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国際物流とは?効率的な体制構築の必要性や課題について解説

佐藤菜摘

ビジネスのグローバル化が進み、多くの企業が国境を越えてモノ(製品、設備など)の流れを活発化させています。このような、国と国との間で発生するモノの流れを「国際物流」といい、安全かつ効率的な国際物流を実現するにはさまざまな課題をクリアする必要があります。
そこで、本記事では国際物流の効率的な体制構築の必要性、国際物流の課題、国際物流を効率化のためのポイントなどを解説します。
グローバル企業が物流コストを削減し、円滑な取引を進めるには、物流プロセスをどのように効率化すればいいのでしょうか。特に、以下の3つが重要なポイントです。
目次 |
国際物流は国境を越えてモノを輸送・管理する一連のプロセス
国際物流とは、異なる国や地域との取引で発生するモノの輸送・管理を行う一連のプロセスです。「海外物流」や「グローバル物流」と呼ばれることもあります。
国内物流ではトラックや電車が主な輸送手段ですが、日本の国際物流では、飛行機や船舶を使った輸送が中心となります。そのため、国内物流よりも輸送コストは高くなるのが一般的です。
また、国際物流には特有の作業や手続きが必要です。例えば、輸出に適した梱包や通関手続きが挙げられます。国際輸送は貨物が届くまでの時間が国内物流よりも長くなるため、製品に加わるダメージを考慮した包装が求められます。航空輸送では軽量な梱包、海上輸送では頑丈な梱包が必要です。
さらに、国際物流を行う際には、貨物の品目や数量、金額、輸出入先を通関で申告し、許可を得る必要があります。許可が下りるまでは、港や空港近くの保税地域にある保税倉庫で貨物を保管することもあります。
初めて国際物流に取り組む際には、国内輸送にはないルールや手続きについてしっかり把握することが重要になるでしょう。
国際物流の機能
国際物流は、大きく以下の6つの機能から構成されています。それぞれの機能が確実に役目を果たすことで、効率的で質の高い貿易活動が実現できます。
1.輸送
輸送は、売り手から買い手に向けてモノを届ける作業です。海上輸送、航空輸送、国際複合輸送(海上と航空の併用)の3つから適切な輸送手段を選んで発送します。輸送手段は、時間とコストのバランスを考えて、効率的にモノを届けられる方法を選択することが大切です。
2.保管
通関での輸出入の手続きが済んでいない貨物は、保税地域の中にある保税倉庫で保管します。輸送料や保管料に税金はかかりません。
保税倉庫を使うと、輸入した外国貨物の他、日本から輸出したい貨物の「内容の点検」「仕分け」「その他の手入れ」が行えるため、スムーズな関税手続きにつながります。
3.荷役
荷役とは、貨物の積み下ろしや入出庫、仕分け、ピッキングなどの作業の総称です。国際物流では、船内や沿岸での荷さばきも含まれます。
いずれも、国際物流における重要な役割を果たしており、荷役を効率化できると輸送プロセスのタイムロスを大幅に削減できます。
4.流通加工
流通加工は、流通過程で行われる、製品に付加価値をつけるための加工のことです。国際物流においては、検品、検針、ラベル貼付、梱包などの作業が該当します。こうした加工を流通過程で施すことにより、顧客のニーズにあった製品を届けられます。
5.包装・梱包
国際物流における包装・梱包は、製品の特性と輸送手段、輸送期間などを踏まえて適切な方法を選ぶ必要があります。コンテナ、パレット、段ボール箱などを活用すると、製品の品質を維持しながらコストを抑えることが可能です。
6.情報管理
情報管理は、輸送ルートや業務プロセスに関するデータを収集・整理し、可視化することで、物流の効率化とリスク回避を図るために重要です。
国際物流では、輸送ルートが長く煩雑なプロセスを伴うため、リードタイムが長期化し、欠品による機会損失や過剰在庫を招くリスクがあります。さらに、多くの関係者や関連企業が関与することで業務プロセスが不透明になり、物流コストの正確な把握が難しくなるケースも珍しくありません。
こうした課題に対応するため、情報管理を徹底し、入荷、ピッキング、出荷手配などの工程を一元管理する物流管理システムを導入すると効果的です。これにより、各プロセスの状況やコストをリアルタイムでトラッキングできるようになり、売り手と買い手の双方が安心して取引を進められる環境が整います。
国際物流の効率的な体制構築が必要な理由
国際物流は、ビジネスのグローバル化の影響を受けて、日々進化を遂げています。グローバル企業においては、国際物流の効率的な体制構築は不可欠といえるでしょう。主な理由は次の2点です。
競争力の維持・向上のため
グローバル市場で競争力を維持・向上するには、迅速で安全な国際物流の体制構築が不可欠です。
例えば、顧客が求める製品を必要なタイミングで供給できる柔軟性があれば、地域や国を問わず市場での信頼を獲得できます。また、輸送コストの最適化やリードタイムの短縮により、競合他社との差別化を図ることも可能です。激化する国際競争のなかで、物流のスピードと効率性を追求することが、国内外での優位性の確立に直結します。
コスト削減とリスク分散のため
国際物流を効率化すると、コスト削減とリスク分散を同時に実現できます。
例えば、複数の地域や国に生産や調達の拠点を分散させると、人件費や輸送コストを最適化できます。さらに、一部の拠点で自然災害や社会的混乱など予見不能な事態が発生した場合でも、他の拠点を活用することで事業の継続が可能です。
このような仕組みは、グローバル市場における競争力を高めるだけでなく、供給の安定性を確保し、突発的なトラブルへの対応力を強化します。
国際物流の課題
国際物流は、企業の成長を助ける半面、多くの課題が存在しています。主な課題は以下のとおりです。
コストの増加と分析の難しさ
国際物流ではコストの増加が顕著であり、さらに分析が難しいという課題があります。
プロセスの煩雑さに加え、取引時の為替レートの影響で経費の内訳が変動しやすく、各プロセスのコストを正確に把握するのに時間がかかります。さらに、コンテナ不足や燃料費の高騰といった外的要因により、コストの高騰が続いている現状では、適切なコスト分析が一層困難になっているのです。
現状のコストと理想的なコストを正確に算出することが難しいため、効率的な運用を実現する妨げとなっているのが大きな課題です。改善のためには、データの可視化や柔軟な対応策が求められます。
通関手続きの複雑さ
国際取引の課題は、各国の通関手続きが複雑であるため、輸出入のスピードが落ちることも挙げられます。
通関では、貨物の品目や数量などを正確に申告し、許可を得る必要がありますが、その手続きや規制は国ごとに異なります。この違いが予想外の遅延を招き、売上や事業計画に影響を及ぼすケースも珍しくありません。
特に新興国では、法令の整備不足や規制の恣意的な運用が問題となり、手続きに時間と費用が余計にかかるケースがあります。こうした課題への対応策として、事前のリサーチや専門家との連携が重要です。
言語や文化の違いによるトラブル
国際物流では、多国籍な関係者間での言語や文化の違いが誤解やトラブルを引き起こすリスクもあります。
言語の違いによって情報のニュアンスが伝わらないことや、文化の違いで倉庫管理や課金形態が異なる場合があるため、正確な情報共有が難しくなります。特に、重要な情報をタイムリーに伝達し、正確に理解することが求められる場面で誤解が発生すると、信頼関係や業務進行に悪影響を及ぼす可能性があるでしょう。
こうしたトラブルを未然に防ぐためには、拠点や取引先との間で使う情報伝達ツールの多言語化を進め、円滑な意思疎通を実現する工夫が必要です。
国際物流を効率化するポイント

デジタル技術を活用する
デジタル技術の活用は、国際物流の効率化に大きく貢献します。
例えば、AI (人工知能)による需要予測や、IoT を活用したリアルタイム追跡、在庫管理の自動化など、最新技術を取り入れることで、全工程の現状をタイムリーに把握することが可能です。RFID (電子タグ)や Bluetooth タグも IoT 技術の一環として使用され、貨物の位置情報のトラッキングなどを効率化し、物流現場での作業ミスを防ぎます。
これらの技術により、関係者全員がスムーズに情報を共有し、迅速な意思決定が可能となり、物流全体の効率化を推進できるでしょう。
信頼できるパートナーを選ぶ
国際物流を成功させるためには、信頼できる物流業者や通関業者を選ぶことが重要です。
経験豊富で実績のあるパートナーを選ぶと、業務効率化やリスク管理がスムーズに進みます。特に、各国の規制や手続きに精通したパートナーがいれば、複雑な通関や物流のトラブルを回避し、安心して事業を進められます。
物流現場で使用しているアプリを多言語化する
物流現場で使用しているアプリを多言語化することで、多国籍な従業員が円滑にアプリを利用できる環境が整うため業務効率化が実現します。
倉庫や配送現場では、従来ピッキングリストなどを紙の書類で運用していましたが、近年はデジタル化が進んでいます。タブレットやスマートフォンで利用可能なアプリを多言語対応にすることで、外国人従業員も自国の言語で情報を確認できるようになり、業務の正確性やスピードが向上します。
さらに、既存アプリに多言語機能を簡単に追加できるツールを活用すれば、新たな開発リソースを最小限に抑えつつ、迅速な市場展開が可能です。多言語化の柔軟性と拡張性は、グローバルな現場運営をスムーズに進めるための重要なポイントといえるでしょう。
国際物流における管理アプリの多言語化には「WOVN.app」の導入が最適
国際物流は、海外拠点の活用による安定的な調達や、海外顧客の需要に応じた迅速な供給を実現する重要な手段です。競合他社に先駆けて効率的な国際物流体制を構築すれば、大きなビジネスアドバンテージを得ることができます。
しかし、複雑なプロセスや異なる言語・文化が絡むため、効率的な運用にはデジタル技術の活用が不可欠です。特に、現場で使用するアプリの多言語化は、業務効率化と国際的な連携をスムーズに進めるカギとなります。
「WOVN.app」は、既存アプリに SDK をインストールするだけで、簡単に多言語化を実現できるソリューションです。アプリの内容を複数言語に対応させることで、外国人従業員や海外拠点でも自国の言語で情報を取得でき、現場での意思決定が迅速化します。
世界規模でのビジネス展開を支える最適なソリューションをお探しの方は、ぜひ「WOVN.app」の導入をご検討ください。

佐藤菜摘
前職は、広告代理店にて大手CVSの担当営業として、販促物製作やブランディングプロジェクトに従事。2016年WOVN Technologies株式会社に入社し、広報業務を担当。2022年よりMarketingチーム。