ファクトリーオートメーション（FA）とは？実現へのポイントを解説

人材不足や人件費上昇、生産性向上、品質の安定化など、製造業が抱える課題は多岐にわたります。これらの課題を解決する手段として注目を集めているのが、「ファクトリーオートメーション（FA）」です。
では、具体的にファクトリーオートメーションはどのような取り組みを指すのでしょうか。また、ファクトリーオートメーションを実現するためには、どのような点を意識すればいいのでしょうか。
本記事では、ファクトリーオートメーションが注目されている背景、ファクトリーオートメーションを導入するメリット・デメリット、導入時のポイントについて解説します。

ファクトリーオートメーション（FA）とは工場などの生産工程の自動化を図ること

ファクトリーオートメーションとは、工場などでの生産工程を自動化することです。英語で「Factory Automation」と表記することから、頭文字を取って「FA」とも呼ばれます。生産工程において、従来は人の手で行っていた作業を、ロボットやセンサー、IT システムなどを用いて自動化する取り組みやシステムを総称して、ファクトリーオートメーションといいます。

ファクトリーオートメーションの対象は、加工、組み立て、検品、マテリアルハンドリング、管理といった分野が中心です。例えば、ロボットによる部品の組み立てやセンサーでの不良品検査、搬送機を用いた資材の運搬など、生産工程のさまざまな場面でファクトリーオートメーションによる自動化が図られています。
ファクトリーオートメーションの主な目的としては、省人化や生産性向上、品質の安定化の他、作業にあたる従業員の安全性向上も挙げられます。

ファクトリーオートメーション（FA）の歴史

生産現場にファクトリーオートメーションが導入されたのは、1950年代頃だといわれています。金属加工や鋳造の工程を連続化して大量生産を可能にし、日本の高度経済成長を支えました。その後、1960年代になると IC（集積回路）が登場し、ファクトリーオートメーションが急速に発展します。IC が組み込まれた機械など、産業用ロボットの開発が加速したのもこの頃です。

さらに、1970年以降は計器類のデジタル化が進み、加工に用いる工作機械がコンピューターと接続されて稼働するようになります。センサー類も発達し、センサーからのデータによる高度な制御が可能になり、生産ライン全体の効率化と品質向上が図られました。

1990年代に入り分散型制御システムが高度化すると、産業用コンピューターは、複数の処理を並行して行うマルチタスクに対応できるようになりました。同時に重視されるようになったのが情報技術、つまり IT です。
IT の進歩が、製造業に新たな革命を起こす「インダストリー4.0」という概念につながります。インダストリー4.0とは、ドイツ政府が2011年に発表した産業政策で、日本では「第4次産業革命」ともいわれます。その目的は、IT 技術を活用して製造業のデジタル化と自動化を推進し、製造プロセスの最適化だけではなく、既存のバリューチェーンの変革や新たなビジネスモデルの構築を実現することです。

日本でも2017年に経済産業省から、日本版インダストリー4.0とも呼ばれる「Connected Industries」が提唱されました。「Connected Industries」とは、「データを介して、機械、技術、人などさまざまなものがつながることで、新たな付加価値創出と社会課題の解決を目指す産業のあり方」のことです。

これらの影響もあり、制御機器やロボットなどのハード面と、管理・制御システムなどソフト面の双方で、さらなる技術発展が続いています。

ファクトリーオートメーション（FA）とスマートファクトリーとの違い

ファクトリーオートメーションと混同されやすいものに「スマートファクトリー」があります。スマートファクトリーとは、IoT や AI、ビッグデータ解析などの技術を活用し、デジタルデータをもとに業務管理を最適化・自動化する工場のことです。
スマートファクトリーでは生産設備や基幹システム、製造管理システムなどがネットワークによって連結され、工場全体の最適化・自動化を目指します。一方、ファクトリーオートメーションは、ロボットやセンサー、IT システムなどを用いて工場の生産工程を自動化することです。
ファクトリーオートメーションがあくまで各生産工程の自動化を指しているのに対して、スマートファクトリーは工場全体の効率的な仕組みづくりを指すという違いがあります。ファクトリーオートメーションを進めることが、スマートファクトリーの実現につながるといえるでしょう。

スマートファクトリーについては、以下の記事をご覧ください。
スマートファクトリーとは？目的やメリット、課題について解説

ファクトリーオートメーション（FA）が注目されている背景

製造業界では、ファクトリーオートメーションの必要性が高まっています。ファクトリーオートメーションが注目を集める背景には、次のような理由があります。

グローバル市場における競争激化

ビジネス環境のグローバル化が進む中、製造業界でも競争が激化しています。企業は、国内のみならず、低コストで製造できる海外工場との競争を生き抜いていかなければなりません。日本のものづくりは品質の高さを評価されていますが、世界からは、高品質かつ低価格な製品が求められるようになっています。
従来は、コスト削減のため、海外に生産拠点を移す製造業が多く見られました。しかし近年では、海外での人件費も上昇し、これまで海外生産の大きなメリットだったコストダウンが期待できなくなりつつあります。製造業企業は、高品質な製品を安価に製造するために、生産工程の効率化を迫られるようになりました。
このような課題に対処する手段として注目されているのが、ファクトリーオートメーションです。ファクトリーオートメーションによって、人の働きを機械に置き換え、生産ラインを自動化すれば、製造コストを抑えつつ品質の確保が図れます。

労働人口の減少

ファクトリーオートメーションが注目される背景には、製造業で深刻化している人手不足の問題もあります。少子高齢化に伴い、国内の労働人口は今後も減少していくと予測されており、特に製造業では人手不足が顕著で、生産性の低下やコストの増加が懸念されています。

このような中、生産効率を維持するための解決策として期待されているのが、ファクトリーオートメーションによる省人化です。ファクトリーオートメーションによって作業の自動化が進めば、生産ラインに多くの人手を割かなくて済む上、限られた人材をより高度な業務に集中させることも可能になります。

ファクトリーオートメーション（FA）導入のメリット

製造業でファクトリーオートメーションを導入することで、さまざまなメリットが得られます。主なメリットは以下のとおりです。

人件費削減

ファクトリーオートメーション導入による大きなメリットは、人件費を削減できることです。製造業の各工程を人の手で行うと、かなりの数の人材が必要になり、多くの人件費が発生します。
しかし、ファクトリーオートメーションによって生産工程が自動化されれば、それまで人の手で行っていた作業を機械に任せることができます。同じ作業を少人数でこなせるようになり、人件費の大幅な削減が可能になるでしょう。さらに、ファクトリーオートメーションにより作業平準化が進むため、従業員のシフト管理や新人教育にかかるコストや手間も軽減されます。
製造業にかかるコストの中でも、大きな割合を占めるのが、人件費です。ファクトリーオートメーションによって人件費を削減し、それが製品の価格に反映されれば、企業の競争力強化にもつながります。

品質の維持・向上

ファクトリーオートメーションは、品質の維持や向上にも大きな効果を発揮します。前述したように、製造業界では人手不足が深刻な問題となっています。慢性的な人手不足が続く状態では、スキルの継承や集中力の維持が難しくなり、品質にバラつきが生じかねません。また、人の手による作業では、どれほど気をつけていてもヒューマンエラーのリスクがあります。安定した品質を確保するためには、人手だけに頼らない生産システムの構築が不可欠です。

ファクトリーオートメーションによって生産システムの自動化が進めば、作業を精密にコントロールしてヒューマンエラーを排除し、高品質な製品を安定して生産できるようになります。
例えば、温度や圧力の調整といった人の手では難しい微細な設定も、センサーなどを用いれば自動化が可能です。不良品などのロスも減少するため、コスト削減にもつながるでしょう。品質の安定化により、企業のブランドイメージや顧客満足度の向上も期待できます。

従業員の安全確保

ファクトリーオートメーションは、工場で作業にあたる従業員の安全確保にも役立ちます。工場には、重量物の運搬や騒音、高温、高圧の設備の操作など、従業員の負担や危険を伴う作業が存在します。このような現場で最大の課題となるが、従業員の安全確保です。
ファクトリーオートメーションによって作業の担い手を人から機械に置き換えれば、従業員が危険な環境に身を置く必要がありません。例えば、高温の溶接作業や危険な化学物質を取り扱う作業などをロボットに代替することで、従業員の安全を守り、事故のリスクを軽減できます。労働災害を防止し、働きやすい職場環境を構築することで、人材定着率の向上も期待できるでしょう。

生産性の向上

ファクトリーオートメーションは、生産性の向上を目指す上でも、大きなメリットがあります。人が作業する場合、1日の労働時間は原則8時間ですし、スピードにも限界があります。シフト制であれば、勤務交代の際には作業を中断せざるをえません。しかし、ファクトリーオートメーションによってシステムやロボットを活用すれば、長時間の連続稼働が可能になり、作業速度が飛躍的に向上します。
さらに、自動化されたシステムなら、一定の品質を保つことも可能です。不良率を低減し、作業効率が大幅に改善され、単位時間あたりの生産量が増加するでしょう。

ただし、すべての作業にシステムやロボットの活用が向いているとは限りません。例えば、人による柔軟な対応が求められる工程や複雑な作業には、自動化が向かない場合もあります。どの工程を自動化すれば生産性の向上につながるか、慎重な検討が大切です。

ファクトリーオートメーション（FA）導入のデメリット

ファクトリーオートメーションにはメリットが多い一方で、デメリットもあります。ファクトリーオートメーションの導入にあたっては、以下のようなデメリットに注意しましょう。

初期投資が必要

ファクトリーオートメーションの実現には大きな初期投資が必要です。システムやロボットの導入には多額の費用がかかり、さらにメンテナンスや運用にかかるコストも考慮しなければなりません。システムを効果的に運用するために、技術者の雇用や育成を要する場合もあります。

ファクトリーオートメーションを導入する際には、生産性向上や人件費削減といったメリットと併せて、初期費用やランニングコストについても検討することが大切です。なお、設備の導入費用については、国や自治体の補助金・助成金を利用できる場合もあるため、確認してみるとよいでしょう。

従業員の不安感が生まれる場合もある

ファクトリーオートメーションによって作業工程が自動化されると、作業にあたる従業員のあいだで「仕事がなくなるのでは」という不安が広がるかもしれません。このような不安感は、従業員のモチベーション低下や職場の雰囲気悪化を招くことがあるため注意が必要です。

ファクトリーオートメーションは生産工程の自動化ですが、人の仕事がなくなるわけではありません。人と機械の協業なくしては、ファクトリーオートメーションは成り立たないでしょう。企業は、この点をよく周知させ、従業員の不安を払拭することが大切です。

ファクトリーオートメーション（FA）導入に伴い、多言語対応を検討しよう

グローバル企業がファクトリーオートメーションを検討する際には、ただシステムを導入するだけでなく、多言語対応についても検討する必要があります。例えば、多国籍の従業員が作業にあたる場合、システムの操作画面が多言語化されていなければ、生産ラインをスムーズに稼働させることが難しいかもしれません。生産システムを多言語化するなら、多言語化ソリューション「WOVN.io」がおすすめです。

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