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【元ニトリ人事責任者登壇】外国人にとって働きやすい組織とは|トイトイ 永島氏・HRファーブラ 山本氏|GLOBALIZED 外国人材とダイバーシティ経営

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佐藤菜摘

 本記事のポイント 

  • 組織開発の観点から外国人材の登用は非常に効用がある。なぜ人材の多様化を進めるのか?を明確にする

  • 外国人の育成では、一人の人間同士として価値観を尊重し、行動を強要するのではなく行動を自ら選ばせることが重要

  • ローコンテクストカルチャーに合わせ、あらゆることを言語化し、外国人が理解できる言葉で論理的に伝えるべき

Wovn Technologies株式会社は、2024年11月13日に「GLOBALIZED 外国人材とダイバーシティ経営」を開催し、「誰もが活躍できる多言語対応・デジタル環境整備とは」をテーマにセッションをお届けしました。

基調対談では、元ニトリ人事責任者でトイトイ合同会社代表社員 永島 寛之 氏、株式会社HRファーブラ 代表取締役 山本 紳也 氏を迎え、「外国人にとって働きやすい組織とは」と題して、ダイバーシティマネジメントにおける課題と解決策についてお話を伺いました。本レポートではその内容をご紹介します。

【登壇者】
元ニトリ人事責任者
中央大学 企業研究所客員研究員
トイトイ合同会社代表社員
永島 寛之 氏

「組織活動は“問い”と“対話”で構成される」という考え方から、企業向けにユニークな組織開発と人材開発の支援をしている。現在は複数社の人事・戦略顧問を担当しつつ、大学で有識者を交えて次世代の人材育成体系を研究中。 経歴は、東レ、ソニーで海外マーケティングに従事した後、米国駐在を経てニトリに入社。ニトリでは人事責任者として、似鳥会長直下で組織変革を指揮し、直近では再生エネルギー開発レノバにて執行役員CHROを担当。

株式会社HRファーブラ
代表取締役
山本 紳也 氏

工学部を卒業し、メーカーにソフトウエアエンジニアとして就職後、イリノイ大学大学院でMBAを取得。1991年から組織人事コンサルタント&研修講師・ファシリテータとして、30年以上。
外資系コンサルティング会社を経て、1999年、PwCジャパンにて組織人事コンサルティング部門と立上、15年間、パートナーとして日本企業のM&Aや人事改革、組織開発に従事。HRファーブラを創業し独立し、10年。一橋大学、筑波大学、上智大学、立命館アジア太平洋大学の学部・大学院で、非常勤として人事やリーダーシップ、戦略論などの授業を担当。

 

ダイバーシティマネジメントの難しさ

WOVN:
本日は「外国人にとって働きやすい組織とは」というテーマで、お二人から解説をいただき、その情報をもとにディスカッションできればと思います。まずは永島様からお願いいたします。


永島(トイトイ):
皆さんはじめまして。“問い”と“対話”をテーマに組織開発をしている永島です。本日はアメリカ駐在で学んだマネジメントの経験とニトリ時代に実践した外国人のオンボーディングについて、失敗談も含めてお話します。

まずは私がアメリカで感じたマネジメントの難しさについてです。私は元々メーカーでマーケティングの仕事をしており、アメリカに駐在した際に初めて部下を持ち、いきなりダイバーシティマネジメントに挑戦することになりました。

表面上はみな明るく、マネジメントもうまくいっていると思っていましたが、ある時から「永島さんはマネージャーとしてワークしていない」と言われるようになりました。「会社のビジョンや予算ばかり発言するけれど、あなたは何をしにここへ来たの?」と言われたり、「社長になるパスを教えてくれ」と言われたり。そのような部下からの発言に向き合わず、ごまかしながら対応していたら、現地の人事部長から『The First-Time Manager』という本を渡されました。この時に初めてマネジメントの方法を学んだのでここで紹介します。

マネジメントの仕事は次の3つで構成されています。

  1. 業務マネジメント:目標達成機能(KPI 管理/人件費管理など)
  2. ピープルマネジメント:人材育成機能(成長環境提供、組織開発、フェアな報酬管理)
  3. 仕組み化:再現性の確保(属人性脱却、人材流動化)

業務マネジメント(1.)はできても、ピープルマネジメント(2.)ができない、また仕組み化(3.)して属人性を脱却することができないマネージャーが多くいます。日本で成果を上げたプレイヤーが、人を育てることを知らずに海外に送られてマネージャーになるケースが多いからです。海外の人が活躍する組織を作るためには、1・2・3の全てが必要だと勉強しました。

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(トイトイ合同会社 永島氏)

 

ニトリの外国人採用から学ぶ、上司と部下の相互理解の重要性

永島(トイトイ):
次に人材の多様化についてニトリ時代の経験をお話します。ここでまずお伝えしたいのは、「何のための多様化か」目的を明確にすることが重要だということです。ニトリで人事を担当した10年間で、海外進出に向けて外国人材を採用し海外の幹部を日本で育成しようという計画がありました。そこで初年度は100人ほど採用し手厚くオンボーディング研修をしました。しかし退職者が続出したのです。

何が問題だったのか。初年度の研修では、外国籍従業員が日本に適応できるよう、ビジネスマナーやビジネスコミュニケーションを教えていましたが、これが問題だったのです。自分の出身国に対する上司の関心・理解が低く、外国籍社員の不満につながっていることがわかりました。そこで翌年からは配属先の上司と外国籍社員双方に研修を行ったところ定着がうまくいくようになりました。相互に学ぶことが大事だということをこの経験で知りました。

 

外国人が働きやすい組織を考える際の3つの観点

WOVN:
永島様、ありがとうございました。続いて山本様お願いします。


山本(HRファーブラ):
山本と申します。私は組織人事のコンサルタントや大学で教員をしており、永島さんと違って現場ではなく外からダイバーシティマネジメントを見てきました。色々な国籍の上司の下で働いた経験もありますので、それらも踏まえてお話します。

外国人が働きやすい組織を考える上で、以下の3つの観点に着目する必要があると考えています。

  1. DE&I/ダイバーシティ・イクイティ&インクルージョン~アンコンシャスバイアス~
  2. ハイコンテキストカルチャー vs ローコンテキストカルチャー
  3. 語学&コミュニケーション・ビヘイビアー

 

  1. DE&I/ダイバーシティ・イクイティ&インクルージョン~アンコンシャスバイアス~

    「Team Work」とは何かといわれた時に、皆さんは何を思い浮かべますか。おそらく「和を以て貴し」や「ハーモニー」といった言葉を思い浮かべるでしょう。一方でアメリカ人に聞くと「Respect」、合わせるのではなく違いを尊重することが大事だという考えが一番に出てきます。外国人が働きやすい組織になるには、このように違う価値観の人間がお互いをリスペクトしながら、どうすれば一緒に働けるだろうかという意識になる必要があります。まずは「合わせることを無意識に重視する」日本の常識を捨てて白紙で対峙しましょう。

  2. ハイコンテキストカルチャー vs ローコンテキストカルチャー

    『異文化理解力』という本の中でもカルチャーの違いに関する解説があります。例えば論理的な説明を重視するローコンテクストカルチャーなのか、阿吽の呼吸を重視するハイコンテキストカルチャーなのか。他にはネガティブなフィードバックを直接するか間接的にするか、競争を避けるかどうかなど、国によって違いがありますが、これらはどちらが良いか悪いかではありません。ここで考えていただきたいことがあります。日本人がローコンテクストカルチャーの国に行くとロジカルな説明が求められ、辛く感じることもあるでしょう。しかし多少辛くとも努力すれば説明できます。逆にローコンテクストカルチャーの人が日本に来て「空気を読め」と言われても無理です。日本企業がグローバル市場に出ていくためには、我々がローコンテクストカルチャーに合わせるしかありません。あらゆることを言語化しそれを外国語でも説明する必要があると感じます。



  3. 語学&コミュニケーション・ビヘイビアー

    言葉が通じない限り外国人とのコミュニケーションは始まりません。ただし言語だけでなく、自分の言いたいことを論理的に説明する、主語と述語と動詞を省略せず話すといった、基本的なことを守る必要があります。

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(株式会社HRファーブラ 山本氏)

 

外国人材登用の効用とは

WOVN:
ありがとうございました。ここからは3つのテーマでお二人にご意見を伺います。最初に、外国人材登用の重要性と効用をどのようにお考えでしょうか。


永島(トイトイ):
私は、単なる労働力ではなく付加価値を上げるために外国人材を活用する必要があると考えています。ニトリでは店舗に外国人を配置していましたが、店舗では時にはモラハラも受けます。上司はそれに対する対応方法を仕組み化しておく必要があり、外国人マネジメントの経験を通してマネージャーの役割を身につけていけます。また、店舗に新しい視点が生まれ、周囲の社員から新たな提案が生まれるというメリットもあります。組織開発の観点から外国人材の登用は非常に効用があると感じました。

また、多様性のあるチームの方が付加価値を生み出せるのだと感じた経験は他にもあります。ニトリではサークル活動を取り入れていて、3,4人のチームで会社に提案を行い、優勝すると実現できるという仕組みでした。実は2019年、2020年と外国籍社員と日本人混合のチームが優勝しました。



山本(HRファーブラ):

私は、「違う視点でものごとを見れる人がアサインできる」というメリットがあると考えています。ここで日立とトヨタの例をご紹介します。20年ほど前、日立が人事制度を変えようとした時、またトヨタが “トヨタウェイ” を言語化し直した時に、両社とも本社のプロジェクトに様々な国の人が赴任してきました。1カ月といった短い期間ではなく、年単位です。トヨタは先進国からだけでなく、製造拠点があるようなポーランドやトルコからも人を連れてきました。ダイバーシティとはそのように真の意味で多様な人材の視点を取り入れることだと思います。

 

グローバルマネジメントの実務における課題と解決策

WOVN:
次に、現場のマネージャーが外国人材マネジメントをしていくにあたり、実務で陥りやすい課題についてお聞かせください。


山本(HRファーブラ):
コミュニケーションが課題だと思います。違う価値観を持つ人には、当然ですが分かり合える人以上に時間をかけてコミュニケーションを取る必要があります。現場任せにせず、責任ある立場の人が時間を使って仕事の必要性や制度を説明し、逆に相手が不思議に思うことやその理由を聞くことがダイバーシティマネジメントでは重要です。


WOVN:
違いを認識した上で丁寧にコミュニケーションを取ることが大事ということですね。永島さんはどうお考えですか?


永島(トイトイ):
先ほどお話した通り、ニトリ時代に外国人の方を100人採用したところいきなり30人ほど辞めてしまったことがありました。退職理由を調査したところ以下の表のようになりました。


出身国への関心・理解に加えて、「新しい方法について議論することを受け入れる」や「仕事上の問題について相談に応じてくれる」などの上司の行動に課題があるとわかりました。実は海外から来ている方は、例えば駅までの移動1つとっても日本人では気付かない苦労を感じているはずです。その困難を上司が「どうでも良いよ、ほっておこう」と言わずに拾えるかどうかが重要です。

育成においては、価値観を変えさせるのも行動を強要するのもパワハラになります。価値観を同質化させて多様性を失わせるのではなく、行動を強要するのでもなく、行動を自分で選ばせることが重要です。「日本ではこうやらなきゃだめだよ」ではなく、「これはなんでだと思う?」とコミュニケーションをとってフィードバックする、その上で行動を自分で選んでもらうことが重要です。


山本(HRファーブラ):
そうですね、上下関係ではなく、1on1では一対一の人間同士、お互いの主張を聞き合うことが大事です。


永島(トイトイ):
日本人は「じゃあここからは日本語対応で」ということがありますが、そうではなく言語面でのフェアなコミュニケーション環境を作ることも大事ですね。


山本(HRファーブラ):
私も留学生にもよく伝えています。日本企業の面接官や上司が英語を話せたとしても、実際に勤務するオフィスは全て日本語だから、それを覚悟するようにと話しています。会社側は、実際には外国籍従業員が孤立していることを意識しなくてはいけません。

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(左からトイトイ合同会社 永島氏、株式会社HRファーブラ 山本氏)

 

ダイバーシティを組織に浸透させるカギ

WOVN:
ダイバーシティを組織に浸透させるためのカギは何でしょうか。なかなか進まない企業もある中で、課題と進め方についてお聞きしたいです。


永島(トイトイ):
5年、10年後を見据えた事業ポートフォリオと人材ポートフォリオを明確にすることが重要だと考えます。ニトリでは、5年後にはアジア出店を開始するというストーリーがありました。結果的に初年度は多くの方が辞めてしまいましたが、採用する方々へのミッションが明確になりましたし、それに合ったスキルを身につけてもらうピープルマネジメントも設計できました。


山本(HRファーブラ):
私は、インフラを整えることが重要だと思います。WOVN さんのプロダクトのように外国語対応を進め、情報を全社員が同じレベルで理解できる状態を作ることが必要です。


また、永島さんの話に付け加えると、10年後、5年後のビジョンを明確にし、トップから浸透させることが重要だと考えます。実は社長がビジョンを主張していても役員にすら伝わっていない企業が多く見られます。外国人社員が「カルチャーを変えるべき」「本社を英語にすべき」とプレゼンをしても、役員たちが聞き飽きた顔をしているところを何度も見てきました。


WOVN:
ありがとうございます。最後にお二人から一言ずつお願いいたします。


永島(トイトイ):
外国籍だからといって特別に対応するのではなく、日本人にも、外国人にも皆違いがあることを理解することが大事だということをお伝えしたいです。


山本(HRファーブラ):
まずは自分の職場で外国人と食事をする、コーヒーに誘うなどして、日本のどこが好きか、どんなところが良いかを聞いてみてください。「そういう良いところがあるんだな、じゃあ一緒にがんばろうぜ」とお互いに元気づけ合ってください。外国籍社員は日本のことが好きで、会社のことを良いと思っているから入社したのです。まずはそれを知ることから始めましょう。

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