの方法にはないメリットを得られます。この機会に、「WOVN.io」を活用して、WordPress での多言語化を進めてみてはいかがでしょうか。

さらに詳しい WordPress と「WOVN.io」との連携に関しては「WordPressインテグレーション」をご覧ください。

 

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