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第4章:在留外国人は約5兆円の市場を生んでいる【Multilingual Experience 外国人戦略のためのWEB多言語化】

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佐藤菜摘

本企画では、2019年10月に Wovn Technologies株式会社 取締役副社長・COO の上森 久之が著した書籍「Multilingual Experience  外国人戦略のためのWEB多言語化」の全文を全9回に分けてお届けしております。

第5回となる本記事では、『第4章 在留外国人は約5兆円の市場を生んでいる』を公開します。

Multilingual Experience 外国人戦略のためのWEB多言語化 目次

在留外国人は約5兆円の市場を生んでいる

 

外国人労働者の受け入れで労働人口を確保する

日本における出生数は2018年に91.8万人(出生率は1.42)と、3年連続で100万人を下回りました。ピークの1949年には269万人(第一次ベビーブーマー)の子供が生まれていたことを考えると、出生数は70年で約3分の1となっている計算です。

子供の減少は今後も拍車がかかり、2065年には出生数が55万人、つまり、約半分になると言われています。

現在、実施されている子育て支援策が成果を出し、出生率が多少向上しても、人口が増えること、ひいては労働人口が増加することはないでしょう。

そこで期待されているのが、外国人労働者の受け入れです。彼らを受け入れることで、日本の労働人口を維持するのです。

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過去の政策の失敗を活かして在留外国人に対応する

本書執筆時点(2019年9月)で、政府は日本における移民政策の導入を明確に否定しています。代わって国際競争力の向上のための高度外国人人材の受け入れ、局所的な人手不足に対処するための外国人技能実習制度の拡充は行っていますが、全般的な人手不足の根本対策としての移民政策はとらず、女性や高齢者の労働力化や生産性向上を推進しています。

しかしながら、絶対的な推計データと言える人口推移予測が「労働人口の減少」を示す以上、計画的に労働力を確保することが必要なのは明白です。少なくとも、個々の企業における労働力不足は競争力の低下につながり、単純に「人を確保する」というニーズは非常に高いのです。

とはいえ、過去に提示された「未来の問題」の中には、有効な解決策が実行されることなく、現在に至っているものも少なくありません。

例えば、1970年代には、人口の3分の1が高齢者となる、現在の少子高齢化が予測され、対応策が必要と謳われていました。しかし、2019年現在、実際には有効な対応策が実行されることなく、少子高齢社会を迎えています。

2000年ごろに問題視された産業空洞化の課題もその一例です。海外生産を増やすと日本から技術が流出し、国内の組み立て産業の競争力がなくなってしまうと言われていました。

しかし、個々の会社からすると、当時は、有利な為替や安い賃金水準の観点から、海外生産は合理的な選択でした。

とはいえ、個々の会社の合理的な行動が、必ずしもマクロな観点から最適とは限りません。

いわゆる「合成の誤謬(ごびゅう)」です。実際、多くの会社が海外生産割合を高めていった(2000年13.4%→2016年24%、経済産業省「海外事業活動基本調査概要」等)結果は、ご覧のとおり。

中国や台湾にものづくり大国の名を譲り渡すことになり、結果として「産業の空洞化」が現実となってしまいました。このような事例は、枚挙に暇(いとま)がありません。過去の失敗を生かし、今度こそ失敗できない施策が「外国人労働者の受け入れ」です。そして「外国人にも住みやすい社会と働きやすい会社を整備すること」だと私は考えています。

 

外国人労働者銘柄が投資対象として注目

2019年2月8日の日本経済新聞で、興味深い見出しに目がとまりました。「在留外国人、新たな投資テーマに」という記事です。特に外国人投資家から、在留外国人銘柄の関心が高まっているという報道でした。歴史や経済学に照らしても、在留外国人の増加というのは、一国の成長分野として期待できます。

先に触れたように先進国においては、労働人口とGDPには相関関係があります。少子高齢化が進む日本において、人口を増やすための政策として外国人労働者の受け入れが必要なことは、自明と言えるでしょう。

その結果、外国人労働者が増えれば、彼らにまつわるサービス、例えば日本で稼いだお金を母国に送るための海外送金や、日本人と外国人がコミュニケーションをとるための語学教育、今まで日本語だけだったマニュアルの翻訳などのサービスのニーズが増えると予想されます。

実際に外国人労働者を受け入れる流れも加速しています。2016年7月には、国家戦略特区である神奈川県で、外国人による家事支援が可能となり、パソナグループやダスキンなどが外国人を受け入れています。コンビニなどの小売店で外国人スタッフを見る機会は、数年前に比べて格段に多くなりました。政府レベルでも民間レベルでも、外国人労働者の受け入れは進んでいるのです。

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経済成長の鍵は労働人口

経済成長は大雑把には「労働人口×生産性」の総量の伸びだと表現できます。後者の生産性について期待されているのはテクノロジーです。AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション︙業務自動化)、SaaSなどの最先端ソフトウエアを有効に利用することで、生産性を上げようと、多くのスタートアップが試みています。

生産性の向上は、長期的には圧倒的に力を発揮するでしょう。しかし、短中期的に労働人口の減少をカバーすることは難しい。とすると、経済成長において短中期的に重要なのは、やはり労働人口の増加です。

繰り返しになりますが、日本の人口減少は他に類をみないほど急激で、40年後には、2019年から約4000万人、実に人口の3分の1が減少すると言われています。そのために、外国人に日本に住んでもらったり、働いてもらったりすることは、非常に重要です。

ここで、欧米のケースを見てみましょう。

欧米では、移民受け入れによる「労働人口の確保」で経済成長を成し遂げたケースが、珍しくありません。1990年代のカナダの経済成長の90%は、移民の受け入れによるものだと言われています。英国は、この20年間、東欧から大量の移民を受け入れたことで、G7参加国の中で、2014~15年には一番の経済成長を成し遂げました(ただ、経済成長というプラス面だけではなく、移民が自国の労働者の仕事を奪っている側面もありますし、英国はブレグジット(EU離脱)により、移民数が減少しているというマイナス点も存在します)。

では、日本もそのままカナダや英国の真似をすればいいかというと、話はそう簡単ではありません。日本は単一民族だった歴史が長く、文化や言語なども多様性が低いという島国の特徴があるからです。海外の事例は参考にしつつも、日本という国の特性を考慮した外国人受け入れが重要です。

かといって、そんなに悲観的になる必要はありません。海外から日本に来て日本語学校に通いながらコンビニでアルバイトをしている留学生や、技能実習生として農業や製造業に従事している外国人は、増加しています。この状況を揶揄して「隠れ移民大国」などと言われることもあるようですが、裏を返せば、移民受け入れは進んでいるという側面でもあります。

もちろん、すべてがうまくいっているわけではありませんが、ノウハウも少しずつ蓄積されてきており、日本全国にこれを広げていく必要があると感じています。

 

過去最高を更新し増え続ける在留外国人。
ベトナム・ネパールが中心

今、日本ではどれくらいの在留外国人が生活しているのでしょうか。

法務省が発表した2018年6月末の在留外国人数は263万7251人(うち中長期在留者数は2 3 1 万1 0 6 1 人、特別永住者数は32万6 1 9 0 人)。前年末に比べて7万5403人(2.9%)増加し、過去最高を記録しています。

国や地域の内訳も見ていきましょう。

 

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在留カードおよび特別永住者証明書でみた国籍・地域の数は194(無国籍を除く)。内訳を数の多い順番で紹介すると、前ページの図のような構成となっています。出身国の上位10カ国では、前年末比でベトナムが2万9089人増(+11.1%)、ネパールが同5283人増(+6.6%)と、激しく増加。アジア出身の外国人が増加しているのが分かります。

次に、在留外国人の内訳を見てみましょう。

2018年2月に内閣府が発表した「外国人労働力について」の中の「外国人雇用状況の届出状況(2017年10月末現在)」によると、日本の在留外国人労働者の合計は約127.8万人。その内訳は、次のように示されています。

① 専門的・技術的分野 約23.8万人。
一部の在留資格については、上陸許可の基準を「我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情」を勘案して定めることとされている。

② 身分に基づき在留する者 約45.9万人。
「定住者」(主に日系人)、「日本人の配偶者等」、「永住者」(永住を認められた者)等。これらの在留資格は在留中の活動に制限がないため、さまざまな分野で報酬を受ける活動が可能。

③ 技能実習 約25.8万人。
技能移転を通じた開発途上国への国際協力が目的。

④ 特定活動約2.6万人。
EPA(経済連携協定)に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者、ワーキングホリデー、外国人建設就労者、外国人造船就労者等。

⑤ 資格外活動(留学生のアルバイト等) 約29.7万人。
本来の在留資格の活動を阻害しない範囲内(1週28時間以内等)で報酬を受ける活動が許可。

 

このデータを見ると、実に2割以上は、勉強が主目的の留学生アルバイト(29.7万人)が占めています。これに国際協力を目的とする技能実習生(25.8万人)を加えると、4割以上が、本来学業や技能実習を目的とした在留外国人の方々です。

このような ”ねじれ” 解消のため、労働力確保の観点からビザを発行するのが2019年4月に導入された「改正入管法」です。

 

改正入管法で約35万人の在留外国人が増加

日本で働いている外国人労働者の中には、「外国人技能実習制度」を活用して働いている方も大勢います。しかし、本来、外国人技能実習制度は国際貢献を目的としていることから、労働者と雇用主という関係は適切ではないと指摘されることがあります。そこで、クリーンに労働力を確保するため、2019年4月に「入管法」が改正されました。

この「改正入管法」では、新たな在留資格である「特定技能」を2段階で設けることにしました。5年以内の在留である1号、および事実上の永住権と言える2号です。

「最長5年の技能実習」を修了するか、技能と日本語能力の試験に合格して「相当程度の知識または経験を要する技能」があると判断されれば「1号」の資格が得られます。在留期間は通算5年。深刻な人手不足を想定した14業種で働くことが想定され、5年間で最大34万5150人の受け入れが想定されています。

その14業種とは、サービス(外食、宿泊業、介護業、ビルクリーニング業)、製造業(素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、飲食料品製造業)、建設・農林水産業(建設業、農業、漁業)です。

さらに熟練した技能を持つ外国人には「2号」の資格が与えられることとなっています。

1~3年ごとに期間の更新ができて、更新時の審査を通過すれば、更新回数に制限はありません。事実上の永住も可能となり、家族の帯同も認められます。

 

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外国人が多い先進地域の情報収集はWEBが中心

2018年1月現在、東京都港区には日本最多の82の大使館が存在します。そのため、以前から外国人との「多文化共生社会」と真剣に向きあっており、2009年度には「港区国際化推進プラン」を策定しました。このプランを掲げ、外国人対応施策を戦略立てて推進しているのです。

同プランでは「外国人の安心・安全の確保」「外国人の快適な日常生活の実現」などの施策を掲げています。

震災大国の日本で安心・安全を確保し、かつ快適な日常生活のためにも、外国人の情報収集は非常に重要です。外国人の意識調査(2016年)によると、情報収集手段のうち、WEBサイトは14.4ポイント増加(2013年=30.4% → 2016年=44.8%)、テレビ(34.7% →38.0%)を上回り、最も利用されているメディアとなりました。またSNS(8.1% →27.5%)も高い伸び率を示しています。

WEBサイトでは情報がテキストで表現されるため、読んで理解できるかどうかが重要な点です。たまに「日本に住んでいるから、誰でも日本語を理解できる」という誤解を耳にすることがありますが、たとえ日常会話を日本語で話せる外国人がいたとしても、その外国人が日本語を読むのは苦手ということは多分にあります。

英語であれば、文字はAからZまでのたった26文字ですが、日本語は、ひらがな・カタカナおよび常用漢字・人名用漢字あわせて約3000文字もあります。使用する文字だけでも100倍以上の学習コストがかかるのです。これに特殊な読み方や漢字の組み合わせが入るのですから、外国人にとって日本語を「読む」というのは非常に難しく感じることでしょう。

そのため、外国人が情報を取得するという意味では、日本語だけの情報にとどまらず、多言語での情報発信が非常に重要となります。行政や交通などのインフラを提供する企業が、多言語での情報発信を加速させている背景には、こういった理由があるのです。

 

銀行口座の開設をスムーズにする「WEB ×多言語化」

外国人が日本で働き、暮らしていくときに避けて通れないのが、お金のやりとりの問題です。

外国人労働者も、勤務先の企業から給与の振り込みを受けるためには、日本の銀行で口座を持たなければなりません。外国人労働者が増加すると、必然的に日本の銀行の窓口にも、数多くの外国人が口座を開設しようと訪れることになります。

ところが口座開設(というよりも銀行での何かしらの作業はどれも)は、日本人でさえ、かなりわずらわしい作業です。ましてや日本語の読めない外国人です。銀行側からしても口座を開設してくれるのはありがたいことですが、外国人の方の対応には日本人の何倍もの時間がかかるため、銀行の窓口を混雑させる要因となっていることも事実です。

だからといって、たくさんある銀行の各支店の窓口に数カ国語の多言語対応スタッフを常駐させることは、コスト的にも人材調達の観点からも、現実的な解決法とは言えません。そこで、この問題の解決策として期待されているのが、銀行のサービス案内のWEBサイトを多言語対応し、在留外国人の窓口での作業を大幅に簡略化する方法です。

そもそも口座開設の書類作成は、必ずしも銀行の窓口(現場)で行う必要はありません。

そこで、「必要情報の入力(初期段階の手続き)」をWEBサイトで済ませられるシステムを持つ銀行が増えています。当然ながら、システムなら窓口の時間に縛られる必要もなく、利用者は好きな時間に好きな場所で「必要情報の入力」を行えます。また、銀行側にとっても、窓口担当の行員の作業量を削減できる大きなメリットがあります。基本的にWEBでの作業に渋滞はありませんので、問題となっていた窓口の渋滞が解消できるのです。

上記の「必要情報の入力をWEBサイトで済ませるシステム」は銀行を例にとりましたが、WEBサイトを多言語化するメリットは、携帯電話会社や小売店など、外国人の暮らしに必要な窓口対応が存在するほとんどの企業が享受できるでしょう。

しかしながら、WEBサイトの多言語対応は、膨大な開発コストと時間を要するがゆえ、一部の企業しか実行できていないのが現実です。これについては、改めて、第5章で具体的かつ詳細に説明します。

ここで、従来から在留外国人対応を強みとしている、セブン銀行の例を紹介したいと思います。

 

利益率30%、多文化・多言語の先進企業、セブン銀行

近ごろのコンビニには、必ずと言っていいほど外国人が勤務しています。私は港区や渋谷区のコンビニをよく利用するのですが、体感では、接客を受ける9割以上は外国人アルバイトの方々です。流暢な日本語を話す方もいれば、片言の日本語を話す方もいますが、みんな笑顔で対応してくれます。その中でも一際存在感を放つのが、都内のいたる所にあるセブン-イレブンです。

そのセブン-イレブンに必ず設置されているのが、セブン銀行のATM。セブン銀行は、セブン&アイ・ホールディングスのグループ会社として、2001年に設立された社歴20年ほどの銀行です。ATMからの入出金の際、提携先から手数料を得るビジネスモデルで、経常利益率は約30%と高い利益率を誇ります。コンビニにあることで24時間365日稼働する約2万5000台のATMは、1日に約230万人もの方が利用しているのです。

そんなセブン銀行は「ATMを訪れる方は、日本人でも、外国人でも、変わることなくすべてお客さま」というお客様サービスの考え方を表明しています。そして、持続的開発目標(SDGs)の観点から「多文化共生」の実現に取り組む ”外国人戦略の先進企業” でもあるのです。

 

1週間かかった海外送金を5分で実現

日本における外国人労働者の中には、家族への仕送りとして母国へ送金する方が多くいます。在留外国人にとって、海外送金はとても大切です。というのも、母国の家族は、そもそも口座を保有していないことが少なくないからです。

例えばフィリピンでは、銀行口座を持っている人は30%未満とも言われています。これまでの仕組みでは、受取人が口座を持っていないと、海外送金ができませんでした。この問題に対して、セブン銀行は、海外現地の銀行・商店などの窓口で現金を受け取れるようにしたのです。

また、海外送金は「いつ着金するのか分からない」という課題もあります。銀行窓口から送金しても、現地に着金するのは明日かもしれないし、1週間後かもしれない。そんな課題にあたって、セブン銀行は、国内からの送金手続き完了後、概ね5分程度で現地で現金を受け取れる仕組みを作りあげました。

さらに、同行は手数料の大幅削減も実現しています。送金金額にもよりますが、送金金額のなんと3%程度にまで下げてしまったのです。

 

多言語メンバーが一元管理

海外送金に関わるセブン銀行のATM、WEBサイト、アプリは9カ国語に多言語化されています。特に力を入れたというアプリは、機能実装や多言語化の影響で、長期の開発期間を要したそうです。

翻訳自体は社内の「多言語メンバー」が実施。翻訳そのものはもちろんのこと、用語集を用いて翻訳の一元化を図るなど、多言語化業務を幅広く管轄しています。とはいえ、ただ厳しく管理しているわけではありません。もちろん金融に関する内容は厳しくチェックしていますが、コンテンツによっては、分かりやすく翻訳するなどの柔軟性も兼ね備えています。

 

外国人対応の施策は多言語メンバーの高いモチベーションから

2019年6月、セブン銀行の大口智文常務執行役員(肩書きは2019年6月時点)に直接うかがったところ、「外国人向けにサービス提供するためには、外国人の文化や考え方を熟知する多言語メンバーが主導するべき」と答えていました。当初、セブン銀行では、通訳業務を主体に入社した外国人メンバーは、現在「多言語メンバー」と呼ばれ、呼称だけでなく役割も広がっています。

また、採用形態も派遣社員からスタートしましたが、現在は正社員に転換した方もいます。キャリア形成の仕組みも大きく変わり、2019年6月現在、セブン銀行の海外送金推進部の約3割が外国人社員になっています。コミュニケーション・デザインの観点から「指示は分かりやすく、シンプルな言葉で」という心がけがチームポリシーとなっています。

外国人メンバーを登用したからこそできた施策を1つ紹介しましょう。

フィリピン人はサプライズが好きです。このため、フィリピン人メンバーが中心となり、セブン銀行のアプリから、フィリピンにいる家族にサプライズ・プレゼントをできるサービスを実装しました。これはフィリピンの大手通信会社と連携し、決済もセブン銀行のデビットカードで済ませます。日本の感覚だと、そもそも外国から本国のご家族にファストフード・セットをプレゼントするという考えがありません。ところが、現地ではファストフードでもサプライズで届いたら、非常に喜んでもらえるのだそうです。

このように日本人だけでは思いつかない施策でも、海外メンバーがいるから実行できた施策は、たくさんあります。どうしてそんなにも外国人メンバーから施策が出てくるのか。前出の大口氏が外国人メンバーに「何のために仕事をしているのですか?」と聞くと、多言語メンバーからは「国の仲間を幸せにするためですよ!」との回答が返ってくるそうです。曰く、自ら海外送金で困っていた経験を持っており、それを自分たちで解決できるということで、非常にやる気が満ち溢れてくるのだそうです。施策の面からも、モチベーションの観点からも、海外戦略構築に現地出身の外国人を巻き込めている好例です。



SDGs/CSRとしての多文化共生

近年、国連で合意された持続的開発目標(SDGs)が話題に上ることが増えてきました。外国人労働者は、ともすれば不法滞在や人権侵害などの温床になりかねない重要な問題です。彼らを適切に受け入れなければ、日本が途上国のSDGsの妨げになってしまうこともあるのです。

この点セブン銀行の取り組みは、単に海外送金サービスを提供する以上のことを推進していると言えます。実際に同社は、SDGsとCSR(企業の社会的責任)の観点から「多文化共生の実現」を会社の重点課題に設定しているそうです。

外国人戦略を考える上では、行政、外国人支援団体、外国人雇用企業、そして、外国人メンバーが協力して「日本に住む外国人にとって生活しやすい社会を実現すること」が、今の日本には必要だと感じています。

 

第5章  「 9割の日本企業にグローバル展開が必須になる」に続きます。



 

 

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