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2030年問題で何が変わる?与える影響や企業がとるべき具体策

佐藤菜摘

近い将来、日本の社会に大きな影響を与えるとされているのが「2030年問題」です。2030年問題とは、少子高齢化に伴う人口構造の変化によって起こる、社会問題の総称を指します。2030年を目前に控え、さまざまな社会的・経済的な変化が予測されており、多くの企業が危機感を強めています。
社会的課題をチャンスに変え、持続可能な成長を実現するためには、どのような取り組みを進めればいいのでしょうか。
本記事では、2030年問題が社会や企業に与える影響や、その中でとるべき具体的な対策について、詳しく解説します。
目次 |
2030年問題とは?
「2030年問題」とは、2030年頃に表面化すると予想されるさまざまな社会問題を総称する言葉です。具体的には、人口減少、少子高齢化、労働力不足、エネルギー問題などが挙げられます。
2030年問題の根底にあるのは、高齢化による人口構造の変化です。内閣府が発表している「令和5年版高齢社会白書」によれば、2030年には高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)が30%を超え、約3人に1人が高齢者になると推計されています。
反対に生産年齢人口は減少し、GDP (国内総生産)の低下や医療費の増大、社会保険料の負担増加など、さまざまな問題が深刻化すると懸念されています。現在の政策や社会構造がこれらの課題に対応できなければ、経済や生活に多大な影響を及ぼす可能性があるでしょう。
2025年問題との違い
2030年問題の前段階に生じるといわれているのが、「2025年問題」です。2025年問題は、団塊世代(1947~1949年生まれ)が75歳以上の後期高齢者になることを契機とするさまざまな課題の総称を指します。主な問題は、医療費や介護費の急増、医療・介護人材の不足、財政負担の増加です。医療機関や介護施設の受け入れ体制の整備も大きな課題となります。
一方、2030年問題は、少子高齢化がさらに進行することによる、社会全体の構造的な変化に関連する問題です。2030年問題は、労働力不足、地方の過疎化、都市部への一極集中、インフラの老朽化、環境負荷の増大など、社会経済全般に広範な影響を与えます。2025年問題が高齢者の急増に焦点を当てた課題なのに対し、2030年問題は、人口減少と社会全体の持続可能性にかかわる包括的な問題といえるでしょう。
2030年問題の影響
2030年問題は、社会や企業にさまざまな影響をもたらします。どのような影響があるのか、具体的に見てみましょう。
人口減少と少子高齢化
総人口の減少と65歳以上人口の増加により、高齢化率は今後も上昇を続け、2030年には総人口の30%を超える予測です。高齢化の進展によって年金や医療費などの社会保障負担がますます増大し、政府や企業、個人にとって大きな経済的負担となる可能性があります。一方で、働き手となる生産年齢人口は減少するため、消費の縮小や税収の減少、経済活動の停滞が懸念されるでしょう。
さらに、人口構造の変化は地方の過疎化を加速させ、都市部への一極集中が進む可能性もあります。地域経済が衰退し、都市と地方、または地域間の格差が広がるおそれが高まります。
労働力不足
15~64歳の生産年齢人口の減少に伴い、あらゆる業界で労働力不足が深刻化すると考えられています。中でも、建設業界や物流業界などでの人手不足は顕著です。企業の生産性向上や安定的なサービス提供が難しくなり、経済全体に悪影響を及ぼすかもしれません。
労働力不足の問題に対処するには、外国人労働者の受け入れ拡大や、ロボティクスの活用が求められます。企業の競争力を強化するために、労働の自動化と人的リソースの最適化を両立させる仕組みづくりが必要になるでしょう。
インフラの老朽化
日本の道路や橋、トンネル、上下水道などのインフラは、1960~70年代の高度経済成長期に整備されたものが多く、老朽化が加速しています。何らかの対策をとらなければ不具合が生じ、事故につながるリスクがありますが、修繕費や更新費は地方自治体の重い財政負担となるでしょう。
さらに、近年問題視されているのが、インフラ整備を担う技術者の高齢化や人材不足です。デジタル技術の活用など、有効な対策をとらなければ、メンテナンスが追いつかなくなる可能性があります。
エネルギー問題と気候変動
エネルギーの安定供給と気候変動への対応も、2030年問題のひとつです。日本政府は2050年までに、温室効果ガス排出をゼロにする、カーボンニュートラルを目指すと宣言しました。それに向けて、2030年には温室効果ガスを2013年比で46%削減するという目標を掲げています。
カーボンニュートラル実現のためには、太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギー拡大の取り組みが不可欠です。さらに、化石燃料からの脱却には、電気自動車の普及や水素エネルギーの活用も課題となります。
技術革新とデジタル化
AI や IoT といったデジタル技術は、2030年に向けてますます進化すると考えられます。新しい技術も続々と登場し、社会に変革をもたらすでしょう。そのひとつが、デジタル技術を活用して都市機能の効率化・最適化を図るスマートシティです。内閣府が公開している「スマートシティ・ロードマップ」では、2030年頃をひとつの区切りとして、さまざまなスマートシティサービスの実装フェーズとして位置づけています。
ただし、技術の導入にあたっては、企業ごとのデジタル格差が生じ、デジタルデバイド(情報格差)の拡大が懸念されます。大企業は最新技術や高度なシステムを導入できる一方で、中小企業はそれに追いつけず、競争力や効率性の面で不利になる可能性があります。
教育と人材育成
2030年問題においては、人材教育・人材育成のあり方も従来とは大きく変わってきます。労働の自動化やデジタル技術の活用など、新たな産業構造に対応するためには、専門的なスキルを持った人材が求められます。特に、AI や IoT、データ分析などの新技術に対応できる人材を確保することが、企業の競争力維持に重要な課題となるでしょう。
しかし、どのような業界でも、新技術に精通した人材はそれほど多くないのが現状です。必要な知識・スキルを持つ人材が不足している場合は、教育や育成が必要になります。社内でのスキルアップ支援や、外部との連携によるリスキリング・アップスキリングの取り組みなど、柔軟な教育環境を提供することが大切です。
2030年問題で企業がとるべき対策
前述したように、2030年問題による影響は、広範囲かつ多岐にわたります。これからの企業経営においては、これらの課題が解決されなかった場合のリスクと、その影響を考慮した取り組みが求められます。持続的な社会の実現と企業の成長を目指す上で、2030年問題への対策は必須です。2030年問題に備えるために企業がとるべき対策は、以下のとおりです。
働き方改革の推進
長期的な労働力確保を目指すためには、これまで以上に働き方改革を進めていく必要があります。テレワークやフレックスタイム制など、柔軟な労働環境を整備することによって、従業員のワークライフバランスの実現と、仕事への満足度やモチベーションの向上が期待できます。
さらに、柔軟な働き方を提供することで、企業の発展に不可欠である優秀な人材が集まり、定着しやすくなるでしょう。その結果、生産性が向上し、限られた人材でも効率的な運営が可能になるなど、持続的な成長へ向けた好循環が期待できます。
外国人労働力の活用
国内の生産年齢人口が減少を続ける中、企業が必要な人材を確保するには、外国人労働力の活用がカギになります。それには、単に外国人を雇用すればいいというわけではなく、多言語対応のマニュアルや研修制度など、外国人が働きやすい受け入れ体制を整える必要があるでしょう。
現代の企業では、性別、年齢、国籍、価値観、ライフスタイルなど、さまざまなバックグラウンドを持つ人々を組織内で尊重し、活用するダイバーシティ経営が求められています。外国人労働力を積極的に活用することで、新たな市場の開拓や、多様な視点を活かしたイノベーションの創出にもつながります。
DX の推進
DX はデジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、企業の競争力を高めることを指します。2030年問題への対応策として、自動化や AI、ロボティクスといったデジタル技術の活用が不可欠であり、そういった文脈からも DX は注目されています。
DX は、人手不足を補うだけでなく、生産性向上や業務効率化にも大きな効果をもたらすものです。さらに、人的リソースをより戦略的な業務に集中できるようになり、無駄の削減や迅速な意思決定も促進できるでしょう。組織全体のパフォーマンスを最適化するためには、DX の推進がますます重要となります。
リスキリングとアップスキリング
2030年問題に対応するためには、従業員のリスキリングとアップスキリングを推進することが大切です。リスキリングとは、変化する業務や職務に適応するために、新しいスキルや知識を習得することです。また、アップスキリングとは、すでに持っているスキルや知識を強化・更新し、さらに高度な能力を身につける取り組みを指します。技術の進歩が加速する中、IT やデジタル分野のスキル習得は特に重要です。従業員教育やキャリア開発支援などを充実させ、変化するビジネス環境に迅速に対応できる柔軟な組織を構築しましょう。
脱炭素経済への移行
2030年問題への対策の一環として、企業は、脱炭素経済への移行に積極的に取り組む必要があります。具体的には、再生可能エネルギーの導入や、省エネ技術の活用など、温室効果ガスの排出削減に向けた施策が求められるでしょう。環境に配慮した経営は、企業のブランドイメージや投資家からの評価を向上させることにもつながります。
サステナビリティ経営
サステナビリティ経営とは、企業が経済的価値だけでなく、環境保護や社会貢献にも配慮しながら、事業の長期的な持続可能性(サステナビリティ)を図る経営手法です。
2030年問題をふまえて日本企業が継続的に成長していくには、世界的に共通する課題にも目を向けなければなりません。そのための観点として重要視されるのが、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの要素からなる「ESG」です。
特に、気候変動対策(環境)、労働環境や人権の尊重(社会)、透明で公正な経営体制(ガバナンス)といったテーマは、どの国でも関心が高く、国際的な基準の策定も進んでいます。近年は、リサイクル技術の導入や、資源の循環型経済の実現を目指す動きも加速しています。経済だけでなく、環境、社会の持続可能性を考慮したサステナビリティ経営は、企業の社会的責任を果たすと同時に、長期的な企業価値の向上につながるでしょう。
地域拠点の活用
2030年問題によって想定される影響のひとつが、人口や経済活動の大都市一極集中です。この問題を是正するには、地域拠点の活用促進が効果的です。
地域拠点の設置により、都市部への一極集中を緩和できるだけでなく、テレワークの推進や、地元の特産品や人材を活用した事業展開も可能になります。さらに、地方拠点の活用は、災害など、企業のリスク分散にもつながるでしょう。
グローバル展開
今後、人口減少に伴う国内市場の縮小は避けられません。このような中で企業が成長を続けるには、グローバル展開が重要な戦略となるでしょう。
たとえば、新興国や、人口減少の影響が少ない地域への進出は、企業が飛躍するきっかけになる可能性があります。現地のニーズをふまえた商品・サービスを開発することで、企業の競争優位性も高まります。海外での事業を通じてグローバルな人材を活用し、多様な視点を取り入れることも可能です。
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日本の企業にとって、人口減少、少子高齢化、労働力不足といった2030年問題は、避けては通れない課題です。何も対策せずに2030年を迎えた場合、事業の停滞を招くかもしれません。
2030年問題は社会や企業にとって深刻な課題ですが、適切な対策と技術革新によって乗り越えられる可能性があります。ただし、対応するには日本だけでなく、世界を見据えた対策が必要です。そして世界を視野に入れた事業運営をするなら、Web サイトなどの多言語化が欠かせません。国際的な人材を労働力として確保したい場合も、コミュニティ強化のために、情報の多言語化が必要になります。
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佐藤菜摘
前職は、広告代理店にて大手CVSの担当営業として、販促物製作やブランディングプロジェクトに従事。2016年WOVN Technologies株式会社に入社し、広報業務を担当。2022年よりMarketingチーム。
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