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越境 EC の基本
まずは、越境 EC の基本を押さえておきましょう。越境 EC の意味や最近の動向について解説します。
越境 EC とは、国境を越えて取引を行うこと
越境 EC とは、EC サイトを使って、国内にいながら国境を越えた先にいる相手と取引を行うことを意味します。日本に拠点を置きながらでも、海外に向けて商品を販売することが可能です。海外向けに事業を展開する際の足掛かりとなり、自社の商品を世界中に発信するきっかけとして利用できます。
越境 EC の市場規模は拡大傾向にある
経済産業省の「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」(※1)によると、2019年における世界の越境 EC の市場規模は7,800億 US ドルと推計されています。2026年までの間に年平均成長率が30%ずつ成長していき、4兆8,200億 US ドルまで達することが予想されます。
さらに、2021年における日本・アメリカ・中国3ヵ国の越境 EC 市場規模は、いずれの国においても増加しています。例えば、日本事業者からの中国消費者による越境 EC 購入額は2兆1,382億円(前年比9.7%増)、同じくアメリカの消費者による越境 EC 購入額は1兆2,224億円(前年比25.7%増)と、いずれも前年に比べ大きく増加しているのがわかるでしょう。
日本においては、ジェトロによる調査(※2)によると、EC を利用または検討していると回答した企業のうち、69.4%の企業が「海外向け販売で EC を活用/検討している」と回答しています。具体的な販売方法としては、越境 EC (46.9%)を挙げる割合が高く、年々増加傾向にあります。
※1 経済産業省 令和3年度 電子商取引に関する市場調査
https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005-h.pdf
※2 日本貿易振興機構(ジェトロ) 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(2022年2月)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/12f5036312ce9e76/20210064rev2.pdf
越境ECが拡大している理由
なぜ越境 EC は、拡大傾向にあるのでしょうか。越境 EC が拡大している3つの理由について、詳しく説明します。
インターネットの普及
越境 EC が拡大した背景として、インターネットの利用が一般化したことが挙げられます。ショッピングモールなどから離れた場所に住んでいる人でも、簡単に買い物や情報交換ができるようになりました。
とりわけ越境 EC の拡大を後押ししたのが、スマートフォンの普及です。現在では、世界中の人が手元のスマートフォンから気軽に海外の EC サイトにアクセスし、買い物を楽しめるようになっています。商品検索や決済手続きもスマートフォンで行えるため、海外の商品を購入するハードルがより低くなったのです。
出店コストの削減
海外で商品を販売するために実店舗を出店しようとすると、多大な手間やコストがかかります。思うように売上が伸びなかった場合のダメージも、その分大きくなってしまうでしょう。
しかし、越境 EC なら、実店舗を構えなくても外国の人に商品を販売することができます。初期費用に加え、販売代理店や現地スタッフの人件費といったコストを抑えることができるため、実店鋪よりも低コストで海外進出できるといえます。
ビジネスチャンスの拡大
日本国内の消費人口は、今後減少していくと予想されています。そのような状況で新たな顧客層を開拓していくには、海外へ目を向けることが必要です。
近年では、消費者ニーズの多様化が進み、「海外で人気のある商品を購入したい」「世界中の商品から気に入ったものを選びたい」という人も増えています。また、訪日外国人が日本の商品を気に入り、帰国後にリピート購入するケースも少なくありません。越境 EC を活用して潜在顧客を掘り起こすことができれば、ビジネスチャンスの拡大につながるでしょう。
越境 EC のメリット
越境 EC による事業展開には、さまざまなメリットがあります。具体的なメリットを紹介します。
外国人ユーザーを新たなターゲットにできる
越境 EC では、 外国人ユーザーに直接自社商品の訴求をすることができます。新たな顧客として外国人ユーザーに興味をもってもらえれば、利益拡大が見込めます。特に、国内市場でこれ以上伸び代が見いだせない場合には、越境 EC による事業の展開が検討されることも多いでしょう。
低コストで海外に事業展開が行える
低コストで海外への事業展開が行える点も越境 EC のメリットです。実店舗を海外に出店する場合は、現地の視察や店舗の設営、従業員の雇用などに多くのコストがかかります。一方で、越境 EC ならインターネット上で取引できるので、実店舗の出店よりもコストを抑えて海外でビジネスを行うことが可能です。
経済が成長している国に対してビジネスを行える
越境 EC では、経済成長が続いている景気の良い国に向けてビジネスを始めることができます。景気の良い国には大口の顧客も多いため、高額な商品の販売などにも期待でき、大きな利益の獲得につながる可能性が高いでしょう。近年では、中国向けの越境 EC 展開が広く行われていて、新たな販路の獲得を実現している企業が増えています。
越境 EC の注意点
越境 EC にはさまざまなメリットがある一方で、国内取引とは異なる点も多くあります。越境 EC を検討する際には、注意点も併せて把握しておきましょう。
輸送コストが高額
越境 EC では、日本から海外に向けて商品を発送するため、輸送にかかるコストが高額になります。商品や配送先によっては、国内配送の数倍の費用がかかるケースも少なくありません。さらに、国境を超える取引には、商品やサービスに対して関税が発生します。これらの費用が商品価格に上乗せされるため、購入者にとって大きな負担になってしまいます。
なお、越境 EC では、販売先の国の通貨で決済が行われることが基本です。支払通貨と販売通貨が異なるため、為替相場によって売上が変動し、場合によっては損失が発生する可能性があります。販売価格を設定する際には、あらかじめ通貨レートの変動や影響範囲を考慮しておきましょう。
国・地域によって異なる対応が必要
外国の人に商品を購入してもらうことを目的とした EC サイトでは、当然のことながら、対象となる国の言語への対応が求められます。EC サイトの翻訳をはじめ、問い合わせや返品、キャンセルなどのサポート情報の外国語対応も必要になるでしょう。国・地域ごとに好まれるデザインの傾向などを考慮したマーケティング施策も大切です。
また、海外には、日本と異なる法律や規制が数多く存在します。越境 EC を行う際には、対象となる国・地域の法律や規制に、それぞれ対応しなければなりません。
例えば、EU を含む欧州経済領域(EEA)で適用される GDPR (EU一般データ保護規則)には、個人情報に関する厳しい規制があります。食品や化粧品、医薬品などを販売する際、アメリカでは FDA (アメリカ食品医薬品局)の事前申告番号の取得、中国では NMPA (中国国家薬品監督管理局)の登録が必要な場合もあります。販売可能な商品やライセンス、関税、個人情報の取り扱いなど、対象となる国・地域の事情をきちんと調べておくことをおすすめします。
トラブルが発生する可能性がある
越境 EC では、国内販売に比べてトラブルが起こる可能性が高いです。例えば、商品の配送に時間がかかるため、紛失や破損のリスクが発生しやすくなるでしょう。支払いに関しても、クレジットカードの不正利用、代金引換での支払拒否、支払いの遅延などのトラブルが考えられます。
関税や輸入規制によって、商品が税関で引っかかってしまう可能性もゼロではありません。さまざまなリスクを想定して対策を講じていかなければいけない点も、越境 EC の注意点といえます。
越境ECを成功させるポイント
越境 EC を立ち上げる際には、検討すべきポイントがいくつかあります。以下のポイントを抑えておきましょう。
EC サイトの多言語化
越境 EC による事業を行う際には、言語の違いが最初の壁となるため、事前にEC サイトを多言語化する必要があります。その際、日本語のテキストをただ翻訳するだけではなく、使用する画像やレイアウトなどのデザインにおいても、ターゲットとなる国の文化に合わせたほうが良いでしょう。
また、外国人ユーザーが安心して EC サイトを利用できるように、商品やサービスのページのほか、利用ガイドや FAQ ページの多言語対応も必要です。
決済方法を複数用意する
越境 EC で利益を上げるには、商品の決済方法を複数用意する必要があります。日本国内ではクレジットカード決済が利用されていますが、国によっては別の決済手段が一般的な支払い方法として普及しているケースがあるからです。
物流や配送の体制を構築する
日本から現地に商品を配送する体制を事前に整えておくことで、配送の遅延や商品破損によるキャンセルなどに対してスムーズに対応することが可能です。ここでは、日本から海外への配送方法をご紹介します。国や商品によって適切な配送方法が変わってくるため、自社にあった方法を選択しましょう。
・直接配送
初期費用はかかりませんが、サイズや形状などの制限があったり、配送スピードが遅かったりということがあります。また、複雑な税関手続きが必要になります。
・代行サービスの活用
代行サービスを活用すれば、輸出に必要な書類の準備や、梱包後の手続き、商品配送を任せることができます。コストはかかりますが、通関手続きなどもまとめて依頼できるため、効率的です。
・現地に拠点を持つ
対象とする国に物流拠点を置いて、現地の提携先事業者によって配送する方法です。現地からの発送になるため、商品の到着までの時間が短くなります。一方で、在庫保管のための維持コストや初期費用がかかります。また、しっかりとした現地提携先を選択しないとトラブルの原因となる可能性があるため、契約の際には注意が必要です。
問い合わせや販売後のサポート体制を準備する
越境 EC で海外展開をする際には、国内と同様に問い合わせ対応や販売後のサポートが必要です。その際、現地の言葉でやりとりする必要があるため、外国語を扱える専門のスタッフを雇うなどの対策が求められます。
海外向けのマーケティングを行う
越境 EC は、EC サイトを作って終わりということではありません。どのようにユーザーに自社商品を告知し、商品の魅力を伝えるのかなどの検討が必要です。越境 EC は、これまでとターゲットが異なるため、その国に合わせた内容で、SNS や現地広告、SEO などを用いて集客します。扱っている商品なども考慮しながら、自社にマッチした方法を採用することが大切です。
越境 EC の立ち上げ準備
越境 EC を始める際に準備しておくべきことがあります。ここでは、具体的な内容を説明します。
1. 予算を確保する
越境 EC は、現地に実店舗を構えるよりは低コストですが、人員や予算をかけずにできるビジネスというわけではありません。EC サイトの多言語化や運営、商品管理など、それなりのコストはかかります。
また、越境 EC を始めてすぐに黒字化できるとは限らないため、中長期的な視点で予算を確保しておく必要があります。
2. 越境 EC の対象とする国を決める
予算を確保し、越境 EC を立ち上げるには、まず展開する国や地域を決定します。自社商品と各国の需要を分析して、相性の良い地域を絞り込んでいくことも考えられます。
3. 越境 EC で販売する商品を決める
越境 EC を展開する国・地域を決めた後は、対象国に合わせて販売する商品を考え、価格を調整します。その国で新たな需要を見いだせる可能性のある商品を発見するために、事前調査は必要です。求められているニーズは何かを十分にリサーチし、売れる算段がついてから準備を進めることをおすすめします。場合によっては、そもそも自社の商品が越境 EC に向いているのかを再検討することもあります。
4. 法律やルール、商取引の習慣を確認する
日本では問題のない商品であっても、海外では使用不可だったり輸入が禁止されていたりする商品に該当する場合があります。トラブル回避のためにも、販売する国の法律や規制、商取引の慣習などについての確認が必要です。
また、商品を海外へ輸出する場合は関税がかかります。関税は、国によって異なることはもちろん、取り扱う商材によっても異なります。商材によっては輸出先や原産国、品目の材質、加工の有無、用途によって関税率は大きく異なることがあるため注意しましょう。関税や郵送については JETRO (ジェトロ)や日本郵便の Web サイトを確認しておくことをおすすめします。
出典:税関 「主な商品の関税率の目安(カスタムスアンサー)」https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1204_jr.htm
出典:日本貿易振興機構(ジェトロ) 「輸出入に関する基本的な制度」https://www.jetro.go.jp/world/trade.html
出典:日本郵便「万国郵便条約に基づく禁制品」https://www.post.japanpost.jp/int/use/restriction/upc.html
5. 越境 EC の取り組み方法を決める
ターゲットになる国や商品が決まったら、どのように EC サイトを構築するか検討が必要です。いくつか代表的な取り組み方法を解説します。
・自社で EC サイトを構築する
自社で EC サイトを構築する場合は、自由にデザインや機能の変更をしやすいため、ブランドイメージを崩さずに EC サイトを制作することができます。
ただし、システム開発費用をはじめ、多言語対応や配送や決済などを考える必要があります。また、海外向けのマーケティングをしっかり練ってプロモーションを行わないと、存在が認知されない可能性もあるので注意が必要です。
・海外対応の国内モールに出店する
日本国内で越境 EC に対応したモール(楽天市場や Amazon など)を利用する方法もあります。申込みなどもすべて日本語で対応でき、サポート体制もあり、システム構築の手間がなく運用業務の大部分を代行してもらえるため、手軽です。
一方、モールが定めるルールにより、EC サイトのデザインや配送方法などに制限がある場合や手数料がかかることもあるため、出店先の国で十分な集客が見込めるか確認する必要があります。
・海外の現地モールで出店する
日本での楽天市場や Yahoo!ショッピングのように、進出する国ごとに多く利用されているプラットフォームがあります。集客力がある現地のプラットフォームを活用することで、幅広いユーザーを集客できる点が強みになります。国内プラットフォームを利用した場合と同様に手数料がかかり、また申込みに際しては現地の運営事業者との交渉が発生するなど、ハードルが高い面もあります。専用の代行会社がある場合は、その会社からのサポートを活用することも検討してみてください。
越境 EC には Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」がおすすめ
越境 EC は、国内から海外に向けて事業展開を行う際の手法として普及しています。国境を越えてビジネスをする越境 EC は、法律や言語、異文化への適合といった壁はありますが、非常に魅力的な市場になっています。成功につながるポイントを踏まえて、自社の売上に貢献していきましょう。
越境 EC の導入にあたり、Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を活用するのもひとつの方法といえます。「WOVN.io」は、越境 EC のように膨大な情報量のある Web サイトも自動で多言語化することが可能です。EC サイトの特徴でもある動的コンテンツに対しても、リアルタイムでスピーディーな翻訳を実現します。
越境 EC の多言語展開をお考えの際には、「WOVN.io」の導入をぜひご検討ください。