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CSRD とは?対象企業と適用開始時期、日本企業に必要なことを解説

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佐藤菜摘

近年は、環境や社会の持続可能性への関心の高まりを受けて、投資や就職・転職などの際に、企業のサステナビリティ(環境や社会の持続可能な発展を目指す取り組み)を重視する人が増えています。企業に対し、サステナビリティの情報開示を義務付けるルールづくりも始まりました。
日本ではまだ成立していませんが、EU ではすでに、CSRD というサステナビリティの情報開示に関するルールが整備されています。

本記事では、CSRD の意味や対象企業、適用開始時期の他、日本企業が CSRD に対応するために必要なことについて解説します。

CSRD とはサステナビリティの情報開示を義務付ける規制のこと

CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)は、日本語で「企業サステナビリティ報告指令」を意味します。具体的には、EU の大企業や上場企業に対し、環境・社会・ガバナンスに関する事項の情報開示を義務付けるルールのことです。2023年1月に発効され、大企業については2024年の会計年度から情報開示が義務となっています。

EU が企業のサステナビリティ情報開示に関するルールを定めたのは、CSRD が初めてではありません。EU では2014年に、NFRD(Non-Financial Reporting Directive:非財務情報開示指令)が導入され、この指令にもとづくサステナビリティ情報の開示が行われてきました。しかし NFRD では、対象となる企業が少なかったり、開示基準が十分に明確でなかったりするなどの課題があり、各企業が開示する情報の質も一定ではありませんでした。

CSRD は、このような課題を踏まえて、企業が報告するサステナビリティ情報を、より一貫性を持ったものとし、金融機関や投資家、一般の人々が、信頼性の高いサステナビリティ情報を利用できるようにすることを目的に導入されたものです。NFRD に比べて適用対象が広く、サステナビリティ情報への第三者保証が義務化されるなど、さまざまな変更が加えられています。

CSRD と NFRD の違い

CSRD と NFRD の主な違いは、対象企業の範囲です。NFRD の対象は、従業員500人以上の大企業で、その数は約1.1万社でした。これに対し、CSRD は、NFRD の対象企業に加え、中小企業、第三国企業も対象となり、その数は約5万社に上ります。NFRD 対象外の企業への CSRD の適用は、2025年1月から段階的に進められていくことになっています。

その他、CSRD では「サステナビリティ情報の第三者保証」「欧州サステナビリティ開示基準(ESRS)に準拠した情報開示」の義務化などの規制があり、NFRD に比べて厳密性が高まっているといえるでしょう。

CSRD の対象企業と適用開始時期

CSRD は EU の規制ですが、日本企業も無関係ではありません。日本企業も、EU 内に大企業に該当する子会社があった場合、早ければ2025年の会計年度から CSRD の適用対象となります。また、2028年以降は EU で売上高が高い子会社や支社を持つ第三国企業も対象となるため、売上高などの条件に該当すれば、日本企業も対象となります。
CSRD の対象企業と適用開始時期の詳細は、以下のとおりです。

■CSRD の対象企業と適用開始時期

適用開始時期

報告年

対象企業

2024年1月1日以降に始まる会計年度

2025年

NFRD 対象企業
・NFRD 対象の従業員500人以上の大企業

2025年1月1日以降に開始する会計年度

2026年

NFRD 対象でない大企業(以下の要件のうち2つ以上を2会計年度連続で満たす企業)
・総資産2,000万ユーロ超
・売上高4,000万ユーロ超
・従業員250人超

2026年1月1日以降に開始する会計年度

2027年

EU 市場に上場している中小企業(以下の3要件のうち2つ以上を2会計年度連続で満たす零細企業は除く)
・総資産35万ユーロ以下
・売上高70万ユーロ以下
・従業員10名以下

2028年1月1日以降に開始する会計年度

2029年

EU 域外企業(過去2期連続で EU 域内の売上高が1億5,000万ユーロ以上で、EU 域内に以下の2要件のうち1つ以上を満たす子会社・支社を有する企業)
・EU 域内の子会社が大規模企業または上場企業に該当
・EU 域内の支社の EU 域内の売上高が4,000万ユーロ超

CSRD の開示項目

NFRD では、情報開示に特定の基準の適用は義務付けられておらず、企業が自由に選択できたため、公開された情報の質は企業によって異なっていました。CSRD ではこの点が改善され、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)という開示基準にもとづいた情報開示が義務化されています。

CSRD の開示項目は、環境、社会、ガバナンスの3つのセクターに分けられており、これに「横断的な基準」を加えた4セクター12の基準から構成されています。開示項目の体系は、以下の表のとおりです。

■CSRD の開示項目

横断的な基準

全般的な要求事項

全般的な開示

環境

社会

ガバナンス

・気候変動
・汚染
・水/海洋資源
・生物多様性と生態系
・資源利用と循環型経済

・自社の従業員
・バリューチェーン上の労働者
・影響を受けるコミュニティ
・消費者とエンドユーザー

・事業活動

 

CSRD は、「環境と社会が企業に与える財務的影響(財務的マテリアリティ)」と、「企業が環境と社会に与える影響(環境・社会的マテリアリティ)」の両方の側面から考える、ダブルマテリアリティの考え方に則り、多角的な情報開示が求められているのが特徴です。
上記の「横断的な基準」に記載されている「全般的な要求事項」は、開示の基礎となる考え方をまとめた項目になります。「全般的な開示」は、報告基準全体に関する開示要件を定めた項目です。

日本企業が CSRD に対応するために必要なこと

0216_slide2_1200_630EU 域内 に子会社や支社がある日本企業は、子会社が大企業に該当する場合、2025年の会計年度からCSRD に則ったサステナビリティの情報開示を求められます。子会社が大企業に該当しない場合でも、前述の要件を満たせば、2028年には情報開示企業の対象になります。

CSRD が求める情報開示ルールに対応するには、グループ全体で取り組む必要があるため、早くから以下のような準備を進めることが重要です。

データの収集・開示の体制を作る

CSRD に対応するには、早期にグループ全体としてデータの収集・開示体制を構築し、運用を始めることが大切です。まずは、CSRD が求める基準と自社に適用される時期を理解した上で、プロジェクトチームを立ち上げ、やるべきことを洗い出して情報開示までのロードマップを作成しましょう。

2028年以降は、過去の情報についても開示が求められる場合が出てくると予測されるため、できる限り早期に体制を整え、運用を開始することが重要です。

なお、CSRD の求めるデータを収集するには、自社のみならず、国内外の子会社や社外のサプライヤーとも連携していく必要があります。そのため、自社が CSRD の対象企業でなくても、取引先から情報開示要請を受ける場合もあり、対応できなければ取引中止となるリスクがあります。自社が CSRD 対象企業でなくても、取引先によっては、CSRD への対応が必要です。

コンサルティングサービスを活用する

コンサルティングサービスを活用することも、CSRD に対応する上で大切です。CSRD を正しく理解し、社内の数多くの部門や国内外の子会社、社外のサプライヤーと連携してデータの収集・開示体制を構築するには、膨大な工数と時間がかかります。これらを効率的に進めるために、コンサルティングやデータ収集・開示、ESG 経営をサポートする「サステナビリティ ERP」のような外部サービスを活用するのがおすすめです。

Web サイトなどの多言語化を行う

CSRD に対応するには、Web サイトなどの多言語化を行うことも大切です。サステナビリティの情報開示を求める動きが世界的に加速する中、日本でも2027年3月期以降、時価総額3兆円以上の大企業にサステナビリティ関連情報の開示を義務付ける動きがあります。また2025年4月からは、東京証券取引所のプライム市場上場企業に対し、IR 情報の英文開示が義務化されるなど、多言語化を含め、海外の投資家やステークホルダーに向けた情報発信が求められるようになっています。

このような動きに対応する有効な対策のひとつが、Web サイトの多言語化です。多言語化には時間や手間がかかりますが、海外の多様なステークホルダーが多角的な企業情報を必要としているため、適切に対応することが大切です。

CSRD を正しく理解し、適切に対応しよう

EU の新しいサステナビリティ情報開示ルールである CSRD は、サステナビリティに対する意識が世界的に高まる中で導入された基準です。EU 域内の企業はもちろん、EU 域内に子会社や支社を持つ日本企業、CSRD 対象企業の取引先である企業も対象に含まれるため、しっかり対応していく必要があります。

CSRD に適切に対応するには、まず CSRD を正しく理解することが大切です。また日本国内でも、今後、企業にサステナビリティ情報の開示を義務付ける動きや、IR レポートの英文開示を義務化する動きもあるので、これらにも対応できるよう、Web サイトの多言語化などを進める必要があります。

Web サイトを多言語化するなら、「WOVN.io」がおすすめです。18,000サイト以上の企業導入実績がある「WOVN.io」なら、Web サイトに1行のスクリプトを埋め込むだけで多言語化でき、日本語のコンテンツが公開されるタイミングと同時に世界中のステークホルダーに母国語で情報を共有できます。また、元の Web サイトのコンテンツが更新されるたびに変更が多言語版にも自動的に反映されるため、運用にかかる不要なコストの圧縮、人的リソースの削減、導入期間の短縮を実現します。
Web サイトの多言語化なら、ぜひ「WOVN.io」の導入をご検討ください。

 

 

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