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IR 情報の英文開示義務化に対応するポイントを解説!事例も紹介

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佐藤菜摘

海外の投資家は、日本企業の IR 情報の英文開示を強く希望しています。こうした状況を受け、東京証券取引所は、上場企業に対する IR 情報の英文開示義務化を発表しました。グローバル競争に取り組んでいくためには、IR 情報を日英同時に、スピーディーかつ正確に発信していくことが大切です。

本記事では、東証プライム市場の上場企業への IR 情報の英文開示義務化について、詳しく解説します。英文開示義務化に対応するメリットやポイントの他、英文開示を行った事例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

東証プライム市場でIR情報の英文開示が義務化

東京証券取引所は2024年2月、プライム市場の上場企業に対して IR 情報の英文開示を義務付けると発表しました。2025年4月1日以後に開示される以下の IR 情報については、英文開示が義務付けられます。

<英文開示義務化の対象>
・決算情報:決算短信、四半期決算短信、決算補足説明資料
・適時開示情報:すべての適時開示項目

この決定の主な目的は、プライム市場が「グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場であること」を前提として、海外投資家からのさらなる投資を呼び込むことです。

開示のタイミングについては、全書類・全文を日本語と英語で同一の内容を同時に開示することが望ましいとされています。ただし、緊急時など、諸般の事情で日英の同時開示が日本語による開示の遅れを引き起こす場合には、日本語を優先して開示することができます。
また、日本語で開示した情報の一部、または全体の概要を英文開示すれば必要な情報を提供できる決算情報については、サマリー情報のみの英文開示も可能です。しかし、海外投資家からは、英文情報の乏しさや開示のタイムラグによる情報格差への不満の声が多く、細部に至るまで日本語での開示と同様の英文開示を求める意見が多数を占めています。

なお、株式会社日本取引所グループが2025年1月に出したプレスリリース(※1)によれば、プライム市場の企業の英文開示状況は、2024年12月末時点で99%でした。資料別では、決算短信が93.8%、IR 説明会資料が76.4%、適時開示資料が59.2%で、いずれも前年末比で上昇しています。
英文開示に取り組む企業が、義務化に背中を押される形で増加しているといえるでしょう。

※1 株式会社日本取引所グループ 英文開示実施状況調査結果(2024年12月末時点)の公表について
https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0060/mklp77000000q7qr-att/20250122-01_JP.pdf

IR 情報の英文開示が大切な理由

IR 情報の英文開示が大切であることには、いくつかの理由があります。主な理由は、以下の2つです。

海外投資家は IR 情報を読んで投資を判断するから

IR 情報の英文開示が大切なのは、海外投資家は IR 情報を読んで投資を判断するからです。
株式会社日本取引所グループが2023年に実施した海外投資家へのアンケート(※2)では、「投資判断を行う際の主な情報ソースは何ですか」という問いに対し、「主に上場会社の開示資料(英語)を利用している」との回答が58%に達しました。
なお、「主に上場会社の開示資料(日本語)を利用している(自ら翻訳を行って利用する場合を含む)」という回答も25%ありましたが、自社で翻訳を行っている場合も含まれているため、英語による開示資料に対する海外投資家のニーズは高いといえるでしょう。

※2 株式会社日本取引所グループ 英文開示に関する海外投資家アンケート調査結果
https://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/disclosure-gate/survey-reports/nlsgeu000005qpys-att/jr4eth0000000yhe.pdf

海外投資家のアクティブ運用のニーズに応えられるから

海外投資家の「アクティブ運用」のニーズに応えるためにも、IR 情報の英文開示が大切です。
株式の運用手法は、大きく「パッシブ運用」と「アクティブ運用」の2つに分けられます。パッシブ運用は「インデックス運用」ともよばれ、ベンチマークとなる市場全体の値動きに連動した運用成果を目指す手法です。ベンチマークとほぼ同じ動きを目指して自動的に運用するため、コストを抑えて安定的に運用できます。
一方のアクティブ運用は、市場全体の値動きを上回る運用成果を目指す手法です。個別銘柄を分析・選定して運用するため、リスクはありますが、市場平均を超える利益を得られる可能性があります。

海外投資家のアクティブ運用のニーズに応えて投資を集めるには、海外投資家向けに企業情報を発信する必要があります。そのために、IR 情報の英文開示は不可欠であるといえるでしょう。

IR 情報の英文開示を行うメリット

0232_slide3_1200_630IR 情報の英文開示を行うことには、複数のメリットがあります。主なメリットは以下のとおりです。

海外投資家が増える

IR 情報の英文開示を行うと、海外投資家が増えます。
海外投資家は、世界中の企業を比較して投資先を検討しています。IR 情報開示のタイミングが遅かったり、開示されている情報が限定的だったりすると、十分な比較ができず投資リターンを毀損するリスクがあるため、日本企業に関心があっても投資に踏み切れないケースが少なくありません。IR 情報を幅広く、かつ日英同時に開示することで、自社に対する海外投資家の理解を深め、投資を集めやすくなるでしょう。
実際に、株式会社東京証券取引所の調査(※3)では、IR 資料を英文開示している企業は英文開示していない企業に比べ、海外投資家の株式保有率が高くなっています。

※3 株式会社東京証券取引所 英文開示実施状況調査集計レポート
https://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/disclosure-gate/survey-reports/nlsgeu000005qpys-att/mklp77000000q6rm.pdf

企業経営の透明性が高まる

企業経営の透明化が高まることも、IR 情報の英文開示を行うメリットです。
IR 資料を日本語版と同等のレベルで英文公開することで、世界の投資家に対し、公平に情報を提供できます。このような、決算情報や経営方針を透明化する姿勢は、海外投資家の信頼を高め、企業価値の向上につながります。

IR 情報の英文開示を行う際のポイント

IR 情報の英文開示を行う際には、いくつかのポイントを押さえることが大切です。主なポイントについて解説しますので、参考にしてください。

正確かつ漏れなく英語化する

IR 情報の英文開示を行う際は、正確かつ漏れなく英語化することが大切です。IR 情報は海外投資家の投資判断に直結するため、誤訳や情報の抜け漏れがあると、投資家に誤解を与える可能性があります。特に、決算情報や適時開示情報は正確性が求められるため、専門的な知識を持った翻訳者やツールを活用することが重要です。

幅広く英文開示する

幅広く英文開示することも、IR 情報の英文開示を行う際のポイントです。IR 情報の英文開示が義務化されるとはいえ、最低限の情報だけを翻訳すればよいというわけではありません。決算短信だけでなく、プレスリリースや経営方針の説明資料など、投資家が必要とする情報を幅広く英語で提供することが望ましいといえるでしょう。

英文には十分な専門性を持たせる

IR 情報の英文開示を行う際は、専門性を損なうことなく英文化することが大切です。例えば、翻訳を担当する人の財務会計の知見が十分でない場合、海外投資家の求める実情をきちんと伝えられない場合があります。結果として、海外投資家が解釈を誤り、リターンを毀損する投資判断をした場合、訴訟に発展してしまうケースもないわけではありません。
自社のビジネス、および開示する和文原稿に記載されている情報を十分に理解し、専門性を損なわずに英文化することが重要です。

Web サイトを使いやすい構造に設計する

Web サイトを使いやすい構造に設計することも、IR 情報の英文開示を行う際のポイントです。Web サイトに英文の IR 資料を掲載しても、海外投資家が適切にアクセスできなければ、情報を提供できません。海外投資家の目線になり、IR 資料への導線を英語でわかりやすく示すことを意識しましょう。IR 資料を種類ごとに整理したり、充実した検索機能をつけたりすることも効果的です。

海外投資家を意識した内容にする

IR 情報を英文開示する際には、海外投資家の視点を意識した内容にすることも大切です。「英語版のコンテンツを充実させる」「UI(機能や見た目)や UX(使い心地)をグローバルな視点で設計する」といった対応をすると、自社に対する海外投資家の理解と信頼の向上を期待できます。

日本語版と同時に開示する

日本語版と同時に開示することも、IR 情報の英文開示では大切なポイントです。海外投資家は、情報開示のタイミングも重視しています。情報を知るタイミングが遅れると、不利なタイミングで投資することになり、十分なリターンにつながらない可能性があるからです。IR 情報の英文開示をする際は、可能な限り日本語版と同じタイミングで行い、同時開示が難しい場合でも、できるだけタイムラグを短くすることが海外投資家の信頼を得るためには非常に重要です。

Web サイトを英語化する

IR 情報の英文開示を行う際は、Web サイトを英語化することも大切です。海外投資家は、投資判断のために Web サイトを隅々まで見ており、IR 情報はもちろん、企業理念やガバナンス情報、採用情報などにも目を通しています。近年は、サステナビリティや ESG に関するページも重点的に見られています。
こうした傾向を踏まえると、IR 情報を英文化するだけでは不十分です。すべての情報が海外の機関投資家に届くよう、Web サイト全体を企業の玄関口と考え、総合的に英文化することをおすすめします。

IR 情報の英文開示の流れ

0232_slide2_1200_630続いては、IR 情報をどのような流れで英文開示するかについて解説します。IR 情報の英文開示の流れは、主に以下のとおりです。

1. 事前調査を行う

最初は、ベンチマークとなる企業の英文開示の状況や、海外投資家の自社に対するニーズなどを調査します。調査結果にもとづいて開示する項目を洗い出し、対応の優先順位を付けましょう。

2. 翻訳の手段を決める

事前調査の次は、翻訳の手段を決定します。「英語力のある従業員に依頼する」「翻訳会社や制作会社に依頼する」といった方法が一般的です。また、IR 情報含むコーポレートサイト全体の多言語化を検討する際には、Web サイトに1行のスクリプトを埋め込むだけでスピーディーに多言語化できる「WOVN.io」の活用もおすすめです。
求める翻訳の精度や、翻訳業務に割ける人的リソース、英文化が完了するまでに必要な期間、予算などを踏まえて比較検討しましょう。

3. 委託先を検討する

IR 情報の翻訳を外部に委託する場合は、委託先を検討します。企業の Web サイトの英文化や多言語化の実績、Web サイトの仕組みに関する知識の有無、対応できる言語の範囲などを踏まえて検討するのがおすすめです。

4. 委託先に発注する

委託先を決めたら、実際に委託先に発注します。海外投資家にとって読みやすく、統一感のある内容にするために、Web サイトの制作ルールを記載したスタイルガイドや用語集を共有すると効果的です。

IR 情報を英語化した事例

当社では、Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」で IR 情報の英文開示に対応した事例が複数あります。主な事例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

工数を半分に抑えつつ、同日・同時刻の情報発信を実現(株式会社ツルハホールディングス)

全国40都道府県にドラッグストアを展開している株式会社ツルハホールディングスは、海外投資家比率が4割を超えています。以前は決算短信・説明会資料のみの英文対応で、日本語版の開示とのあいだに1週間のタイムラグがありました。
日英同時の情報提供を、限られたリソースでスピーディーに行う方法を検討した結果、Web サイトの情報を網羅的に英語化できる多言語ソリューションの「WOVN.io」の導入を決定しました。「WOVN.io」導入後は、一連の作業工数を半分に抑えつつ、同日・同時刻の日英発信を実現できています。

株式会社ツルハホールディングスの事例の詳細は、「国内・海外すべての投資家に向けた日英情報発信のタイムラグは“ゼロ”に。IR 情報はとにかく即時性が大事、WOVN.io だから“スピード感”を持ってサイト多言語化を実現できた。」を参照してください。
※2023年7月時点

海外投資家からのコンタクトが25%にアップ!(Hamee 株式会社)

モバイルアクセサリーの企画・製造・販売と、EC プラットフォーム事業を手掛ける Hamee 株式会社は、上場企業では時価総額が高いほど海外投資家の保有比率が高いことから、海外投資家に注目してもらうべく、IR 情報の英語化に取り組みました。
コストパフォーマンスの良さと実装の手軽さが決め手となり、「WOVN.io」を導入しました。海外投資家からの直接コンタクトの割合は、「WOVN.io」導入前にはほぼ0%でしたが、導入後は25%に増加し、効果を実感しています。

Hamee 株式会社の事例の詳細は、「海外投資家からの直接コンタクトほぼ0%から25%へ。IR サイト英語化で時価総額引き上げを。」を参照してください。
※2019年9月時点

限られたリソースでリアルタイムの情報発信が可能に(松井証券株式会社)

日本株・FX・米国株・NISA・先物オプション・投資信託などの投資サービスを取り扱うオンライン証券会社の松井証券株式会社は、Web サイトを通じて海外投資家に向けて IR 情報を英語で発信していました。しかし、英語化は一部の日本語コンテンツに限られていた上、英語化に時間がかかり、日本語での情報発信から2週間程度遅れることがありました。
英語化にかけられるリソースは限られていたため、最小限のリソースですべての IR 情報を迅速に英文化できる「WOVN.io」を導入。限られたリソースでリアルタイムの情報発信が可能になっただけでなく、エンジニアでなくても英文の編集ができ、専門用語も統一的に翻訳できるようになるといった効果が現れています。今後は、非財務情報の英文開示も視野に入れています。

松井証券株式会社の事例の詳細は、「松井証券、IR 情報を WOVN.io で英語化」を参照してください。
※2023年3月時点

英文開示義務化に対応し、海外投資家を呼び込もう

2025年4月より、東証プライム上場企業は、IR 情報の英文開示が義務となります。英文開示への対応は、グローバル化への第一歩であり、海外投資家の注目を集めて投資を呼び込む良い機会だといえます。
ただし、英文開示にあたっては、海外投資家に正しい情報を迅速に提供しなくてはなりません。翻訳を依頼する際は、スピード感と翻訳の質を両立できる委託先を選ぶことが大切です。

18,000サイト以上の企業導入実績がある「WOVN.io」なら、1つのタグを挿入するだけで Web サイトを多言語化できます。既存の Web サイトに後付けでき、多言語化に必要なシステム開発・多言語サイト運用にかかるリソースやコストを最小限に抑えてスピーディーな多言語対応を実現できます。
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