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第2章:多言語体験(MX)が新市場攻略のカギ【Multilingual Experience 外国人戦略のためのWEB多言語化】

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佐藤菜摘

本企画では、2019年10月に Wovn Technologies株式会社 取締役副社長・COO の上森 久之が著した書籍「Multilingual Experience 外国人戦略のためのWEB多言語化」の全文を全9回に分けてお届けしております。

第3回となる本記事では、『第2章 多言語体験(MX)が新市場攻略のカギ』を公開します。

Multilingual Experience 外国人戦略のためのWEB多言語化 目次

多言語体験(MX)が新市場攻略のカギ

10兆円市場攻略のカギは多言語体験(MX)

企業は時代に合わせて変わり続ける必要があります。リーマンショック後、多くの企業は収益性が高い事業を残し、低収益事業をリストラしました。経済が復調してきた2010年以降、企業内に「イノベーション推進担当部署」を設ける企業が急増しました。また、小売業でECが一般化してくると「デジタル統括、通販事業部」などが多く設置されました。インバウンドが各産業にポジティブな影響を与えだし、首都圏の大手小売店舗で売上比率が上がってくると、「インバウンド推進部」が設置され始めています。


観光庁によれば2018年の訪日外国人は前年比で約9%増え、ついに3000万人を超えて3119万人に達しました。一人あたりの消費金額は15万円強ですから、訪日インバウンド市場規模は約4.5兆円になります。その中身も宿泊、旅行、小売り、エンタメ、金融、通信企業など、関係する業界も多岐にわたります。


ところで、日本では在留外国人市場も年々盛り上がっていることをご存じでしょうか。インバウンドの陰に隠れてあまり知られていませんが、在留外国人の消費市場は約5兆円もあるのです。当然、この大きな市場は無視できるものではありません。


2035年までに1000万人以上の労働人口(生産年齢人口)が減少する日本では、労働力確保が大きな社会課題となっています。AI(人口知能)や女性・高齢者活用も叫ばれていますが、まだまだ十分ではなく、今後も外国人労働者や留学生が増えることは間違いありません。2019年には外国人の労働力を確保しやすくするために出入国管理法が改正されています。


インバウンドのさらなる増加や改正入管法施行による在留外国人の急増、ビジネスの国際化で否応なしに迫られるグローバル対応など、日本のビジネス環境では多言語化対応の必要性が日増しに高まっています。
在留外国人市場に外国人労働者。これらが生み出す巨大な成長市場に対してどのような戦略で臨むか。いずれも100年以上ある日本企業の歴史において、真剣に取り組んだことのないテーマです。これは変革期がもたらすピンチであると同時に、大きなチャンスでもあるわけです。


外国人戦略を考えるうえで、①「インバウンド対応」②「在留外国人対応」③「グローバル対応」の3つに分類して整理して考えてみます。

① インバウンドは、観光や出張、知人を訪れるなどのために日本に短期間滞在する人のことです。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてはもちろん、その後も成長が続くと予想されている分野です。

② 在留外国人は、労働者に加えて、留学生や研修生、実習生などを含めた、一定期間以上日本に住んでいる外国人。実はここも市場が大きいところです。

③ 3つ目のグローバル対応は、世界中にいる人たちがターゲットです。日本から海外に向けて発信していくものや、世界からみなさんの企業のサイトにアクセスしてもらえるようなコミュニケーションをイメージしていただくといいと思います。ここには日本企業の海外支店で働く外国人の従業員も含まれます。

 

インバウンド消費は「単価 UP × 人数 UP」
在留外国人消費は「単価 × 人数 UP」

今後も市場規模が拡大する外国人向けにサービスを提供するビジネスを考えた場合、企業はどのような戦略をとるべきか。インバウンド消費と在留外国人消費の両面をシンプルに考えてみましょう。

どんなビジネスも売上高は常に「単価×人数」と表現できます。4.5兆円のインバウンド消費額を向上させるためには人数を増やし、顧客単価もアップさせる「単価UP×人数U P」という前提で整理すると施策立案がしやすいでしょう。訪日外国人を増加させる施策とともに、1人ひとりの顧客単価も向上させる施策が重要となります。

インバウンド訪日外国人は、旅行、ビジネスなどの目的で来日し短期間滞在する外国人です。訪日する外国人を増やすため、政府はビザや免税等の規制緩和を行い、企業は訪日前の現地消費者に向けた各サービス情報の発信を強化しています。訪日外国人の行動を整理し、企業施策を整理する「タビマエ・タビナカ・タビアト」等のフレームワームも浸透してきており、この数年で企業のインバウンド対応施策も徐々に洗練されてきていると感じます。

一方、顧客単価の向上には、中国人観光客の ”爆買い” が一段落して以降、やや伸び悩みの傾向があり、大きな進展がみられていないという感覚があります。

ビジネスの立場からは、現在1人あたり約15万円の消費額を向上させる施策の方が、「外国人売り上げを向上させる」という企業目的には強く貢献するでしょう。

例えば渋谷のある大手商業施設では、既に40%以上が外国人の売り上げになっているそうです。売り上げに貢献しているのは客単価3万円を超える日本のハイブランドアパレルです。訪日外国人も海外渡航先で財布の紐がゆるくなる消費者心理が働きます。訪日外国人のうち高所得層に対して高価格帯の商品やサービスを提供することこそ、インバウンド消費額を増加させる重要課題と言えるでしょう。

一方、現在約5兆円の在留外国人の消費額を増加させるには「単価×人数UP」という前提をとるべきだと考えられます。今後増加する在留外国人の多くは、新興国等から仕事のために来て日本に住む外国人です。従事する業務からの所得を考慮すると、高価格帯の商品やサービスを提供して単に顧客単価を上げるのではなく、むしろ住みやすく、学びやすいなど「より魅力的な国や都市」となり、在留外国人を増やす努力を、国や企業が一丸となって実行していくことが大切でしょう。

例えば、ベルリンでは生活コストが低く、英語でのコミュニケーションも可能なため、住民の約2割が外国人です。
在留外国人向けの企業活動としては、語学教育や不動産紹介などのサービスに注目が集まりがちです。実は、多くの企業に関係し、インパクトが大きいのは「生活インフラ関連の大手企業が、いかに在留外国人の顧客数を増加させるか」ということです。

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日本語が不自由な外国人も、私たち日本人と同様の生活を送ります。日本の大手通信会社と契約し、スマホを利用します。ECサイトで洋服を買ったりもします。

2017年ごろから、私のもとにも、大手通信会社、大手消費者ブランド、大手小売店、大手通販会社、大手鉄道企業など生活インフラの大手企業から相談が急増しています。
そこでいつもアドバイスするのは、「多言語体験(MX:Multilingual Experience)」を前提とした、WEBの多言語化です。

インターネットにおける外国人対応は社会課題といえます。そして、インターネットに関する取り組みは、民間主導となることが多いのです。多言語化においても「2020年東京 オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた関係自治体等連絡協議会」内にある多言語化評議会において、多言語表記問題が議論されています。

しかし、インターネットを介したユーザーコミュニケーションであるWEB多言語化については、政府や自治体で議論されることはあまりなく、事業会社がベストプラクティスを見つけ出して広めるべきだと考えます。つまり、まだ社会に広く定着してしていないWEB多言語化についても、現状では民間が主導していくことを強く意識すべきだと私は考えています。

外国人向けビジネスのカギを握る多言語体験(MX)とは

企業が多言語化を行う場合、外国人消費者向け(CX:顧客体験、Customer Experience)なのか? 外国人従業員向け(EX:従業員体験、Employee Experience)なのか? ターゲットの整理が必要です。さらに重要なのは、その先にある顧客行動の最適化です。

外国人消費者向け(CX)の多言語化であれば、販売することが目的ですから、顧客価値(CV:Customer Value)の向上目的とブランディング目的の多言語化は分けて考えるべきです。

CV向上のためには、顧客のロイヤルティを高める会員制度の導入が有効な手段だとされています。ただ、従来あるような日本語の通じる顧客だけを想定したサービスをそのまま導入したのでは、かえって顧客満足度を落とす結果になってしまう場合があります。

例えば、会員登録における氏名の入力です。会員登録のフォーマットとしてよく見かけるケースですが、「漢字」のほか「カナ」入力を必須としている場合があります。顧客データベース上で検索する際にあらかじめカナを入力してもらっておけば、データの管理が楽になるためです。

ところが、これをそのまま外国人向けに導入してしまうと、カナ文字を持たない外国人は入力ができず、会員登録で離脱してしまいます。

しかし、企業はこうした顧客の体験をきちんとフォローしないで、自社の発信したい情報がとりあえず外国語になっていて「いい感じの翻訳ができればよい」という考えで、ブランディング目的の多言語化にばかり注目することが多いのです。これでは本来の目的である顧客満足度は下がってしまいます。

一方、外国人従業員向け(EX)の多言語化が必要なケースとしては、正しく入力するための「勤怠管理システム」や、業務ミスを減らして早期に高い業務パフォーマンスを発揮するための「WEB業務マニュアル」などがあります。企業の立場としては、無駄な間接コストを削減し、働く外国人従業員のストレスを最小限とし、より従業員体験を高めるWEB多言語化施策が求められます。

 

イントラネットと J-SOX 統制環境

複数の海外子会社を有するグローバル企業グループでは、イントラネットの多言語化の必要性が高いと考えられます。イントラネットとは、企業内限定のプライベートなポータルサイトで、企業から従業員への情報配信や企業内ノウハウを共有するものです。このイントラネットは、J-SOX(内部統制)上も重要な役割を果たします。

企業は、不正や違法行為を未然に防ぐために、経営者の誠実性や理念をイントラネットで配信します。これはJ-SOXの根幹となる統制環境として評価されます。しかし、外国人従業員にとっては言語の問題があり、そのままでは理解が困難です。

例えば、日本のグローバルCEOから経営理念に関する重要なメッセージが配信されたとします。この場合、海外現地企業の外国人従業員に理解させるため、各地の言語に対応するとともに、カントリー・マネジャーが現地の商慣習や感覚に合わせた表現にチューニングすることが望ましいです。カントリー・マネジャーはグループ経営方針、海外現地従業員、慣習も深く理解していますから、単に言語を翻訳しただけではないトップの真意を現地の従業員に伝えることができるのです。

このように、外国人従業員になんとか日本語で読むことを強制するより、読める環境をあらかじめ提供するのが、これからの企業の役割ではないでしょうか。優秀な人材は、より働きやすい企業に集まります。そして、優秀な人材が集まった企業は、必ず成長します。

実際、私も会計・コンサル企業の日本オフィスに勤務していたときには、グローバルCEOの英語メッセージに目をとめることがありませんでした。これでは、企業グループの経営方針やミッションを伝達するという組織の根幹に機能不全があったと言わざるを得ません。

昨今、顧客体験、従業員体験、購買体験など「体験:Experience」という言葉が使われることが増えています。その本質は「サービス提供側(企業)のおもいやり」なのではないでしょうか。多くの分野でサービスレベルは著しく向上しています。提供を受ける消費者や従業員は、さらに究極にラクで便利なものを求めるようになっています。

サービス提供者(企業)は、激しい企業間競争の中でビジネスを展開します。その結果、より「おもいやり」を持った企業のサービスが顧客や従業員に選択されているように思います。これが「体験:Experience」であり、外国人とのビジネスにおいては「多言語体験(MX:Multilingual Experience)」が企業間競争の勝敗に影響を与えるでしょう。

事業会社の戦略においては、各部署でバラバラだった「外国人対応」を1つの機能別戦略とみることで、事業戦略を後押しできます。
この外国人戦略の前提となるのが「多言語体験(MX)」です。外国人消費者向け、外国人従業員向けなど対象者の体験を最適化させることで事業成長をさせることができます。

 

おもいやりに欠ける外国人に対するサービス

サービスに「おもいやり」が欠けると、外国人観光客や外国人従業員は、どのような体験をするのでしょうか。日本に3日間滞在するだけで、次のようなことが実際に起こっています。このような困りごとは、在留外国人以上に海外からの観光客(訪日外国人)の方が多いはずです。

  • バスやタクシーの乗車案内や乗り方、運賃体系などが分からない。
  • ケガをしたけれど、病院が探せない。
  • 案内が日本語のみでテーマパークのチケットの買い方が分からない。
  • 旅館のマナーが分からない。
  • 宗教や健康上の理由でメニューの成分表示が知りたいのに分からない。
  • 服を買いたいけれどサイズ表示が分からない。
  • 駅できっぷの買い方が分からない。


これらはほんの一部です。インバウンド訪日外国人や在留外国人に加えて、海外から日本のWEBサイトにアクセスする際や、企業間のやりとりで日本のシステムを使用する際などについても、さまざまなシーンでコミュニケーションがとれないために混乱する場面が多く見られます。

外国人との接点が増えるにつれて、英語やスペイン語、フランス語、ベトナム語といった多言語での対応が必須になってくるのを多くの人が感じていると思いますが、公的機関や民間企業の方は、このような困りごとにどこまで対処しているでしょうか。

外国人はもちろんですが、私たち日本人もコミュニケーションできないために、困った状況に陥っているのではないでしょうか。このような状況を受け、サービスを提供する企業・公的機関が多言語体験(MX)をデザインする主体となり、問題解決に向き合い始めています。

 

「住民票」は「JUMINHYO」? 投資対象として注目

「ジェフさん。来週までに住民票の写しを持ってきてください。このアパートに住むための申し込みと契約に必要ですから、区役所に行って取ってきてくださいね」

「ジュウミンヒョウ? レジデンスカード(在留カード)のことですか?」

「レジデンスカードって何かしら? それなのかどうか分からないけれど、とにかく住民票というものよ、住民票の写しを持ってきてね」

「アア、ハイ・・・・。」

ある賃貸アパートの大家さんと外国人留学生との会話です。やりとりは通じているものの、肝心な「住民票」という言葉の意味が通じなくて困っています。

最近の区役所の案内板や書類には、住民票の英語訳「Certificate of Residence」よりも「住民票 JUMINHYO」とローマ字綴りの読み方が大きく併記されていたりします。

国によって住民票の概念が違っていたり、大家さんよっては外国語が分からないなどの理由もあり、日本の「住民票」は「JUMINHY 」という固有名詞になりつつあるようです。これはもはや単なる翻訳の域を超えています。

さらに言うと、今後「JUMINHY」という言葉が外国人の間で定着し、次第に ”市民権” を得れば、将来の翻訳には、その国の「住民票」に対応する言語と「JUMINHYO」という単語の2つが併記されるようになるかもしれません。翻訳に関しては、一度確定したらおしまいではなく、変化する時代に合わせて常にアップデートすることも重要となります。

 

多言語体験(MX)の必要性

そもそも、翻訳や多言語化を含めた「外国人戦略」の目的はなんでしょうか? 「英訳したWEBページを作りたい」。これは手段であって、目的ではありません。

外国人戦略の目的は大きく2つに集約されます。
1つは外国人消費者の体験価値を高めて製品・サービスを消費してもらうこと。2つめに、外国人従業員の体験価値を高め、ひいては高いサービス・パフォーマンスを実現することです。一般的に前者はCX(顧客体験、Customer Experience)、後者はEX(従業員体験、Employee Experience)と呼ばれ、多くの経営者・マーケター・HR(人事)担当者が検討している事項です。

外国人戦略においては、CX、EXともに外国人が相手である点が特徴です。私の所属する Wovn Technologies では、「外国人消費者・従業員のあらゆる体験」を多言語体験(MX:Multilingual Experienc)と呼んでいます。

MXを考える際に重要なのは、言語の数ではなく「対象となる外国人がどのような体験をしたいか」です。

先進的なデジタル施策で業界をリードする「すかいらーくグループ」もまた、WEBサイトを5カ国語で提供しています。ファミリーレストラン「ガスト」の表記を見てみましょう。
日本語では、「ガスト」とカタカナです。一方、英語では「Gusto」ですが、WEB検索上および店舗ロゴ表記上もカタカナ「ガスト」でないと、発見・識別できません。そのため、「Gusto(ガスト)」と表記しています。このように、検索を意識したWEBサイトも増えています。


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一方、訪日客が母国の家族にお土産を買いたいのであれば、過度に多言語化された商品よりも、日本ローカル感が漂うものがいいので、翻訳は最低限でよいことになります。多少の翻訳誤りは、かえって ”風情” と言えるかもしれません。

他方で、訪日客が災害に遭って正しい状況を知りたい場合はどうでしょう? この場合は母国語で正しくタイムリーな情報提供が、安心・安全につながります。

このように多言語体験(MX)を上げるためには、単に翻訳すればいいというわけではなく、外国人にどういった体験をしてほしいのかという、外国人戦略を考える必要があります。

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さて多言語体験(MX)を実現するためには、WEBサイトの翻訳・多言語化をどのように定義すればよいのでしょうか。3つのフェーズに分けて考えてみましょう。

まず、フェーズ1として、言語やデザインのルールに基づいて「変換すること」を「Transfer」と呼びます。「変換(Transfer)」では、「おいしい」を「delicious」 と翻訳するのみで、ルールに基づいた絶対的なものです。またデザイン面においても、例えば当初定めたフォントのサイズや種類を変えることはしません。機械翻訳の結果を意味が伝わる程度に修正したもの、というイメージです。

次にフェーズ2として、法律・文化・慣習などに基づいて「適応すること」を「Adaptation」と呼びます。「適応(Adaptation)」では、「おいしい」を翻訳する場合、子供向けお菓子サイトであれば「Yummy」(幼児語のおいしい)と訳し、フォントは子供っぽい柔らかめのフォントを選択します。大人向けの高級レストランサイトであれば「delicious」と訳し、高貴な印象のフォントを利用します。

「適応(Adaptation)」は相手、地域、国によって相対的なもので、どこまで作りこむかはサイトのオーナーと高度なすり合わせが必要となってきます。現在多くの翻訳会社が提供するのは、この「適応(Adaptation)」です。Wovn Technologies も多くの翻訳会社とお付き合いがあり、彼らの言語へのこだわり・専門性は素晴らしいものだと認識しています

「Adaptation」はゲーム業界などでは「Culturalize(カルチャライズ)」と呼ばれていて、根本的に価値が相違する国、多数の文化が入り混じるグローバルマーケットにおいて、コンテンツと地域文化との相性などを反映するという意味で使われています。

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「変換(Transfer)」「適応(Adaptation)」の2つが、一般に言われる「翻訳」です。

 そしてインターネットだからこそ必要となるのが、フェーズ3「最適化(Optimization)」です。翻訳・多言語化はそれ自体が目的ではなく、その先にいる外国人の体験を最大化(MX)することが目的です。例えば日本とオーストラリアでは季節が全く逆なので、日本では8月には半袖のTシャツを薦めるでしょう。しかし、オーストラリアのユーザーにはダウンジャケットを薦めるのがよいでしょう。

また外国人従業員には、仕事のしやすい環境を整備する必要があります。そのため各国従業員用に多言語化されたクラウドの勤怠システムを整備するのがいいかもしれません。

 

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何でも翻訳すればいいわけじゃない

今日では、どのような企業も顧客とつなぐツールとして、個々の企業が制作したWEBサイトやSNSを持ち、決裁や人事など内部業務にしても、何かしらのシステムがあります。そして、これらは、すべてインターネットでつながっているのが当たり前の時代になっています。

これから企業が外国人戦略を策定する際、必ずしなければならないことは「WEBの多言語化」です。これから先、この本の本題であるWEBの多言語化とはどのようなことかをお話ししていきます。その前に「多言語対応の認識合わせ」について言及しておきたいと思います。

「多言語対応」のイメージについては、「多言語の ”多 ”は多いという意味だから、たくさんの言語に対応するということだろう」と考える人や、「世界共通語の英語さえあれば多くの人に情報が伝わるから、多言語化対応の意味にもなるのではないか」と言う人、「英語と中国語、フランス語など3~4カ国語あれば多言語化対応と言えるのでは?」などに分類できます。

多言語対応のイメージは、人によってさまざまです。しかし、すべてのイメージに共通している重要な点は「外国人対応」です。つまり、多言語対応は、外国人対応の重要な一部なのです。

また、英語のみならず、他の複数言語を提供する必要性を理解するには、世界で利用されている言語を知ることも有用でしょう。現在、世界には8000以上の言語が存在しています(三省堂言語学大辞典による)。ビジネス上で世界中をカバーできると言われている言語数はおよそ40です。ここには当然英語が含まれており、それを理解できる人の割合も多いです。その英語にしても、世界のインターネット上で使われている言語の25%にすぎないと言われています。ということは、WEBサイトを英語だけ対応できたとしても、全世界の4人に1人しか読むことができないのです。

 

情報を読む人と発信する人

ところで、この本の読者には、海外のWEBサイトを読み込む際に、Google翻訳を使っている方も多いかと思います。このGoogle翻訳ですが、ブラウザの拡張機能を使えば、そのページの外国語をそのまま翻訳してくれることをご存じでしょうか。

この事実をご存じの方の中には「そんな機能があるのだからWEBサイトの多言語化なんてしなくていいのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、ことはそう簡単ではありません。

確かに、個人がこの機能を自己責任で使うのは非常に便利なのですが、ビジネスで企業が使おうとすると、外国語での検索結果に出てこない、ブランド名などの固有名詞が正しく翻訳されない、レイアウトが崩れるなどの問題が発生します。また誤解を恐れずに言うと、Googleはユーザーに普遍的にサービス提供していますので、特定の用途や利用者を想定した気を利かせた翻訳というのは望むべくもありません。また、翻訳のタイミング次第では、翻訳結果が変わってしまう恐れもあります。

それに、母国語で情報にアクセス(検索)できません。

WEBサイトを運営する企業は、Google翻訳のような不特定多数向けのサービスを利用するだけでは十分ではありません。とりわけ大企業においては、ブランディング、ガバナンス、事業戦略などの観点から、自ら作った正しい翻訳・デザインで伝えるべきメッセージを構築して多言語化しなくてはなりません。さらに、利用者がそれぞれの母国語でアクセス(検索)できることが重要なのです。



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第3章  「訪日客3000万人、拡大続くインバウンド」に続きます。

 

 

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