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金融包摂とは?重要性や現状、具体的な取り組みを解説

佐藤菜摘

金融包摂(Financial Inclusion)とは、貧困や差別などによって金融サービスを受けにくくなっている人々を含め、すべての人が必要な金融サービスを利用できるようにする取り組みのことです。
金融包摂への取り組みは、世界的な広がりを見せています。金融包摂の重要性が高まっている背景には、何があるのでしょうか。また、金融包摂に取り組むには、具体的に何をすればいいのでしょうか。
本記事では、金融包摂の重要性や現状、具体的な取り組み内容について、わかりやすく解説します。
目次 |
金融包摂とはすべての人が金融サービスを利用できるようにする取り組み
金融包摂(Financial Inclusion)とは、すべての人が必要な金融サービスを利用できるようにする取り組みのことで、誰もが排除されず、社会に参加する機会を持つようにする社会包摂(Social Inclusion)から派生した考え方を指します。
世界には、貧困や差別などによって銀行口座を保有できない人々や、金融機関からの融資を受けられない人々がいます。金融包摂は、こういった金融排除(Financial Exclusion)の状況にある人々への支援を目的とする取り組みです。
金融包摂を実現するために必要なのは、すべての人が適切な金融の知識を身に付け、必要とする金融サービスにアクセスできる状態を作ることです。そのためには、デジタル技術によって金融包摂を推進するデジタル金融包摂が重要になると考えられています。そこで注目されているフィンテック(Fintech)は、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせて作られた造語であり、金融サービスとテクノロジーを結びつけたさまざまな革新的なサービスの総称です。フィンテックは金融包摂を実現するカギになるといわれています。
金融包摂が注目される背景にある動き
金融包摂は、新興国のみならず世界的に注目されている取り組みです。金融包摂が注目される背景には、主に以下のような動きがあるといわれています。
経済的不平等の解消に向けた取り組み
金融包摂が注目される背景には、経済的不平等の解消に向けた取り組みがあります。低所得者や社会的弱者は、金融サービスを受けるのが困難です。適切な金融サービスにアクセスできないことは、経済的不平等の要因となりかねません。金融包摂は、こうした不平等を解消し、誰もが平等に金融サービスを受けられるようにする取り組みとして注目されています。
デジタル技術の進歩
デジタル技術の進歩も、金融包摂が注目される背景にある大きな動きです。近年は、インターネットとスマートフォンが普及し、キャッシュレス決済やインターネットバンキング、スマートフォンからの送金、生体認証などが可能になっています。また、銀行や ATM などがない地域でも、これらのツールがあれば、金融サービスへのアクセスと利用が可能です。デジタル技術の進歩は、あらゆる人が金融サービスを利用できるようにし、金融インフラをあらゆる地域に行き渡らせる力があることから、注目度が高まっています。
SDGs(持続可能な開発目標)への取り組み
金融包摂が注目される背景には、2015年に国連サミットで採択された SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みがあります。SDGs の中には「貧困をなくそう」「働きがいも経済成長も」といった目標がありますが、これらを実現するには、金融包摂の推進が不可欠です。
「貧困をなくそう」を達成するには、財産を守り、資産を適切に管理する必要があります。「働きがいも経済成長も」の達成のためには、銀行取引や保険といった金融サービスへのアクセスを拡大しなくてはなりません。金融包摂は、持続可能な社会を作るために欠かせない取り組みといえるでしょう。
金融包摂の現状
続いては、金融包摂の現状について、地域ごとに解説します。世界、アジア太平洋地域、日本の現状は以下のとおりです。
世界の現状
金融包摂の現状を世界レベルで見ると、銀行口座保有率は2011年から2021年のあいだに世界平均で50.6%から76.2%へと大幅に上昇し、特に新興国においては、インドをはじめ多くの国で大きく改善しています。
また、モバイルマネー口座保有率は、2017年から2021年の5年間で大幅に上昇しました。アフリカなどの一部地域を除き、世界の各地域で銀行口座を上回る上昇率となっています。
この動きの背景には、コロナ禍によってデジタル決済が加速し、現金取引からオンライン取引への移行が進んだ動きがあると考えられます(※1)。
※1 株式会社日本総合研究所「デジタル金融包摂や金融ウェルビーイングを促進するASEAN諸国」(2024年)
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/rim/pdf/15249.pdf
アジア太平洋地域の現状
アジア太平洋地域では、金融包摂が進んでいる国がある一方で、進展の見られない国もあるのが現状です。2021年時点の銀行口座保有率を見ると、97.5 % のシンガポールを筆頭に、タイ(95.6 %)、マレーシア(88.4 %)といった国が高水準となっていますが、インドネシア、フィリピンは50 % 程度にとどまります。モバイルマネー口座保有率についても、タイが最多で60.0 % に達しているのに対し、インドネシアは9.3 % と、大きく差が開いています(※2)。
アジア太平洋地域の金融包摂に影響を及ぼす主な要素は、所得水準、金融システムの整備状況、金融リテラシー、ジェンダーギャップなどです。金融包摂の推進には、まだ多くの課題があるといえます。
※2 株式会社日本総合研究所「デジタル金融包摂や金融ウェルビーイングを促進するASEAN諸国」(2024年)
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/rim/pdf/15249.pdf
日本の現状
日本の現状に目を移すと、日本は成人の銀行口座保有率が高く、世界やアジアの各地域に比べて金融包摂の課題は少ないと考えられます。しかし、高齢者、障がい者、外国人など、金融サービスを十分に受けていない人々は少なくなく、適切な対応が必要です。
高齢者に対しては、生体認証や重要書類の電子化といった対応がとられており、障がい者にはインターネットバンキングの音声読み上げ機能などの導入、外国人には多言語翻訳サービスの導入といった対応がとられています。
金融包摂を実現するための具体的な取り組み
金融包摂を推進するには、すべての人が金融サービスにアクセスできるよう、具体的に取り組む必要があります。金融包摂を実現するための具体的な取り組みは、主に以下のとおりです。
テクノロジーの活用
金融包摂を実現する具体的な取り組みのひとつは、テクノロジーの活用です。誰もが金融サービスを受けられるようにするには、本人確認や審査を適正かつスピーディーに行う必要があります。データ分析、AI の活用などは、こうした取り組みを進める上で不可欠です。テクノロジーをベースにして、決済や送金の手段の多様化と共にセキュリティの強化も図ることで、金融サービスを拡充できるでしょう。
オンライン取引の拡充
オンライン取引の拡充も、金融包摂を実現する取り組みです。都市部から離れた地域に住んでいる人は、銀行などに行くことが難しく、金融サービスを利用することが困難です。しかし、インターネットバンキングをはじめとするオンライン取引の各種サービスは、こうした人々の金融サービス利用を容易にします。金融サービスへのアクセシビリティの向上は、金融包摂を推進する重要な手段です。
特定のコミュニティに焦点を当てたファイナンススキームの提供
金融包摂を実現するには、特定のコミュニティに焦点を当てたファイナンススキームの提供も必要です。例えば、経済的に余裕がなく、進学が困難な学生などに無利子で奨学金を融資する仕組みは、特殊な事情を抱えた人に対する公益信託として、金融包摂を推進します。
奨学金以外では、自然災害の被災者などに対するファイナンススキームの提供なども、金融包摂を実現する上で大切です。
フィンテック企業への経済支援
フィンテック企業への経済支援も、金融包摂を進める具体的な取り組みといえます。例えば、東京都スタートアップ・国際金融都市戦略室は、東京都をアジアにおける金融ハブとするべく、主に海外展開を図る フィンテック企業の支援を行っています。支援の内容は、海外の展示会への共同出展、海外展開を支援する補助金の提供です。
このような取り組みは、行政に限らずさまざまな企業でも行われており、経済でなく技術面での支援が行われている事例もあります。インバウンドの需要が増加している現在では、Web サイトの多言語化の支援なども、金融包摂を進める取り組みのひとつといえるでしょう。
金融包摂の推進には、Web サイトの多言語化が必要
金融包摂を実現するには、すべての人が金融サービスにアクセスできる環境を整えることが不可欠です。日本は他国に比べ、金融包摂の課題が少ないといわれていますが、高齢者や障がい者、外国人などが金融サービスにアクセスしにくい状況は、改善していく必要があります。
金融包摂を推進するには、テクノロジーを活用し、あらゆる人に金融サービスが行き渡る仕組みを作ることが大切です。特に日本では2023年に在留外国人が341万人超えと過去最高を更新しているため、金融機関の Web サイトなどを多言語化する必要があるでしょう。
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外国人対応を強化される際には、ぜひ「WOVN.io」の導入をぜひご検討ください。
※QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

佐藤菜摘
前職は、広告代理店にて大手CVSの担当営業として、販促物製作やブランディングプロジェクトに従事。2016年WOVN Technologies株式会社に入社し、広報業務を担当。2022年よりMarketingチーム。