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サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?メリットなどを解説

佐藤菜摘

原材料の調達から販売までの一連の流れを表す「サプライチェーン」は、国内外の拠点や協力会社をまたぐ連鎖的なモノの流れのことです。サプライチェーンを効率化・最適化することで、供給プロセスの無駄を省き、利益の最大化を図ることができます。
本記事では、サプライチェーンの最適化を図る手法である「サプライチェーンマネジメント(SCM)」について、導入メリットやデメリットに加え、導入プロセス、成功のためのポイントなどを解説します。
目次 |
サプライチェーンマネジメント(SCM)はモノの流れを管理する手法
サプライチェーンマネジメント(SCM:Supply Chain Management)とは、商品の原材料を調達し、製品化して消費者の手に届くまでのプロセスを指す「サプライチェーン」を管理する手法のことです。
サプライチェーンは、調達、製造、在庫管理、流通、販売、購買といった供給連鎖のことで、国内外の拠点をはじめ協力会社、物流会社、小売業者などがそれぞれのプロセスを担当しています。サプライチェーンマネジメントという考え方が普及する前は、サプライチェーンを構成する各企業や組織が個々に適正在庫を維持して利益を最大化したり、コスト削減を図ったりするのが一般的でした。
しかし、部分最適による効率化で生産量が増加しても、流通のリソースが不足していれば無駄な在庫が生まれるリスクがあり、全体最適にはつながりません。そこで、サプライチェーンにおける「モノ」「カネ」「情報」の流れを全体で共有し、全体最適を図るサプライチェーンマネジメントが求められるようになったのです。
サプライチェーンマネジメント(SCM)が注目されている理由
ここでは、現代のビジネス環境においてサプライチェーンマネジメントが注目されている理由を解説します。主な理由は以下の4つです。
グローバル化によって競争環境が変化しているため
グローバル化の進展により、サプライチェーンマネジメントは企業にとって必須の取り組みとなっています。適切なマネジメントにより、「リスク要因の早期把握とサプライヤーの分散」「在庫の適切な保有」などの対策が可能になります。
企業の生産拠点や販売拠点が世界中に広がったことで、サプライチェーンは以前よりも複雑化しました。その結果、自然災害や社会情勢の影響を受けて不安定になるリスクが高まっているのです。
さらに、文化や慣習が異なる海外の顧客をターゲットとする場合、対象地域の多様な顧客ニーズを把握し、それに応じた商品を供給する必要があります。サプライチェーンマネジメントを活用することで情報精度を高め、需要の変動に柔軟に対応できるため顧客満足度の低下を防げます。
多様化する消費者ニーズへの迅速な対応が必要なため
多様化する顧客ニーズに迅速に応えるためには、サプライチェーンの最適化が欠かせません。サプライチェーンマネジメントに取り組むことで、「今求められている商品」を安定的かつ迅速に供給し続ける体制を構築できるでしょう。
市場の成熟化や情報過多により、顧客のニーズはより個別化・多様化しています。さらに、インターネットの普及で消費者が好みに合った商品を探しやすくなったため、ニーズをキャッチし、商品化して流通に乗せるまでのスピードも重要です。
もし顧客ニーズを的確に捉えられず、商品化が遅れるような事態になれば、競合他社に大きく差をつけられる可能性があります。そのため、サプライチェーンマネジメントが注目されているのです。
デジタル技術が進展しているため
サプライチェーンマネジメントが注目されている理由として、デジタル技術の進展も挙げられます。さまざまなデジタル技術を活用することで、サプライチェーンマネジメントの効率化とリスク管理が飛躍的に向上し、リアルタイムでのデータ分析も可能になりました。
例えば、小売業界では「電子タグ(RFID)」や「Bluetooth タグ」などの技術が活用されています。RFID は、専用のリーダーライターを使用して必要な情報を一括で読み取り、在庫管理におけるピッキング作業を大幅に効率化するシステムです。一方、Bluetooth タグは専用機器を必要とせず、スマートフォンや店舗内の什器、家電などから情報を収集し、在庫状況から販売後の使用状況まで管理できます。
さらに、画像解析技術やその理解や解釈を支援する AI (人工知能)の導入が進み、収集したデータを即座に解析してサプライチェーンを最適化できるようになりました。これにより、リスク管理も強化されます。例えば、供給網の中断リスクや在庫不足、過剰在庫といった問題を事前に特定し、それに対応する計画を立てることが可能です。
こうした技術革新が、サプライチェーンマネジメントの普及を後押ししています。
SCM と DCM の連携による相乗効果が高まっているため
サプライチェーンマネジメントが注目されているのは、デマンドチェーンマネジメント(DCM)との連携による相乗効果が期待されているためです。
供給側から消費者側へと商品が移動するプロセスを管理するサプライチェーンマネジメントは、現代のビジネスにおいて非常に重要な役割を果たしています。しかし、消費者ニーズの多様化が進む現在、サプライチェーンマネジメントだけでは不十分なことも少なくありません。
そこで注目されているのがデマンドチェーンマネジメント(DCM:Demand Chain Management)です。デマンドチェーンマネジメントとは、消費者側のニーズを起点に供給側へさかのぼる形でプロセスを管理する手法です。
デマンドチェーンマネジメントでは、消費者の需要にもとづいて適切な商品の開発・供給を行い、サプライチェーンマネジメントと連携して全体の最適化を図ります。両者をバランスよく取り入れることで、企業は需要を正確かつ迅速に把握し、余剰生産や流通コストの増大を防ぎながら、競争優位性を確保できるでしょう。
サプライチェーンマネジメント(SCM)導入のメリット
ここからは、企業がサプライチェーンマネジメントを導入することで、どのようなメリットを得られるか見ていきます。主な導入メリットは次の4点です。
リードタイムを短縮できる
サプライチェーンマネジメントを導入すれば、各プロセスのリードタイム(所要時間)を短縮し、ニーズに合った商品を他社より早く市場に投入することが可能です。
需要をあらかじめ予測し、それを調達・製造・在庫管理などの計画に反映させることで、各プロセスの業務効率化が実現します。その結果、迅速な市場対応が可能となり、競争優位性の確保につながります。
在庫の最適化
サプライチェーンマネジメントを導入することで、商品の欠品や納品遅れによる機会損失と、余剰在庫によるコスト増大の両方を抑制可能です。
各プロセスの状況が可視化されると、必要な情報が正確に共有され、在庫状況を即座に把握できるようになります。その結果、常に最適な在庫を維持し、効率的な供給体制を整えることができます。
業務効率の向上
サプライチェーンマネジメントを導入することで、業務の効率化と従業員の負担軽減が実現するでしょう。
各工程に必要な人員数が明確になり、人的リソースの配分が最適化されるため、繁忙期の人手不足や閑散期の余剰人員といった無駄を回避できます。このように人材を効率的に活用することで、無駄のない業務運営が可能になります。
迅速な意思決定
サプライチェーンマネジメントを導入することで、需要の変動にスピーディーに対応し、迅速な意思決定を行うことが可能になるでしょう。
共通認識にもとづいた情報が各プロセスに正確に伝達されるため、やるべきことを速やかに導き出せます。その結果、判断に迷わず、意思決定にかかる時間を大幅に短縮し、需要の増加や減少に柔軟に対応できます。
サプライチェーンマネジメント(SCM)導入のデメリット
サプライチェーンマネジメントの導入を判断する際には、メリットだけでなくデメリットの把握も必要です。主なデメリットとして、次の4点を解説します。
初期導入コストがかかる
サプライチェーンマネジメントを導入する際に避けて通れない課題のひとつが、初期コストの高さです。
仕入れ・製造・在庫管理・流通など、サプライチェーン全体で情報を正確に共有するには、大規模で複雑な ITインフラの構築が必要です。これには、子会社やグループ企業、提携企業を含む多様な関係者との連携が求められます。そのため、システムの初期導入には一定のコストがかかる点は留意が必要です。
さらに、システムの改修や運用・保守などのランニングコストもかかるでしょう。グローバル企業において多言語対応が求められる場合には、システムやツールの選定によって追加コストが発生する可能性もあるため、事前に十分な検討が欠かせません。
従業員の負担が増える
サプライチェーンマネジメントの導入により、一時的に従業員の負担が増加する可能性もあります。
新しいシステムに適応するため、従来の方法を捨てて操作を習得する時間が必要です。その間、現場で対応する従業員への負担の増加が予想されます。忙しい時期に新システムを導入してサプライチェーンマネジメントを推進するとさらに負担が増すため、タイミングの配慮が重要です。
長い目で見れば、人的リソースの最適化によって従業員の負担軽減につながるため、導入スケジュールやサポート体制を十分に考慮し、計画的に実施することが求められます。
サプライチェーン全体に影響を及ぼす
サプライチェーンマネジメントは、仕入れや製造、在庫管理などの多様なプロセスを一元的に管理するため、いずれかのプロセスで問題が生じるとサプライチェーン全体に大きな影響を与える可能性があります。
不正確な情報共有や物流のトラブルが発生した場合、全体の運営に支障をきたし、影響が連鎖的に広がることが考えられるでしょう。また、サプライチェーンマネジメントへの依存度が高いほど、万一の事態が起きた際のリスクも増大するため、柔軟な対応策を準備しておくことが重要です。
セキュリティリスクが高まる
サプライチェーンマネジメントの導入により、関連企業にサイバー攻撃が起きた場合、自社やサプライチェーン全体に影響するリスクが高まります。
サプライチェーンは各プロセスが密接に連携する仕組みのため、特にセキュリティ対策が不十分な企業やベンダーの脆弱性を狙った攻撃が発生しやすくなります。こうしたリスクに対応するためには、サプライチェーン全体でセキュリティ対策を徹底することが重要です。
サプライチェーンマネジメント(SCM)の導入プロセス
サプライチェーンマネジメントの導入は、段階的に進めることで、導入効果を最大限に引き出せます。ここでは、具体的な4つのステップを紹介します。
ステップ1:導入目的の明確化
サプライチェーンマネジメントを導入する前に、解決したい課題と実現したい目標を明確化することが大事です。例えば、在庫の適正化やリードタイムの短縮、コスト削減など、導入によって得られる成果を具体的に洗い出しましょう。
また、本当にサプライチェーンマネジメントがそれらの課題解決に最適な解決策であるかどうか、他の選択肢と比較しながら十分に検討することも重要です。
ステップ2:責任者の選定
次に、サプライチェーンマネジメントの導入を主導するプロジェクトメンバーを選び、責任者を決定します。さらに、プロジェクト内で導入の目的やゴールを共有し、各メンバーに具体的な役割を割り振ります。
ステップ3:適切なシステムの選定
責任者とプロジェクトメンバーが決まったら、次は導入目的に合った適切なシステムを選定します。
サプライチェーン全体を一元管理し、分析やシミュレーションを行う SCM システム、需要予測と分析レポートを通じてリードタイムの削減を支援するサービスなど、自社の課題および目標に最適なシステムを選びましょう。
ステップ4:導入後の効果測定
適切なシステムを選定して導入したら、その成果を確認するために継続的な効果測定を行います。
サプライチェーンマネジメント推進のためのシステムやサービスが課題解決に貢献しているか、また、正しく運用されているかを判断するには、KPI を設定して導入前後の変化を測定することが重要です。
効果測定の結果をもとに PDCA サイクルを回し、改善を重ねてさらに効果を高めていきましょう。継続的な見直しが成功への近道です。
サプライチェーンマネジメント(SCM)を成功させるポイント
サプライチェーンマネジメントを成功させるには、関係者の間で適切に情報を共有することが重要です。具体的には、以下3点が重要なポイントになります。
目標を設定して全社で共有する
全社で共有できる共通目標を設定すると、サプライチェーンマネジメントの計画を着実に進められます。
導入目的や期待する成果を関係各所に周知し、具体的かつ定量的な目標を掲げましょう。明確な共通目標があれば、各部門や企業が自分たちの役割に集中でき、計画がぶれることなく推進されます。
データを可視化して意思決定に活かす
各プロセスで正確かつ迅速な意思決定を行うことが、サプライチェーンマネジメントの成功を左右する重要な要素です。
サプライチェーン全体のデータをリアルタイムに可視化し、関係者全員で共有する仕組みを整えることで、迅速かつ適切な判断が可能になります。これにより、効率的な運営とリスクへの即時対応が実現できるでしょう。
必要に応じて SCM システムを多言語化する
SCM システムを多言語化すれば、グローバルな連携が円滑になり、運用効率も向上します。
外国人スタッフが各プロセスを担当する場合、システムを自国の言語で利用できる環境を整えることが重要です。多言語化によって、誤解によるミスや二重確認の手間を減らし、俗人化しないサプライチェーンマネジメントが可能になります。さらに、全員が同じ情報を同レベルで共有すると、関係者間の連携がスムーズになり、より強固なグローバル対応が実現します。
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佐藤菜摘
前職は、広告代理店にて大手CVSの担当営業として、販促物製作やブランディングプロジェクトに従事。2016年WOVN Technologies株式会社に入社し、広報業務を担当。2022年よりMarketingチーム。