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【対談】日本製造業ポテンシャル発揮の鍵とは|秋山咲恵氏、キャシー松井氏|GLOBALIZED2022

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堀江 真里子

Wovn Technologies株式会社(以下 WOVN)が2022年8月30日に開催したカンファレンス「GLOBALIZED2022」では、製造業の方に向け、「激変する世界への対応力 ~デジタル・多言語対応で、いかに事業をアップデートするか~」をテーマにお届けしました。

「Keynote 1」のセッションは「激変する世界の製造業 ~日本企業のポテンシャル発揮の鍵とは?~」と題し、MPower Partners ゼネラル・パートナーであるキャシー松井氏と、株式会社サキコーポレーションのファウンダー 秋山咲恵氏が登壇。

初めに松井氏が、コロナ前後の世界のビジネス環境についてマクロ視点でポイントを説明。次に、松井氏から秋山氏にインタビューする形で、秋山氏の起業や海外進出、そして社外取締役としてのご経験を踏まえ、日本の製造業がグローバルで生き抜くヒントを伺いました。本レポートではこれらの内容をご紹介します。

なお、実際の講演動画は以下のページよりご覧いただけます。ご興味のある方はぜひご視聴ください。https://mx.wovn.io/event/archive/globalized_keynote1

【登壇者】
キャシー 松井
MPower Partners ゼネラル・パートナー
ゴールドマン・サックス証券会社、元日本副会⻑およびチーフ日本株ストラテジスト。
1999年に提唱した「ウーマノミクス」の概念はその後広く世界に浸透し、日本政府も女性活躍推進を経済成⻑戦略として打ち上げるに至った。多様性、コーポレートガバナンスと持続可能性を経済合理性の観点から分析し、多くの企業や投資家に影響を与えている。
2020年に『女性社員の育て方、教えます』を出版。
ハーバード大学、ジョンズホプキンズ大学院卒。

秋山 咲恵
起業家、株式会社サキコーポレーション ファウンダー
 
1994年創業、2018年まで代表取締役社長。エレクトロニクス機器製造の分野で画像認識技術を使った自動検査装置メーカーとして世界ブランドを構築。
起業×先端テクノロジー×グローバル×製造業×女性の経験から、公職はじめ多くの仕事に従事。
現在は、ソニーグループ(株)、オリックス(株)、日本郵政(株)、三菱商事(株)の社外取締役、国立大学法人奈良女子大学工学部(日本初の女子大工学部2022年新設)客員教授など。
 

 

1.ビジネス環境激変、製造業への影響は?

松井: まず、世界の GDP 成長率はコロナ後に約-2.5%に落ち込みました。各国政府が対策を打ち出した結果、 V 字型回復が見られました。来年にかけては、コロナ前の水準であった約3%前後に戻る予測になっています。次にインフレ率は、コロナ前は世界平均で約3%でしたが、2022年には倍以上の7~8%まで急上昇しました。例えば WTI の原油価格も2倍に急騰。労働市場がタイトになり賃金インフレが起きたことが大きなドライバーになりました。

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製造業は特に打撃を受け、製造リードタイムが過去最長に。コロナに加えてウクライナ侵攻等の影響で人流や物流が止まりサプライチェーンが分断されたのです。ISM(生産素材の調達期間の指標)を見ると、2019年は50〜60日だったのが、2022年には100日になっています。

この他にも世界は激変しました。アメリカの金利が上昇した結果、ドル円の為替が劇的に変動。日本の金利が上昇せず金利差が拡大したことが大きな要因となりました。また株式市場は年初以来、アメリカ・欧州・アジアの各国で調整局面に入っています。

これらのデータだけ見ると、リーマンショックの様な状況が再び起こるのではという懸念が生まれます。過去に深い世界不況があった時は、民間部門の体力が無かったといえます。一方、現在の民間部門の金融収支では、あくまでも個人的意見ですが各国で企業及び家計のバランスシートが比較的健全に見えます。これだけでは不況回避の要因にはならないものの、深い不況の長期化リスクは比較的低いのではないかと考えています。

2.インクルージョンを推進する WOVN に出資

松井: MPower Partners は、日本初の ESG 重視型グローバル・ベンチャーキャピタルファンドです。MPower Partners は、WOVN が掲げる「世界中の人が、すべてのデータに、母国語でアクセスできるようにする」というミッションに賛同します。ESG の「S(ソーシャル)」において重要な「インクルージョン(包摂性)」に通じるからです。

WOVN は言語の壁を越えるソリューションを提供し、ボーダーレスかつグローバルにビジネスを支えることができるため大きな社会的インパクトを有します。MPower Partners は WOVN への投資を通じて、多文化・多言語が共生できるインクルーシブな社会の実現に協力したいと考えています。

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3.対談:日本製造業のポテンシャル発揮の鍵とは

松井: 本日のゲスト秋山咲恵さんをご紹介させて頂きます。私も長年、日本人女性でこんな珍しいご経歴の方がいらっしゃるのかと、ロールモデルにさせて頂いている存在です。1994年にエレクトロニクス機器製造の分野でサキコーポレーションを創業され、技術をもってブランドを確立し世界展開に成功されました。2018年まで社長を務められた後、現在は日本の多くの優良企業で社外取締役をされています。

本日はそんな秋山さんのご経験から、グローバル展開していきたい日本の製造業にとってのヒントを幾つか伺っていきたいと思います。

4.不確実性の時代を生き抜くヒント

松井: 早速ですが、秋山さんのご経験を踏まえ、現在の様に日本の製造業が将来を予想しづらい時に、ご自身ではどう乗り越えて来られたか、何かヒントはありますか?

秋山: 私自身、最先端エレクトロニクス製品の工場の現場で、変化の続くディスラプションの時代を生きてきました。1980〜90年代は日本製品の品質が高評価で、ものづくりと言えば日本の製造業自体がグローバルなブランドでした。ただしビジネス環境のグローバル化が進み EMS というビジネスモデルが登場し、新興メーカーが大手企業の製造を担う様に。また、2000年頃から中国が世界の工場として急成長。リーマンショックや為替変動等、日本メーカーへの逆風が続きました。

サキコーポレーションを創業して間もなくマレーシアに進出しました。最初のお客様は日本企業の国内工場で、その実績を踏まえてビジネス展開しようという時、次はマレーシアや台湾の工場に導入したいと言われました。この機会を逃す訳にもいかず現地に進出したのです。海外進出したからには、日本だけでなく世界中の企業の工場で商品を使って欲しいと考えていました。

商品はあっても実際に売っていたのはソリューションですから、お客様の課題を理解し、なぜこのソリューションが最適なのか伝える必要がありました。小さな企業で、自分達だけでグローバル展開は困難だったため、現地社員や、拠点の無い国ではビジネスパートナーを味方にすることが鍵でした。振り返ってみて、どんなに時代やビジネス環境が変化しても、製造業がグローバル展開するうえでは、相手の母国語で常に深いコミュニケーションをとることが重要だと思います。現地の環境に適応する最大限の努力をするほかなく、目の前にいる人とのコミュニケーションをコツコツ行ってきました。

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5.製造業に必要な多言語対応

松井: この予測不可能な時代においても、多言語化の対応は製造業にとって非常に重要ということですね。もう少し深くお聞かせ頂けますか?

秋山: 製造業にとって、海外で提案・販売する段階で多言語を扱うのみならず、製品開発の段階で多言語で情報収集することが必須と考えます。

海外で競争力のある製品を作るには、開発段階で、最新かつ世界最高のテクノロジーを取り入れる必要があります。世界市場は刻々と変化し、つい最近まで日本が最先端であった分野でも既に状況が違うことがある。日本人が日本語の情報だけ探しても優れた情報にリーチできないのです。私たちは片言で一生懸命コミュニケーションしてきた訳ですが、当時 WOVN のサービスがあれば少し楽だったかなと思ったりもします。

6.グローバル企業のベストプラクティス

松井: 秋山さんはこれまでご自身で創業された他にも、社外取締役として活躍なさっています。多くの企業を見てこられた中で、日本企業がグローバル展開するうえでのベストプラクティスはどんなものでしょうか。少し伺えますか?

秋山: 冒頭のキャシーさんのお話でも、インクルージョンというキーワードが出ました。インクルージョンはグローバルビジネスの競争力に繋がると考えています。

国内市場がそれなりの規模で成長していた時代は、企業が成長して国内シェアを広げるというシナリオが成立しました。ただし今後の日本企業は、グローバルに生きる道を見つけていく他ないと言っても過言ではありません。海外売上比率が高い企業では、オペレーションは各国ローカルにあります。一方で各国オペレーションを統括する機能は日本本社にあり日本人比率が高いでしょう。つまり、日本語の文脈で、日本人のカルチャーで物事が語られます。それをそのまま英語や中国語に翻訳するだけでは本社の温度感が現場に伝わりにくい、という課題が間違いなくあると思います。

グローバル企業の会議では、様々な国の人が出席するため同時通訳が入ることがあります。例えば、見ていてグローバル化が実質的に進んでいるなと思う企業では、会議の冒頭で毎回チェアマンが「今日は同時通訳が入っており、かつオンライン会議なため、発言する際には自分の名前を伝え、分かりやすい言葉でゆっくりとお願いします」と伝えます。これによって通訳の質が上がり、言語を越えて互いの理解が深まっています。

通訳がいるから、と、日本人同士でいつも通りに話すと、全てのニュアンスまで通訳するハードルが高くなってしまう。そして、同じ会議で聞いていたはずだ、とか、本当に同じ議論をシェアできていたのか?という問題になってしまいます。そうならないために、まず自分と違う人たちのことに思いを馳せることが、インクルージョンの第一歩だと思っています。

松井: 同日通訳の様なインフラの整備だけでなく、一人一人のマインドセットが必要なんですね。

7.メッセージ:グローバル人材の視点

松井: 本日参加している皆さんの企業では、グローバル人材を採用している、または採用しようとしているケースが多いと思います。多言語化のお話と関連して、最後に、グローバル人材になるにはどうすれば良いのか、何かヒントを頂けませんか?

秋山: 言語の壁をどんな形でも少し乗り越えてみると、目の前にいる一人の方は、国籍や性別等の属性ではなく、実はその方ご自身であると気がつくんですよね。言語のハードルさえ少し下げられれば、一人一人の個性ある人間としてしっかりコミュニケーションをとってお付き合いすることが一番の解決策かな、と思います。すると相手から学べることが多いですし、その姿勢は相手に伝わり、自分も相手も同じ様にリスペクトし合えている。そこで仕事が上手くいく、ということが本当にあると思います。

松井: その通りだと思いますね。言うのは簡単で実際に実施するのは難しいかなと思いますが。今まで大成功してきた秋山さんの秘訣やヒントを頂きました。本当に貴重なお話ありがとうございました。

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