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DEI とは?重視される理由や推進のステップを解説

佐藤菜摘

従来の企業経営では、従業員の多様性を受け入れ、ビジネスの成長につなげる D&I が取り組まれていました。しかし近年では、そこに公平性を意味する「Equity」を加えた DEI が重視されています。
DEI が重視されることにはどのような理由があり、DEI を推進するにはどのようなステップを踏むべきなのでしょうか。
本記事では、DEI が重視される理由や DEI に取り組むメリット、推進のステップやポイントについて解説します。
目次 |
DEI とは D&I に Equity(公平性)を加えた考え方のこと
DEI(Diversity, Equity & Inclusion:ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)は、Diversity(ダイバーシティ・多様性)、Equity(エクイティ・公平性)、Inclusion(インクルージョン・包括性)の頭文字を取った言葉です。
従来は、年齢、性別、国籍、人種、価値観、宗教など、さまざまな属性を持った人材を受け入れ、それぞれの個性と能力を活かして企業成長の力とする D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)が推進されていました。DEI は、そこに Equity を加えた考え方を指します。多様性を受け入れ、個性と能力を活かすだけでなく、それぞれに合った機会を提供し、活躍できる公平な環境を作ることを目指すものです。
Equity と Equality の意味の違い
DEI の Equity とよく比較される言葉に Equality があります。Equality は平等を意味し、公平を意味する Equity に近いように思えますが、DEI の文脈で使われることはありません。
Equality では、すべての人に同じように機会や情報を提供します。しかしそれだけだと、障がいのある人は健常者に比べて職場で活躍するのが難しくなります。これに対し、Equity は、個人の違いを視野に入れて、目的を達成するために適切なものをそれぞれ与えることを指し、誰もが活躍できる環境を整備することを重視します。
DEI が重視されるようになった理由
DEI が重視されるようになったことには、いくつかの理由があります。主な理由は以下のとおりです。
働き方が多様化しているから
DEI が重視されるようになった理由のひとつは、働き方が多様化していることです。コロナ禍をきっかけにリモートワークが一般化した他、介護・育児と両立する人の増加に伴う時短勤務の導入、男性の育児休暇の推奨といった動きがあり、働き方の選択肢は、従来に比べて増加しました。また、転職や独立が珍しくなくなり、副業を許可する企業も増えています。
こうした中で優秀な人材を確保するには、働き方や価値観の多様化を受け入れ、活躍できる環境を作る DEI への取り組みが欠かせません。
ビジネスのグローバル化と競争が加速しているから
ビジネスのグローバル化と競争が加速していることも、DEI が重視されるようになった理由です。近年は、事業の環境がめまぐるしく変化しており、未来を見通すことが難しくなっています。ビジネスのグローバル化と競争が加速し、旧来の慣習や既成概念にとらわれないアイディアやコミュニケーション力が求められています。
こうした状況では、バックボーンの異なる多様な人材が力を合わせていくことが大切です。DEI は、先の見えないグローバル競争の時代において必要な取り組みであるといえるでしょう。
多様な年齢・ライフスタイルの人に活躍してもらいたいから
多様な年齢・ライフスタイルの人に活躍してもらいたいことも、DEI の重要性が高まっている理由です。日本は超高齢社会に突入し、生産人口の減少が続いています。慢性的な人手不足が予想される中で人材を確保するには、育児のために思うように働けていなかった女性、親の介護で仕事から離れざるを得なかった人、現役を退いた高齢者なども活躍できる環境を作ることが大切です。
ESG 投資が広がっているから
DEI は、ESG 投資が広がる中で重要性が高まっています。ESG とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス:企業統治)の頭文字を取った言葉で、この3つの視点から企業の価値を評価して投資する手法を ESG 投資といいます。
ESG の S(社会)は、人権の尊重、労働環境の整備、地域社会との関係づくりなど、企業が社会の中で果たしている責任を評価するもので、DEI の取り組みに関連しています。多様な人材の違いを受け入れ、それぞれが活躍できる公平な環境を作る DEI は、投資家からの評価を高める上で重要な取り組みです。
DEI に取り組むメリット
DEI に取り組むことで、企業はさまざまなメリットを得ることができます。主なメリットは以下のとおりです。
多様な人材の確保と定着を期待できる
多様な人材の確保と定着を期待できることは、DEI に取り組む大きなメリットです。DEI に取り組むことにより、年齢、性別、国籍などのさまざまな人材の活躍の場が作られます。このような職場環境があると、従来の環境では活躍することが難しかった人材も活躍しやすくなります。これにより、多様な属性の人材を確保し、定着してもらえるようになるでしょう。
離職率を下げることができる
DEI に取り組むと、離職率を下げることもできます。前述のとおり、DEI は、多様な人材が活躍できる、公平性のある環境づくりを目指す取り組みです。従業員が思うように活躍できないと離職する原因のひとつとなってしまいますが、これが解消されることにより、離職してしまう従業員を減らせます。
アイディアが生まれやすくなる
アイディアが生まれやすくなることも、DEI に取り組むメリットです。従来の採用活動は、既存の人材と考え方や価値観が近い人を多く採用する傾向がありましたが、多様な人材が公平に活躍できる環境をつくる DEI では、バックボーンの異なる人材が集まりやすくなります。人材が多様化すると、これまでにない、さまざまなアイディアが生まれるでしょう。困難を解決したり、新たなビジネスを生み出したりする画期的なアイディアが生まれるかもしれません。
企業価値が高まる
DEI に取り組むと、企業価値が高まります。前述のとおり、DEI は企業が社会的な責任を果たす上で重要な取り組みです。DEI に力を注ぐ企業は、社会的な責任をきちんと果たしていると外部から認知され、評価が高まりやすくなります。企業価値が向上するだけでなく、ESG 投資の対象にもなりやすくなるでしょう。
DEI 推進の主なステップ
DEI を推進するには、いくつかのステップを踏む必要があります。主なステップは以下のとおりです。
1. 目的と方針を策定する
DEI を推進する際の最初のステップは、DEI に取り組む目的と方針を策定することです。DEI は継続的な取り組みであるため、最初に目的と方針を定めておかないと、やがて形骸化してしまうおそれがあります。
DEI の目的と方針は、企業理念や事業の長期的な戦略などにもとづき、企業の成長につながる内容にすることが大切です。
2. 制度を整備する
DEI の目的と方針を策定したら、次は DEI に関する制度を整備します。目的と方針を定めても、実際に活動するための具体的な制度がなくては、活動を評価できず、目的を達成することもできません。例えば、目的の1つに「女性管理職の比率を3倍にする」という項目があった場合、女性が無理なく管理職を務められる制度や評価の仕組みがなくては、目標の達成は困難です。
DEI の目的が現実離れした取り組みにならないよう、きちんと各種制度を整備する必要があります。
3. 社内に周知する
DEI に関わる制度を整備したら、その内容を社内に周知します。DEI は、実際に多様な人材が働き、活躍する職場で取り組まれる活動です。職場で日々働いている従業員が DEI を理解し、意識していないと、多様な人材が活躍できる公平性が損なわれかねません。企業のトップや、マネージャー、職場のリーダーを介して DEI の目的と方針、制度をきちんと職場に浸透させ、従業員全員が一体となって取り組んでいくことが大切です。
4. PDCA を回す
DEI の活動を開始したら、PDCA を回し、改善しながら進めていくことが大切です。PDCA を回すには、策定した制度や評価の仕組みにもとづき、活動の成果を正しく確認する必要があります。この他、従業員アンケートを実施して DEI の進捗を確認するのもおすすめです。このようにして成果を測定し、課題が見つかったら改善するなどして、DEI を推進していきましょう。
DEI に取り組む際のポイント
DEI に取り組む際は、いくつかの押さえておきたいポイントがあります。主なポイントは以下のとおりです。
組織の風通しを良くする
DEI に取り組む際は、組織の風通しを良くすることが大切です。風通しの良い組織とは、同僚や上司に意見が言いやすいだけでなく、意見をきちんと受け止めてくれる組織です。こうした環境があってこそ、価値観やバックボーンの異なるさまざまな人材が活躍しやすくなります。従業員が心から安心し、自分らしく働ける環境を作ることが、DEI 推進の力となります。
従業員の教育に力を注ぐ
従業員の教育に力を注ぐことも、DEI に取り組む際の重要なポイントです。前述のとおり、職場の従業員の DEI への理解が不十分だと、DEI を推進するのは困難です。また、DEI について周知しても、理解が足りなかったり、意欲的になれなかったりする従業員もいるかもしれません。社内研修や社内報などを通じて、DEI について従業員に知ってもらう機会を設けましょう。
DEI の取り組みを積極的に発信する
DEI の取り組みは、積極的に社外に発信することが大切です。DEI への取り組みは、ESG 投資における評価の対象です。外部の投資家などに情報発信して知ってもらうことにより、DEI の取り組みが認知され、投資も集まりやすくなります。海外の投資家にも認知してもらえるよう、情報発信にあたっては Web サイトを多言語化するのがおすすめです。
外国人など多様な従業員が使えるシステム・インフラを構築する
外国人など多様な従業員が使えるシステム・インフラを構築することも、DEI に取り組む上で欠かせません。さまざまな国籍の従業員が活躍するには、風通しの良さだけでなく、システム・インフラが問題なく使えることが必要です。勤怠管理、労務管理の他、ワークフローなど業務に関わる情報も多言語化し、外国人従業員の利便性を向上し、必要な情報にアクセスしやすい環境を作るといいでしょう。
DEI の次のステップとして注目される DEIB
日本で DEI への関心が高まる中、ヨーロッパでは DEIB が次のステップとして注目されています。DEIB とは、Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)、Belonging(帰属意識)の頭文字を取った言葉で、組織に属する人が「自分は組織の一員として尊重されている」と感じられる状態のことです。
DEIB は、価値観の多様化などを背景に従業員の組織への帰属意識が薄れつつある中、従業員のエンゲージメントを高めて離職を防ぐ施策として重視されています。今後、日本でも重要性を増してくるかもしれません。
企業と従業員の成長のために、DEI に注力しよう
グローバル競争が加速する中、従業員の働き方やライフスタイルの変化に対応していくためには、DEI に取り組むことが大切です。
そして、DEI を成果につなげるには、各種制度を整えるだけでなく、従業員たちが意見を言える風通しの良い環境を作り、DEI への理解を深める教育にも力を注ぐ必要があります。
DEI への取り組みは外部の評価を高めるきっかけになるため、Web サイトの多言語化などをした上で、活動を積極的に発信していくことをおすすめします。また、外国人従業員が安心して働けるよう、従業員向けの経営メッセージを発信する Web 社内報や、勤怠管理といった従業員インフラもしっかりと多言語化することが大切です。企業と従業員の成長のために、DEI に注力しましょう。
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佐藤菜摘
前職は、広告代理店にて大手CVSの担当営業として、販促物製作やブランディングプロジェクトに従事。2016年WOVN Technologies株式会社に入社し、広報業務を担当。2022年よりMarketingチーム。