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「らしさ」を追求したサステナ実践のリアル ─ 世界中の Fans と繋がる多言語コミュニケーション─ |バンダイナムコホールディングス 平氏|GLOBALIZED グローバルブランディング

佐藤菜摘

本記事のポイント
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IP を軸に事業活動と一体となったバンダイナムコ “らしい” サステナビリティ活動を推進。
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「読んで楽しい」工夫を凝らした Web 社内報で社員の「自分事化」を促し、サステナビリティに対する社員の理解度は急上昇。海外拠点との連携・多言語対応でアクセスも大幅増加。
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サステナビリティサイトを大幅リニューアルし、株主だけでなく世界中のファンにも IP を通じて発信。サステナビリティコミュニケーションの好循環により、ファンを巻き込んだ社会貢献活動の輪が広がる。
Wovn Technologies株式会社は、2025年8月22日に「GLOBALIZED グローバルブランディング」を開催し、「本社が担う、世界から信頼されるブランドづくりと多言語コミュニケーション」をテーマにセッションをお届けしました。
WOVN.io 導入事例講演では、株式会社バンダイナムコホールディングスの平 秀之氏を迎え、「『らしさ』を追求したサステナ実践のリアル ─ 世界中の Fans と繋がる多言語コミュニケーション ─」と題して、エンターテインメント企業ならではのサステナビリティ活動と、それを推進するための国内外におけるコミュニケーション戦略についてお話しいただきました。本レポートではその内容をご紹介します。
【登壇者】
平 秀之 氏
株式会社バンダイナムコホールディングス
グループ管理本部サステナビリティ推進部マネージャー
1998年ナムコ入社。2000年よりナムコ・エコロテックにて環境配慮製品の企画開発や、企業や自治体の環境マネジメントシステム構築支援に携わる。2009年からバンダイナムコゲームス(現:バンダイナムコエンターテインメント)で品質保証/グリーン調達/CSR、広報、総務などのコーポレート部門を担当、2022年より現職。バンダイナムコグループサステナビリティ委員会事務局。ISO14001審査員補。
目次 |
社員と学生の声がグループのサステナビリティを変えるきっかけに
当社では2005年のバンダイナムコ統合当時から CSR 活動に取り組んできました。2022年から始まった中期計画の重要課題の一つに「サステナビリティ」を掲げ、サステナビリティを経営戦略上の重点的な取り組みと位置づけています。
そのような中、経営層からは常に「我々はエクセレントカンパニーを目指す必要はない。バンダイナムコらしい、バンダイナムコにしかできないサステナブル活動を大事にしよう!」と言われています。でも「バンダイナムコらしさ」とは何なのか?「バンダイナムコらしさ」を追求するため、社内外から見た自社の現状を知ることにしました。
まずは社内の現状を知ろうと2022年に国内と海外のグループ社員約1万名を対象としたアンケート調査を実施しましたが、半数以上がサステナビリティを「知らない、理解していない」というさんさんたる結果。さらに「サステナビリティは特定部署の仕事で自分たちとは関係ない」と考える社員も存在し、事業とサステナビリティが「両輪・表裏一体」であるという会社の考え方と従業員の実感との間に乖離があることが明らかになりました。
また社外評価については大学生にご協力いただき「バンダイナムコのサステナビリティについてどう思うか」といった共感度調査を実施しましたが、今ひとつ印象がないどころか、中にはかなり厳しい意見もいただきました。この調査の模様は経営層にも見ていただきましたが、当社のファンやユーザー、そして将来の仲間となり得る学生の本音は、経営層にとって衝撃的なものであり、これを機に多少なりとも経営層のサステナビリティに対する意識に変化が生まれたと感じています。
社内の声と社外の声。この2つの声こそが私たちバンダイナムコグループのサステナビリティへの取り組みを変えるきっかけとなり、今でも私たちの社内啓発活動と非財務情報発信の根底にあるものとなっています。
パックマンやガンダム。IP を核としたバンダイナムコらしいサステナビリティ活動とは
社内のアンケート調査や大学生共感度調査、また他の企業の皆様との情報交換、それらを通じて共通するワードは「IP」でした。当社は500以上の IP(知的財産)を活かし、その価値を最大化する「IP 軸戦略」を成長のエンジンとしていることもあり、IP を活用したサステナブル活動は自然な考えでした。
IP には伝えるチカラがあります。どんな言葉を並べるよりも影響力、メッセージ性が高いのが特徴です。
例えば、「海をキレイにしよう!」と言葉で訴えるのではなく、「パックマンがゴミを食べることで海がキレイになる」という動画で訴求したらどうでしょうか?ファンの心に残り、堅苦しくなく、カジュアルにメッセージを届けることができます。海洋汚染に対する興味喚起や、意識の変化のきっかけにもなりやすくなるのではないでしょうか。
PAC-MAN Beach Cleanup
https://www.bandainamco.co.jp/sustainability/assets/movie/PAC_SDGs_221102.mp4
また、ガンダムの IP を活用して、様々な取り組みを行っています。
- ガンプラリサイクルプロジェクト:ガンプラ(ガンダムのプラモデル)製作時に不要となるランナー(枠の部分)を全国のゲームセンターやアミューズメント施設で回収し、リサイクルする活動。
- ガンプラアカデミア:全国の小学校でガンプラを通じてものづくりや SDGs を学ぶ機会を提供。現在の小学生にガンダムを知ってもらい、IP の価値を高める事業活動。
- ガンダムオープンイノベーション:ガンダムの宇宙世紀という世界観からヒントを得て、次世代に向けた研究を行うプロジェクト。
先日、若手社員が「ガンプラアカデミアは社会貢献のためだけで行っているのではない」「ガンプラの石油由来プラスチック削減に取り組まなければ、事業は継続できない」「将来のガンダムのファンを増やすためにも大事」といったことを話してくれました。まさにここに現れているのが、サステナビリティ活動と事業活動が一体となっているという当社の特徴です。私たちは、IP を活用したサステナブル活動と、世界中のファンと共に取り組む活動こそが「バンダイナムコらしいサステナブル活動」であると考えています。
「読んで楽しい」工夫を凝らした Web 社内報で社員の「自分事化」を促し、サステナビリティに対する社員の理解度は急上昇。海外拠点との連携・多言語対応でアクセスも大幅増加
「バンダイナムコらしいサステナブル活動」を推進するためには、社員一人ひとりがサステナビリティを「自分事化」することが不可欠です。
以前実施した社内アンケートにおいても「横文字だらけで分かりにくい」「情報がどこにあるか分からない」「自分の仕事と関係ない」といった声が聞かれました。この課題を解決するため、国内外全グループ社員がアクセス可能なサステナビリティに特化したグループ Web 社内報「サステナビリティ BANANA」を2022年11月に開設しましたが、なかなかアクセスが増えません。そこで社員にヒアリングしたところ「業務が忙しくて見る時間がない」「社内報を見ていると遊んでいると思われそう」といった意見もあり、せっかく発信した情報が社員に伝わっていない、そんな状況が見えてきました。
伝えるべき相手に正しく情報を伝えきれていない。これは情報発信側の責任です。そこで私たちは以下のような工夫を行いました。
- 仕事で活用できる情報を掲載
- 昼休みなどの隙間時間でも見られるコンテンツ構成
- アイキャッチの高いデザインのメルマガを全社員に定期的に配信
グループ各社の取り組みや、社員の日常におけるサステナブルな活動を紹介したり、サステナビリティに関する難解なキーワードをマンガや FAQ 形式で解説。「読んで楽しい」「アクセスしたくなる」サイトを目指しました。開設当時は掲載記事の少なさに悩み各社へ情報提供をお願いする日々でしたが、最近ではグループ会社から取り組み事例の掲載依頼が来るようになり、社員の意識変化と活動の広がりを実感しています。
また、サステナビリティにおいて忘れてならないのが海外各社との連携となります。サステナビリティにおいては欧州が先行しており、CSRD(企業サステナビリティ報告指令)やCSDDD(企業持続可能性デュー・ディリジェンス報告指令)といった日本企業にも大きな影響を与えるような法規制が続々と生まれています。そこで「サステナビリティ BANANA」は、2025年2月に WOVN.io を導入、 多言語対応を開始。日本語、英語に加え、中国語、フランス語、スペイン語でも閲覧可能になりました。これにより、欧州の非英語圏拠点からのアクセスが大幅に増加しています。
さらに、社内の情報収集体制も、各ユニットの主幹会社である事業統括会社経由ではなく、ホールディングスによる直接収集へと変更し、収集情報量が倍増しました。
それ以外の社内向け施策として、例えば国内の主要会社や海外の地域統括のサステナビリティ担当者が集まり、現状や課題を議論する「グローバルサステナビリティサミット」を開催しています。また、グループ従業員がサステナビリティについて考えるきっかけをつくることを目的に、1週間にわたり体験型イベントや著名人による講演等の様々なサステナビリティ関連施策が集中して実施される「サステナビリティWEEK」も開催しています。さらに、グループの優れた活動を表彰する「バンダイナムコアワード」では、2022年からサステナビリティ部門を設置しました。
このようなインナープロモーションを続けてきた結果、サステナビリティに関するアンケート調査の結果も向上してきました。まだまだ足りない部分があるとは思っていますが、事業とサステナビリティは両輪と考えるバンダイナムコにとって従業員のサステナビリティの自分事化は最重要であると考えています。
私たちはエンターテインメント企業です。サステナビリティも楽しく学び、楽しく取り組み続けていく。その考えを根底に、引き続きグループにおけるサステナビリティ文化醸成に取り組んでいます。
サステナサイトも大規模リニューアル。IP 活用で、株主だけでなく世界中のファンにも情報発信
企業には、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)、CSRD(企業サステナビリティ報告指令) などといった法規制や TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)や TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)等の国際的フレームワークへの対応、CDP(環境情報開示システムを運営する NGO)などの ESG 評価機関、株主、投資家、そして消費者に向けた非財務情報の開示が求められます。
多くの企業はそれらの非財務情報をサステナビリティサイトに掲載。脱炭素、人権対応、サプライチェーンに関する取り組みや、各種 ESG データなど、投資家・株主の皆様に向けた ESG 情報開示企業としての責任を果たすための詳細な情報を開示しています。
もちろん私たちバンダイナムコグループも同様です。ただ私たちの考えるサステナブル活動は世界中のファンの皆様と、ともに、つながる活動です。そのためにもファンやユーザー、従業員、取引先を含めたすべての関係者に理解していただくことが必要であると考えています。ファンと共にサステナブル活動を進めるため、難しい専門用語を避け、IP を活用した分かりやすいデザインと構成で活動内容を発信することを心がけています。
そんな当社のサステナビリティサイトは2023年2月に従来 IR サイトの一部であったサステナビリティパートを独立させ、大幅リニューアルを行いましたが、一つの特徴に IP 検索機能があげられます。
私たちバンダイナムコのファンの皆様は、バンダイナムコが好き、というよりも「この IP が好き!」という方が多いと感じています。例えばアイドルマスターのファンである方が何かのきっかけでこのサイトを訪れた際に、アイドルマスターが関連する取り組みを知りたいとして検索する。サステナビリティにあまり興味がなかったファンが、好きな IP を通じてサステナブル活動を知り参加、少しずつその活動の輪が広がっていく。
2025年4月にはお子さまに向けた情報発信を目的にサステナビリティキッズサイト「サステナランド」を開設しました。ファンとともに、つながる、活動を進めていくため、ファン目線での情報発信をこれからも進めていきたいと考えています。
バンダイナムコホールディングス公式サイトサステナビリティサイト
https://www.bandainamco.co.jp/sustainability/
サステナビリティキッズサイト「サステナタウン」
https://www.bandainamco.co.jp/sustainability/kids/
サステナビリティコミュニケーションの好循環が、ファンを巻き込んだ社会貢献活動の輪を広げる
IP を活用した社会貢献活動も積極的に展開しています。「アイドルマスターを活用した地域創生」「パックマンを通じた環境学習」「くまのがっこう、ジャッキーを使った被災地支援「ジャッキーキャラバン」などがその例です。
そのほかにも「アイドルマスターのライブ会場での古着や使用済ペンライトの回収」「Bリーグの島根スサノオマジックとの連携によるホーム戦でのサステナビリティイベント」「ガンプラリサイクルプロジェクトやガシャポンのカプセル回収」といったファンと共に取り組むサステナブル活動も活発です。
これらの社会貢献活動はバンダイナムコグループの取り組みの一部となりますが、バンダイナムコグループのサステナブル活動を推進するためには社内外に向けたサステナビリティコミュニケーションが重要と考えます。
社内への情報発信により社員が気づきを得て「自分事化」が進むことで、既存施策のグループ内展開や新しい施策が自発的に生まれる。それらが社外へ発信されることでファンを巻き込み、その活動の様子が再び社内外に発信されて、さらに大きな活動へと拡大していく。
私たちバンダイナムコグループのサステナブル活動を進めるうえでは、このサステナビリティコミュニケーションの好循環が重要であると私たちは考えます。
脱炭素、生物多様性、人権といった現代社会で取り上げられる様々な課題は過去の積み重ねによって生じたものです。これから先、また新しい問題が生まれてくる可能性があり、その取り組みにゴールはありません。
ファンのみなさんとつながり、ともに創るサステナブルな未来。
「IP のチカラを使って世界中に笑顔が溢れるサステナブルな未来を描く」
「IP のチカラを信じて世界中のファンのみなさんにサステナブルなメッセージを届ける」
「Fun for All into the Future」というパーパスのもと、世界中でサステナブルの種を蒔き、ファンと共にその花を咲かせていく。エンターテインメントが生み出す心の豊かさが笑顔を生み出し、人・社会・世界中をつなげていく。
私たちバンダイナムコグループはそんな未来をこれからも目指していきます。
THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc. ©創通・サンライズ
PAC-MAN™& ©Bandai Namco Entertainment Inc. ©BANDAI ©BANDAI SPIRITS
©SHIMANE SUSANOO MAGIC
Web サイト多言語化のご相談は WOVN へ
Wovn Technologies株式会社は Web サイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を提供しています。多言語化についてご興味のある方は、ぜひ資料をダウンロードください。

佐藤菜摘
前職は、広告代理店にて大手CVSの担当営業として、販促物製作やブランディングプロジェクトに従事。2016年WOVN Technologies株式会社に入社し、広報業務を担当。2022年よりMarketingチーム。
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