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Web アクセシビリティとは?必要性や基本方針、対応策を解説
佐藤菜摘
日本語しかわからない人が海外の Web サイトを見て、「日本語のページがあればいいのに」と感じて離脱するように、日本語のみの Web サイトは多くの外国人ユーザーの離脱を招く可能性があります。そこで重要なのが、インターネットを活用するあらゆる人に配慮した、「Web アクセシビリティ」の向上です。
本記事では、Web アクセシビリティの向上に取り組むことの重要性や、具体的な施策などについて解説します。
目次 |
あらゆる人に配慮する Web アクセシビリティ
Web アクセシビリティの「アクセシビリティ」は、「利用しやすさ」「便利であること」などと訳される言葉です。転じて、「製品やサービスの利用しやすさ」および「利用状況(到達度)」という意味でも使われています。よって、Web アクセシビリティという場合、さまざまな人がさまざまな状況下で、Web サイトの情報やサービスを利用できることを指します。
アクセシビリティというと、障害のある人や高齢者への対応をイメージしがちですが、政府広報オンラインによると、「利用者の障害などの有無やその度合い、年齢や利用環境にかかわらず、あらゆる人々」が対象で、言語が異なる人への対応も含みます。
特に、インバウンドが増加している今、日本を訪れたい人、訪れた人の利便性を高め、安心・信頼につながるWeb サイトの多言語化は、早期に実践すべき Web アクセシビリティといえるでしょう。
法改正でWeb アクセシビリティに注目が集まる
2024年4月1日の改正障害者差別解消法の施行で、Web アクセシビリティに対する関心が高まっています。
同法により、「事業者による障害のある人への合理的配慮の提供」が義務化されました。Web アクセシビリティの確保自体は義務ではありませんが、2016年4月の障害者差別解消法施行から努力義務に挙げられていたことでもあり、この機会に合理的配慮の提供に伴う環境整備の一環として、取り組むことが望ましいでしょう。
合理的配慮の提供とは、社会的なバリアが活動を阻害している状況で、当事者から「バリアを取り除いてほしい」という依頼があった場合にとるべき対応のことです。企業は、実施に伴って過度な負担がかからない範囲で、バリアを取り除くための対応が求められます。
Web アクセシビリティの重要性
Web アクセシビリティを向上させることで、企業は自社の Web サイトにアクセスする人に対して、公平な情報発信ができます。
現代社会において、Web は生活を支える重要なインフラです。老若男女問わず、日常的に Web を通して申請や手続きをしたり、情報を得たりする必要があり、属性や特性、国籍によってアクセシビリティに差があれば大きな不利益になりかねません。
誰も取り残さない Web サイトを作ることは、ソーシャル・インクルージョンの観点から自社のサービスを見直し、企業の社会的責任を果たす意味でも重要な取り組みです。
Web アクセシビリティの具体例
Web アクセシビリティが確保された Web サイトでは、企業価値の向上につながるような配慮がなされています。どのような機能があるといいのか、具体例をご紹介します。
文字や画像を読み上げた際に、意味が伝わる
Web サイト上の文字を読むことが困難な人の多くは、画面上のテキストを合成音声で読み上げる「スクリーンリーダー」というソフトウェアを使用しています。
ソフトウェアに意味が伝わるテキストにすることや、写真やイラスト、グラフといった画像で提供される情報の代替となるテキストを用意することを意識しましょう。
色彩切り替えの必要性がある人への配慮がある
色を変更して Web サイトを閲覧する必要がある人は、パソコンそのものの設定を自分に合った環境にしていることが多いです。そのため、カラーテーマを変更できるボタンのような補助機能を新設するより、利用者自身のデバイスの設定に対応できる実装を意識することが大切です。
また、赤字で強調するなど、色の違いだけで情報を伝えないようにします。このことは、色の捉え方が異なる文化圏の人に配慮する意味でも重要です。
特定の対象物に対する色の認識が異なる場合や、色彩の見え方が異なる場合があることも意識してください。
字幕や手話通訳に対応している
Web サイトで映像を使う場合は、聴覚障害がある人や映像の言語が母国語でない人のため、手話、字幕といった視覚的な要素から情報を得られるようにします。
文字情報や手話を追いながら映像を見ると、得られる情報が限られるため、短くわかりやすい映像にしたり、結論を予測しやすくしたりするなど、映像そのものの設計上の配慮も必要です。
外国語対応ページが用意されている・自動翻訳ができる
日本語が母国語でない人への配慮として、多言語翻訳サービスと連携したり、外国語のページを用意したりすることも Web アクセシビリティのひとつです。
グローバル化を視野に入れて Web アクセシビリティ向上を目指すのであれば、進出するローカルマーケットに適応した Web サイトの多言語化に取り組むといいでしょう。
Web アクセシビリティのガイドラインと指針
Web アクセシビリティは、あらゆる利用状況を想定して向上・対応に取り組む必要があります。そのため、網羅的かつ体系的にまとめられたガイドラインを使用することが一般的です。
ここでは、世界標準のガイドラインである「WCAG」と、その一致規格である「JIS X 8341-3」を紹介します。
WCAG
WCAG は Web Content Accessibility Guidelines の略称で、インターネットの各種規格を策定・勧告している団体である W3C (World Wide Web Consortium)が作成したものです。
時代やテクノロジーに合わせてアップデートされ、WCAG2.0 は国際規格「ISO/IEC 40500:2012」として承認されました。現在では世界で採用される Web アクセシビリティの国際基準になっています。
JIS X 8341-3
JIS X 8341-3 は、正式名称を「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス-第3部:Webコンテンツ」といい、国際規格と一致した内容です。国・地域・言語を問わず、誰もが利用できる Web サイトとするための基準が定められています。
現在は、国際規格と W3C の勧告、国内規格(JIS)が完全に一致しています。
Web アクセシビリティ対応をするメリット
Web アクセシビリティの合理的配慮の提供が義務化されたとはいえ、既存の Web サイトを対応させるのは手間がかかります。ここでは、Web アクセシビリティに対応することで得られるメリットについて見ていきましょう。
企業に対する信頼性が高まる
Web アクセシビリティ対応は、企業の社会的責任(CSR)のひとつであることは前述したとおりです。利益を追求するだけでなく、ステークホルダーに対して責任ある行動をとろうとする企業に対して、ユーザーの信頼性は向上します。
また、日本語が読めずに離脱していた外国人ユーザーなどの信頼も得ることができるでしょう。
SEO になる
SEO (Search Engine Optimization)は、日本語では検索エンジン最適化と訳され、検索サイトで Web サイトを上位に表示させ、流入を増やすための取り組みを指します。
検索エンジンがコンテンツを評価する基準は複雑で、公表されていません。しかし、Web アクセシビリティ対応の一環として多言語対応した場合、Google はそれぞれのページをインデックスします。これにより、検索結果に表示されるページ数が増え、流入の増加につながります。
訴訟対策になる
自身の国籍や特性によって、ある Web サイトにアクセスしにくいことを理由に、Web サイトを運営する会社を訴えるケースがあります。グローバル展開している日本企業がアクセシビリティへの対応を怠ると、「拒否された」と感じた人から訴えられる可能性はゼロではありません。
Web サイトにアクセスする人を無意識に限定しないよう、設計することが大切です。
インバウンドの利便性が高まり、売上に貢献する
訪日外国人を視野に入れたサービスを展開する Web サイトで Web アクセシビリティが向上すると、機会損失が減り、売上や評価が高まります。
Wovn Technologies が提供する Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を導入した日本航空株式会社の Web サイトでは、導入後2年で日本語以外の言語からのアクセス、および外国人の利用者の増加につながりました。
詳しくは「WOVN.io、JAL MaaS に導入されインバウンドの利便性向上に向けた多言語対応を開始」をご覧ください。
Web アクセシビリティのためにはそれぞれの母国語で読めることが重要
誰もがアクセスしやすい Web サイトを目指す Web アクセシビリティでは、グローバルなユーザーを視野に入れた Web サイトの多言語対応が重要です。
たとえば、日本の製品やサービスを購入したいとき、あるいは訪日した際の観光先を決めるとき、外国人はさまざまな Web サイトを巡って比較検討します。
観光庁の「訪日外国人の消費動向(2023 年 10-12 月期 報告書)」(※1)によると、訪日出発前に役に立った旅行情報源の言語は、「英語」が52.9%と最も多く、次いで「韓国語」(26.5%)、「中国語(繁体字)」(24.3%)となっています。
紹介されている製品やサービス、観光地にどれだけ興味があっても、母国語に対応していない Web サイトでは思うように読み進められず、満足に情報を得られません。Web サイトの言語は、世界共通語である英語だけではなく、対象となる外国人の言語に対応していることが重要といえます。
また、単に多言語対応するだけでなく、特定の文化や習慣、宗教観、政治的背景、禁忌などにふれる表現で違和感や反感を抱かれることがないよう、多様なバックボーンを考慮することも忘れないようにしてください。
※1 観光庁 訪日外国人の消費動向(2023 年 10-12 月期 報告書)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001734824.pdf
Web アクセシビリティを実現するなら「WOVN.io」がおすすめ
グローバルに展開する企業にとって、在留外国人や外国人従業員、インバウンドなどを想定した Web アクセシビリティの一環として、多言語対応への取り組みは必須です。
しかし、外国人の Web アクセシビリティの確保には専門的なノウハウや人材が必要で、限られたリソースでは対応が難しいことも少なくありません。そこでおすすめなのが、Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」です。
国内外の大手企業をはじめとした18,000サイト以上の導入実績がある「WOVN.io」なら、1つのタグの挿入で多言語ページを自動生成できる他、対象箇所を見ながら国や地域の特性に合わせた編集ができる「ライブエディター」や、生成 AI で企業の用語やビジネスの特性を加味した翻訳を提供しています。
外国人に向けた Web アクセシビリティを実現したい場合は、お気軽にお問い合わせください。
佐藤菜摘
前職は、広告代理店にて大手CVSの担当営業として、販促物製作やブランディングプロジェクトに従事。2016年WOVN Technologies株式会社に入社し、広報業務を担当。2022年よりMarketingチーム。