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外国人顧客の利便性向上に関する金融庁の取組み|金融庁  藤丸氏

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佐藤菜摘

 本記事のポイント 

  • 外国人顧客にとって銀行口座開設は、多くの書類が必要で時間がかかる。窓口での受け入れ体制の整備が必要

  • マネーロンダリングの対策のために必要な諸手続きの内容を、外国人に正しく認識してもらう必要がある

  • 外国人対応に慣れた支店に誘導する、書類作成をサポートするなど、自治体と連携して言語の問題を解決する施策を進めていきたい

    Wovn Technologies株式会社は、2024年5月29日に「金融サービスにおける外国人ユーザーの利便性向上」をテーマとしたセミナーを開催しました。当セッションでは、金融庁 監督局銀行第一課 課長補佐である藤丸 峻介氏を迎え、「外国人顧客の利便性向上に関する金融庁の取組み」と題して、外国人の口座開設におけるポイントや対応事例について、お話を伺いました。本レポートではその内容をご紹介します。


【登壇者】

藤丸 峻介
金融庁
監督局 銀行第一課 課長補佐

2017年に金融庁に入庁し、G20 や FSB(金融安定理事会)等の金融規制分野のとりまとめや店頭デリバティブ市場改革に関する国際的な議論の担当に従事、その後、国内暗号資産業者や資金移動業者等のモニタリング業務や内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室等への出向を経て、2023年より、監督局銀行第一課において外国人の口座開設等の金融サービス利用における利便性向上等を担当。東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻修了。

 

藤丸(金融庁):

金融庁の監督局銀行第一課の課長補佐を務める藤丸です。大手銀行やネット銀行の監督に加えて、外国人のお客様の利便性向上も担当しています。本セミナーでは、外国人顧客の利便性向上に関する金融庁の取り組みについて説明します。

まず取り組むべきは窓口の言語対応とマネーロンダリング対策

藤丸(金融庁):

金融庁は、外国人顧客の銀行口座開設に関する周知活動に取り組んでいます。また、金融機関に対して、外国人顧客対応の優良事例や留意事項を公表し、多言語対応の充実やマニュアル整備の要請を行っています。

このような活動の中でもまず第一に対応すべきは、窓口での言語対応とマネーロンダリング対策です。外国人のお客様に、マネーロンダリング対策に必要な諸手続きの内容を正しく理解してもらった上で、手続きに適切に対応してもらえるか。これらの対応が個人顧客に対してだけでなく、日本でビジネスを展開しようとしている法人顧客に対しても求められています。言語とマネーロンダリング審査の両面から問題解決を図る必要があります。

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自治体とのネットワークで外国人の口座開設をサポート

藤丸(金融庁):

金融庁は外国人顧客の口座開設支援ネットワークプロジェクトを推進しています。このプロジェクトは、自治体と銀行が連携し、外国人が日本でビジネスを始める際に必要となる銀行口座の開設を支援するものです。

【投影資料】金融庁共催セミナー (1)

 

日本でビジネスをしようとしている外国人の方は、コンサル会社や士業の方々に依頼して必要な諸手続きを進めていくことがある一方で、自治体の相談窓口に相談しにくる方も一定数いらっしゃいます。このような状況で、自治体と連携し銀行口座の開設手続きをサポートできないかと考えて立ち上がった企画です。

 

外国人が自宅近くの支店で口座開設の相談をしたものの、相談先の支店の規模的にも人的にも外国人対応が難しくお断りになる例がありました。何もツテがなければ、とりあえず自分が住んでる場所の近くの銀行に行ってみようと行動するのもおかしくありません。

 

今回のプロジェクトは、自治体の相談窓口が外国人顧客を適切な銀行に誘導し、手続きを円滑に進める役割を果たします。自治体に相談に来た人には、「この銀行口座を作りたいのであれば、ここの銀行のこの支店に行くと適切に対応してもらえます」と誘導しています。

 

 

ヒアリングからも口座開設の煩雑さが問題と判明

藤丸(金融庁):

内閣府が実施したヒアリングでは、個人・法人口座の開設に多くの書類提出が必要で時間がかかるとの意見が出されました。また、断られるケースもあり、断られた際にどういった理由で断られたのかフィードバックがないという問題も挙げられました。


【投影資料】金融庁共催セミナー

これらの対策として、銀行口座開設にはマネーロンダリング審査を含めた必要な手続きが存在することを、外国人顧客に理解してもらう必要があります。

 

また、銀行の窓口の受け入れ体制も整える必要があります。外国人の方は「気楽に作れると思ったが、門前払いされてしまった」と感じ、その体験でもやもやしてしまいます。窓口の方も、何もコミュニケーションができず、外国人の方が肩を落としながら帰る姿を見るのは、心苦しいと感じるでしょう。

 

先ほど紹介したネットワークも活用しながら、スムーズに外国人のお客様を受け入れることができたら、外国人の方々にとっても、金融機関の方々にとっても良い体験になるのではないかと考えています。

 

Q&A|福岡市の事例から見る口座開設支援の成功例と展開の可能性

司会:

藤丸さん、ありがとうございました。ここから Q&A タイムに移らせていただきます。「口座開設支援ネットワーク構築のお話がありましたが、先行事例や取り組みはございますか」という質問が来ております。

藤丸(金融庁):

福岡市が海外からのスタートアップ企業の支援に取り組み、銀行口座開設を支援している事例があります。グローバルスタートアップセンターという組織が市から請け負い、外国人の申請手続きや書類準備をサポートしています。一緒に書類の準備を行なったり、時には外国人の方に代わって銀行に問い合わせたり、そのような取り組みを実施しています。自治体と銀行の連携で言語の支障をなくし、手続きが円滑に進むようになった結果、外国人の口座開設が途中で止まる事例がほぼなくなりました。

福岡市のモデルをそのまま他の自治体に展開するのは難しいにせよ、銀行と自治体の連携強化を目指しています。自治体と連携し、銀行が対応できる支店に外国人顧客を誘導することで、言語の問題を解消したり、銀行と自治体が情報連携し、書類作成や手続きで困った外国人顧客に自治体が手を差し伸べたりといった取り組みができないかと考えています。

 

本セミナーの全編は下記アーカイブ動画よりご確認ください。

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https://mx.wovn.io/event/archive/20240529_financial_inclusion

 

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